白川貴子のレビュー一覧

  • テラ・アルタの憎悪

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    面白かった!レミゼの折り込みがそこそこにあってレミゼを知っている人間としての面白さもあったのだけど、それ以外にも主人公メルチョールの生い立ちが事件の合間合間に挟まれていて、そこが一人の孤独な男が愛を知るようになる迄の道のりとしてまた面白い。事件そのものは謎もありつつ比較的大きく動かないのだが、主人公の回想を挟みながら進むので事件そのものが回想と重なり合うことで重層感が出る。
    レミゼ知らなくても映画一本見た様な満足感のある本なんだけど、レミゼ知ってたら主人公のバルとジャベのハイブリッド感とか素晴らしいのだよ。キャラとしてはジャベが一番好きな主人公だけどその生い立ちにはバルを踏襲している描写もあっ

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    2025年06月10日
  • プルーフ・オブ・ヘヴン 脳神経外科医が見た死後の世界

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    個人的な思い入れがあるので、私の書評はあまり参考にならないと思います。と、先に言っておきます。
    臨死体験をして、それまでは深く考えたことのなかった死後の世界を脳神経外科医の知識と経験を持ったまま書き記した貴重な一冊。
    どこまで信じるかは人それぞれだけど、私は信じたい。
    最後の方に引用されていたロマノという方の詩がめちゃくちゃ刺さった。
    大切な人を亡くされて心にぽっかり穴が開いた状態なら、ぜひ読んでみてほしいです。

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    2025年05月06日
  • 深い穴に落ちてしまった

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    痛み、怒り、革命の狼煙。
    抽象化・寓話化された物語が、美しい詩的な比喩表現で綴られる。傑作。

    兄弟はなぜ穴に落ちたのか?
    はじめに結んだ「約束」は、なにか?
    袋に入った「母さんの食いもの」が話題に上がらないのは、なぜか?
    ときどき覗きこむような人影の描写は、夢か現実か?

    ミステリー的な要素で、ずっと興味を惹かせる構造が上手い。
    そして、最終章での衝撃的な種明かし。

    愛とは、弱い者のために、自らの命をかけること。

    「悪童日記」「Dブリッジテープ」など、搾取され迫害される、名前もない子供たちの話が胸に刺さる。

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    2025年03月27日
  • テラ・アルタの憎悪

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    ネタバレ

    惨劇から始まるスペイン産ミステリ。
    スペイン、珍しいな。
    あんまり思い浮かばないな。
    『風の影』とか?

    ならず者あがりの刑事メルチョールが”何も起きない町”、”旅の途中で通りすぎるだけの場所”テラ・アルタで出くわした凄惨な事件。
    この町きっての富豪で町の産業を一手に握る「アデル美術印刷」の夫婦が屋敷内で拷問を受け、無惨な姿で殺されているのが発見された。
    誰が、何のために?金品目当てか、怨恨なのか?

    おどろおどろしい事件を巡る調査の日を追う物語が続くのかと思いきや、かなりのページを割いて主人公の過去に飛ぶ。
    かたや事件究明の方はするすると手の中を溢れ落ちて行き、進展らしい進展は起きないまま過

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    2025年03月02日
  • 天使のいる廃墟

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    荒廃した村に次々と現れる自殺希望者と、それを迎える怪しげな「天使」とのやり取り。
    設定が全体的に謎のままどんどん話がオムニバス的に進んでいくけれど、どれもこれも読後感が絶妙。ずっと薄暗い道を進んでいくような、でも心細くならない感じが、大変好みでした。
    以下、印象に残ったフレーズ。

    「作家を偉大たらしめるのは、夢で見る銀の糸を、現実世界の針の穴にとおす腕前なんだ、先生はいつもそう言ってた。」

    「人生とは炎のようなものだ。横笛の音色はそう語っていた。ある程度の年齢に達すると、炎には人生の思い出が重なり合ってくる。」

    「死はどんなふうに踊るんですか?  そう聞くと、生まれて初めて夜遊びに繰り出

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    2025年01月23日
  • テラ・アルタの憎悪

