小泉信三のレビュー一覧
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格調高く、味わい深い随想の数々。
「ペンと剣」「再びペンと剣」では、ペンの力は強いが一方では濫用の危険を伴う、言論と報道の自由は人の名誉とプライバシーを侵さぬ限りは自由でなければならぬが、公共の安全や福祉のため必要でない限りはいかなる私事も当人の意に反し公表せらるべきではない、として、ペンを扱う者の戒めを説きます。現在もその精神は忘れられるべきではない。
その他にも、自由に人間らしく生きることのできない共産主義への批判、スポーツへの思いや情熱、人間の生き方の考察など筆は多岐にわたりますが、特に、「愛読」に記された川端康成の「古都」の美しさに寄せる著者の想いには感銘を受けました。
小泉さんの随想 -
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清々しい読後感。
著者である小泉信三氏は、戦前から終戦直後の慶應義塾長であり、明仁上皇(当時は皇太子)の教育係も務められた高名な経済学者。
本書は氏の新聞や雑誌への寄稿文を集め、昭和28年に書籍化されたものです。
氏の著作を読むのは「読書論」、「共産主義批判の常識」に続く3冊目で、いずれも普遍的価値を持つ名著だと思います。
ちなみに、「練習ハ不可能ヲ可能ニス」、「直ぐ役に立つ本は直ぐ役に立たなくなる本である(→すぐ役に立つ人間はすぐ役に立たなくなる人間だ)」という言葉はこの人のものです。
60年も前の作品のため、古風な文体とはいえ、決して難解ではなく平明で、かつ押し付けがましくもなく力強いエ -
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ご存知の方も多いかと思うが、「すぐ役に立つ本はすぐ役に立たなくなる」との名言が記された名著。資本主義に振り回され、結果ばかりを追い求めるようになった現代人にこそ、このような本を手にとってもらいたい。本をどのように読むか。すぐ役に立つ知識が欲しいのであれば電話帳や観光案内を見ればいい、それに勝る本はなかろう、という主張は読んでいて非常に心地よく感じられた。今でこそ特に電話帳などはお役御免となりつつあるが、ごく狭い範囲の用途に限られたものは応用が効きにくいという具体例として非常に理解がしやすいものと思う。
創造性を獲得するには余白の時間が重要であるとの主張もこんにち様々なところで見受けられるもので -
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読書をするにあたり知っておくと良い心構え。
多読から始める。
それは量質転換する。
時間には限りがあり、本は無限大ゆえにいかに読まないかが重要となってくる。
古典的名著を読む。
それは、目先の損得や有用でなく、
長い目で見て効いてくるような選書をすることだ。
読書には、
読む進めることでわかることがある。
読み通すということも一つの読書の手法である。
読書会などによって読みっぱなしで終わるのでなく、それについて語り、または書くことで脳髄に刻み込まれる。
また、話すことを前提に読むことでより一層自身の記憶に残る。
読書会をし始めてから、
いかに自分の読みが浅かったか、自分の理 -
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どうのような本を如何にして読めば良いのかというテーマから始まって、読書の注意点や利益、文章論や翻訳に関する事、さらには書斎や蔵書に関する見解まで書いてあります。
一つ一つは奇をてらったものではなく、答えだけを聞けば「知ってるよ」と言いたくなるようなものばかりです。
ただその理由付けの中にこそこの本の面目があります。
例えば「どのような本を読むのか」というテーマに関しては「古典的名著で、さらに大部であるとなお良い」という答え。
これだけだとこの本を買ってまで読む価値はなさそうです。
ですがその後に森鴎外や福沢諭吉などを例に出したり体験談を交えてその理由を書いていくのですが、この理由付けの中に -
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まず思ったのは「彼はよくわかっているし、マルクス主義者としても遜色ないであろうし、そもそもそうでなければ批判ができない」というごく当たり前の感想を抱いた。彼はマルクスの理論をよく学んでいるし、マルクスとエンゲルスのみならず、カウツキー、レーニン、トロツキーやスターリンなどもよく読み込んだ上でこの本をしたためたのであろうと推察した。とりあえずマルクスを批判したいだけなら、この本を読めばよいであろう。革新政党の矛盾性や、マルクスの価値学説に関しては、よく承知している。
しかし、この本に対する批判も、マルクスを奉ずる側からも当然出ているであろうし、出ていなくとも可能であろうと考える。特にレーニンやス -
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本書のタイトルどおり共産主義に対する一般的な(本書が売れたから一般的になったのかもしれないが)批判を行っている。いわゆる新自由主義(市場万能主義)への対抗勢力として、マルクス主義的な考え方は残っており、反グローバリズムの運動などは国際協力と繋がる部分もあるので、こうした考え方も知っておいてよいと思う。
タイトル通りなので、この本が悪いわけではないが、批判に終始してしまっていたことと、同じ内容の批判が繰り返しでてくるので、揚げ足取りのようにも感じられてしまったことが残念。
共産主義に共感する人も、批判する人も読んでおいたほうがよいだろう。 -
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著者の小泉信三氏(1888~1966年)は、1933~1946年に第7代慶應義塾塾長を務め、東宮御教育常時参与として皇太子明仁親王(今上天皇)の教育の責任者ともなった経済学者。本書は1950年に発刊された。
福沢諭吉、森鴎外、夏目漱石、ゲーテ、ショーペンハウアーなどの古今東西の知性の作品や考えを縦横に引用しつつ示された読書についての心構えは、60年以上を経た最近の読書論・読書術の書籍でも繰り返されていることが少なくなく、古さは感じさせない。また、渡部昇一氏の大ベストセラー『知的生活の方法』(1976年)は、本書を意識して書かれたとも言われているように、本書には(知的)生活論と言い得る部分もある -
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自由主義の立場から、共産主義ないしマルクス主義の問題点を指摘しています。
著者はまず、マルクス主義では労働者の窮乏が進むことで資本主義から共産主義への移行が必然的に起こるとされていることに触れています。問題となるのは、社会政策による労働者の経済状況の改善に対してマルクス主義者はどのような態度を採るのかという問題です。この問題は、エルフルト綱領を批判する中でも再度論じられることになりますます。
次に、労働価値説に基づく計画経済が成り立たないことを指摘したミーゼスの議論が紹介されています。これに対しては共産主義者の側から「競争的社会主義」という解答が提出されましたが、市場によって達成されるはず