イバン・レピラのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレサッチャーとブレヒトの言葉で幕をあけカミュの言葉で閉じるこの物語は、暗黒時代に生きる人たちのための寓話、ということなんですが、2013年に書かれたものなんですよね。もう明るい時代なんてくるんですかね?
とにかく真っ暗いお話です。兄弟ふたりが深い穴の中に落ちちゃって、そこで這いあがれずに木くずやイモ虫なんかを食べて過ごすんです。章立ては素数。散りばめられた暗号たち。そしてまさかの結末。す、救いがない……。
ネタバレしちゃいますが、これは革命のお話ですね。深い穴ぼこをクルッとひっくり返さない限り俺たちに明日はない。しかし問題はこの「明日」ってなに? ってところ。なまじ明るい電気のもとで暮らしち -
Posted by ブクログ
うーん、難しい(苦笑)。
寓話なので、何がしかの教訓めいたものを提示しているし、書かれている文章や内容はそれ程には難しくないのだけれど、それをどう受け止めていいのか混乱してしまう。
兄と弟が穴に落ちて、虫や雨水で飢えや乾きを凌ぎながら数か月を共に生活する。
その間に弟が錯乱状態になり、哲学的とも宗教的とも預言者的とも言えるような言葉を発する。
最終的にどうなるかはネタばれになっちゃうので書かないけれど、いやはややはり読み手としては混乱する。
穴そのものがピラミッドのような空洞になっているので、穴の底に落ちた二人は社会の底辺で苦しむ、といったヒエラルキー的な教訓ともとれる。
事実、「上の連中には -
Posted by ブクログ
ネタバレ久しぶりにすごい本にあたった感じ。
深い穴に落ちてしまった2人の兄弟が
力を合わせて地上に出るおとぎ話的な
イメージで読み進めると、とんでもない。
非常に生々しい描写で、ある意味
非現実的な物語だった。
文中には謎めいた部分や意味不明な表現が
出てきて、なんなんだろう?と思っていたら
あとがきで訳者が見解やヒントを載せていた。
それを読んでもわからなかった部分は
グーグル先生に聞いて答えを知ったりした。
オチとしてはありがちな感じであったが、
大人の寓話と謳われるだけあって、
作品が描かれた時代背景に重ねると
見えてくる裏のメッセージがあったりして
凝った作品なのだな、と感じた。 -
Posted by ブクログ
20170425
森の中のすり鉢状の深い穴に落ちてしまった兄と小さな弟。
極限状態の中、気が狂ったように?変わってしまう弟と、弟への愛を抱えながら状況を解決しようとする兄。
なんとも不安になる文章、深読みを誘う不気味な感じ。実際あとがきにも謎解きのヒントが書かれている。
気持ち悪くなるし読みたくない、でも最後まで一気に読んでしまった。
原作の国であるスペインの経済状況、社会情勢が背景にあるようだが、私はそこまで深く考えずにただただこの本の不気味さを気持ち悪いと思いながらもそれを超えた快感を味わいながら一気に読むのでもいいんじゃないかと思う。
でも今余韻でなんとも言えないモヤモヤしてる -
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Posted by ブクログ
兄弟が深い穴に落ちている。
彼らはそこから脱出しようと、生き延びようともがく。
言ってしまえばそれだけの話を、淡々とした筆致で描きます。不合理で危機的な状況をふたり協力して脱出する話かという予想は、序盤の方で霧散します。強圧的な兄、黙々と従う弟。見る見るうちに悪化していく状況、狂っていく弟。
速やかな悪循環が、童話を語るような筆致でなめらかに描かれ、読む側までもが蟻地獄に引きずり込まれたかのようにただこの酷い顛末を追うばかりでした。
そうして、ぱっとわかる真実と結果を残し、するりと物語は収束します。どこかあっけなく、軽やかに。幾重にもくるまれた寓意や仄めかしに明確な答えを導けないもどかし