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    獄中でユゴーの『レ・ミゼラブル』と出会い、犯罪をやめ警察官となったメルチョールは、カタルーニャ州郊外の町テラ・アルタで、富豪夫妻殺人事件の捜査に当たる。夫妻は拷問の末に惨殺されていた。メルチョールは夫妻の事業には裏があることを直感するが……。

    極めて猟奇的な場面で幕を開けるこの作品、単なる警察小説ではありませんでした。読書が人生を変える力のある営みであることを改めて実感しました。残りの二作も期待しています。

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    2024年03月31日
  • ファシズム――警告の書

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    現代の世界で起きていることを理解するための信頼できる知性は、同時に未来への指針でもある。

    「歴史が教えているとおり、自由というものは守ってやらなければ生き残れないし、嘘というものは暴かなければ止まらない。」p.259

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    2022年06月19日
  • 深い穴に落ちてしまった

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    兄弟愛を感じさせられるシーンでは胸が熱くなりました。一つ一つの描写がとてもリアルで弟が狂っていく様子がすばらしかったです。
    自分の読解力が未熟で解けなかった謎もあるのでいつかまた挑戦したいです。

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    2018年11月24日
  • 執着

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    ボブ・ディランがノーベル文学賞をとって話題になっているが、このハビエル・マリアスも候補に挙がっていた一人。ノーベル賞は政治的な意味合いが強いので、ボブ・ディランにいったのだろうが、今さらという気もする。それよりは、もっと読まれてしかるべきなのに、世界的にはあまり知られていない作家に光を当ててほしいものだ。オルハン・パムクもパトリック・モディアノもノーベル賞を受賞していなかったら、日本でこんなに翻訳されることはなかったろう。

    ハビエル・マリアスを読んでみようと思ったのは、候補に名が挙がっていることを知り、どんな小説を書くのだろうという興味を持ったからだ。なかなか個性的な作家で、特にその文体が特

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    2016年10月19日
  • プルーフ・オブ・ヘヴン 脳神経外科医が見た死後の世界

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     現代人らしい唯物主義よりな意識を持っていた脳神経外科医が、自身の臨死体験を赤裸々に綴ったのが本書である。
     自身の体験を盲信せず、医療従事者である友人知人や関連書籍を使って現代化学・現代医学に根ざした客観的視点も取り入れているのが新しく、また、その検証の結果、医学的・化学的に説明できる臨死体験と説明できない臨死体験があることが明らかになったというのが面白い。起きた事実を認め、しかし盲信することなく客観的に検証する。これこそ正しい科学的なアプローチだ。事実を検証することなく「あるわけない」と全否定する、または仮説に合うように事実を捏造するなど、きわめて非科学的だ。
     最近に「天国の存在が“科学

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    2015年05月17日
  • ファシズム――警告の書

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    ネタバレ

    歴史を振り返らずとも「移民がペット食べている」と憎悪を煽る現実に現在が危機にあることを痛感する
    トランプを見ているとMムーア映画で厳しく批判された子ブッシュがまともに思えたが憎悪を煽る政治家でなかったと知った
    任期/世襲制限は有効なツールではないか
    まあその成約も崩されるのか

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    2024年09月14日
  • テラ・アルタの憎悪

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    ネタバレ

    ストーリー自体は好き。ただ最後の黒幕の話は、黒幕自体にそうするメリットがなく、話の説明のためにそうした感がある。

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    2024年08月25日
  • 深い穴に落ちてしまった

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    東京創元社さんの校正課員さんが選んだズシンと響く本文200ページ以内セットに入っていた1冊
    落ちてしまったというか落とされてしまったというか...
    とりあえず読んでみるかとページを開いてみたら想像以上に描写がきつく驚いてしまった。
    考えさせられる一冊なのは確かなのだが、ここから何を読み取ろうかと言われるとまた話し辛い。とはいえ、知ることができて良かった一冊であることは確かだ。

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    2024年07月08日
  • 深い穴に落ちてしまった

