作品一覧

  • 深い穴に落ちてしまった
    3.6
    深い森のまん中にある、深い深い穴の底。兄弟は空を見上げ、脱出の方法を思案している。土壁に階段をつくる。弟を肩にかつぎ上げる。どれほど見込みがなくとも、ふたりは生きなければならない。虫や木の根を食べ、泥水を飲む日々が綴られるなか、やがて物語は不可思議な幻覚と、めくるめく謎で満たされていく――。なぜ章番号は素数だけなのか。幻覚に隠された暗号とはなにか。そもそも兄弟はなぜ穴に落ちたのか。ふたりが辿りつく結末は、驚愕とともに力強い感動をもたらす。現代版『星の王子さま』であり、“深い穴”で生きるあなたに捧げる寓話。/解説=西崎憲
  • 深い穴に落ちてしまった
    3.7
    1巻1,527円 (税込)
    北には山脈が横たわり、海ほどもある湖をぐるりと囲んでいる森。そのまん中に穴がひとつ、口をあけている。ある日、大きな兄と小さな弟がその穴に落ちてしまった。深さおよそ7メートルの穴からどうしても出られず、何か月も木の根や虫を食べて極限状況を生きのびようとする。外界から遮断された世界で、弟は現実と怪奇と幻想が渾然一体となっためくるめく映像を見はじめる……。どうして兄弟の名前と年齢が明かされないのか。なぜ章番号が素数のみなのか。文章に織り交ぜられた不思議な暗号が示すものとは。著者によって綿密に構成され、さまざまな寓意に彩られた物語は、読後、驚愕とともに力強い感動をもたらす。暗黒時代を生きる大人のための寓話。

ユーザーレビュー

  • 深い穴に落ちてしまった

    Posted by ブクログ

    痛み、怒り、革命の狼煙。
    抽象化・寓話化された物語が、美しい詩的な比喩表現で綴られる。傑作。

    兄弟はなぜ穴に落ちたのか?
    はじめに結んだ「約束」は、なにか?
    袋に入った「母さんの食いもの」が話題に上がらないのは、なぜか?
    ときどき覗きこむような人影の描写は、夢か現実か?

    ミステリー的な要素で、ずっと興味を惹かせる構造が上手い。
    そして、最終章での衝撃的な種明かし。

    愛とは、弱い者のために、自らの命をかけること。

    「悪童日記」「Dブリッジテープ」など、搾取され迫害される、名前もない子供たちの話が胸に刺さる。

    0
    2025年03月27日
  • 深い穴に落ちてしまった

    Posted by ブクログ

    兄弟愛を感じさせられるシーンでは胸が熱くなりました。一つ一つの描写がとてもリアルで弟が狂っていく様子がすばらしかったです。
    自分の読解力が未熟で解けなかった謎もあるのでいつかまた挑戦したいです。

    0
    2018年11月24日
  • 深い穴に落ちてしまった

    Posted by ブクログ

    東京創元社さんの校正課員さんが選んだズシンと響く本文200ページ以内セットに入っていた1冊
    落ちてしまったというか落とされてしまったというか...
    とりあえず読んでみるかとページを開いてみたら想像以上に描写がきつく驚いてしまった。
    考えさせられる一冊なのは確かなのだが、ここから何を読み取ろうかと言われるとまた話し辛い。とはいえ、知ることができて良かった一冊であることは確かだ。

    0
    2024年07月08日
  • 深い穴に落ちてしまった

    Posted by ブクログ

    短編で面白く2時間程度で読めた
    かなり生々しく気持ち悪い描写が続くが、表紙のおかげで兄弟のことを角のある寓話的生き物として捉えられたのでよかった
    きもちわるさから出る幻想的な美しい文章もあってうっとりした
    このひもじさと発狂はなかなか他にない
    穴=きびしい現実、兄弟=人間のもつ性質として、現実から出るための蜂起の暗喩と読むこともできるが、そこは正直あまりわからず(なんで2人だけ?みたいな)、穴の中で描かれる景色に圧倒された

    0
    2024年07月07日
  • 深い穴に落ちてしまった

    Posted by ブクログ

    兄と弟が深い穴に落ちてしまった。そこからどうしても外へ出られない。これは比喩なのか、ダークファンタジーなのか。重苦しい雰囲気のまま、二人だけで物語は進行する。不気味な余韻が残る大人の童話である。

    0
    2023年07月19日

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