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    短編で面白く2時間程度で読めた
    かなり生々しく気持ち悪い描写が続くが、表紙のおかげで兄弟のことを角のある寓話的生き物として捉えられたのでよかった
    きもちわるさから出る幻想的な美しい文章もあってうっとりした
    このひもじさと発狂はなかなか他にない
    穴=きびしい現実、兄弟=人間のもつ性質として、現実から出るための蜂起の暗喩と読むこともできるが、そこは正直あまりわからず(なんで2人だけ?みたいな)、穴の中で描かれる景色に圧倒された

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    2024年07月07日
  • テラ・アルタの憎悪

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    スペインの作家ハビエル・セルカスの作品。初めて知った作家であり、予備知識なく読み始める。
    主人公のメルチョールは娼婦の母に育てられ、犯罪に手を染めることで刑務所に入るが、そこでユゴー作の'レ・ミゼラブル'を知り、母が殺されたことを契機として警察官として生きる道を模索する。風変わりな弁護士の助けもあり、希望が叶い、警察官として働き始めるが、テロリストの犯罪に直面し、全員射殺で未然に防ぐが、復讐から保護されるため、田舎町テラ・アルト勤務へと移される。犯罪とは無縁と思われたこの町で、資産家夫婦が惨殺死されるという事件が発生、母殺害の犯人を見つけ出すこともできず、資産家殺人の犯人探

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    2024年06月17日
  • テラ・アルタの憎悪

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    初めて読んだスペインのミステリー。
    ミステリーというよりは主人公の生き様がメインで、事件も捜査していく様子も特に斬新さがあるわけではないが、読みやすく主人公も魅力的だった。続編も読んでみたい。

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    2024年03月15日
  • テラ・アルタの憎悪

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    スペインの中央とも揉めている曰く付きの街が舞台。レミゼラブルを読む事で更生した刑事が主人公。その地の富豪夫婦の惨殺死の謎を解明すると言うミステリだが、その要素は低い。むしろ主人公の過去や思いを描いてる。濃いイメージの作品だった。

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    2024年02月26日
  • テラ・アルタの憎悪

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    スペインの田舎町、レ・ミゼラブルを愛する刑事が富豪夫婦の殺害事件に挑むが… #テラ・アルタの憎悪

    ■あらすじ
    スペインのテラアルタで発生した事件、村一番の富豪夫婦が拷問して殺害された。かつての投獄され、書籍『レ・ミゼラブル』と出会いによって刑事になった経緯があるメルチョールが捜査にあたる。
    しかし決め手となる証拠がでず、捜査が打ち切られようとしてた。彼は独断で捜査を進めようとするも、政治力によって試みが困難となっていき…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    不思議な魅力がある主人公と、スペインにある田舎町の暗部が見え隠れするミステリーです。

    物語の筋としては大きく二つで、富豪夫婦の殺害事件の捜

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    2024年02月16日
  • テラ・アルタの憎悪

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    ネタバレ

    2024年の3冊目は、スペイン産ミステリーです。
    スペインのミステリーを読むのは、もしかしたら初めてだったかもしれません。かなり良いです。
    主人公は、「レ・ミゼラブル」によって、人生が変わった男メルチョール。獄中で「レ・ミゼラブル」を読んだ事で、ジャベールに心酔し、母親を殺した犯人を捕まえる為に警察官になります。4人のテロリストを射殺した事で一躍、ヒーローとなりますが、テロリストからの報復を恐れた警察上層部が、カタルーニャのテラ・アルタへの移動を決めます。メルチョールは、テラ・アルタで最愛の人にめぐり逢い、娘も生まれます。
    そのテラ・アルタで、美術印刷会社の社長夫妻が、拷問され殺されているのが

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    2024年02月11日
  • 境界性パーソナリティ障害の世界 I HATE YOU DON’T LEAVE ME

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    境界性パーソナリティ障害の現在を、コンパクトにわかりやすく事例を絡めてまとめられて、分かりやすい。治療も何か一つが優れているのではなく、目標に応じて使い分けることなど実用的だが、やはり何よりも治療者と患者の信頼関係が重要であり、治療には根気が必要と繰り返し述べている。納得。

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    2023年08月15日