【感想・ネタバレ】深い穴に落ちてしまったのレビュー

あらすじ

深い森のまん中にある、深い深い穴の底。兄弟は空を見上げ、脱出の方法を思案している。土壁に階段をつくる。弟を肩にかつぎ上げる。どれほど見込みがなくとも、ふたりは生きなければならない。虫や木の根を食べ、泥水を飲む日々が綴られるなか、やがて物語は不可思議な幻覚と、めくるめく謎で満たされていく――。なぜ章番号は素数だけなのか。幻覚に隠された暗号とはなにか。そもそも兄弟はなぜ穴に落ちたのか。ふたりが辿りつく結末は、驚愕とともに力強い感動をもたらす。現代版『星の王子さま』であり、“深い穴”で生きるあなたに捧げる寓話。/解説=西崎憲

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Posted by ブクログ

痛み、怒り、革命の狼煙。
抽象化・寓話化された物語が、美しい詩的な比喩表現で綴られる。傑作。

兄弟はなぜ穴に落ちたのか?
はじめに結んだ「約束」は、なにか?
袋に入った「母さんの食いもの」が話題に上がらないのは、なぜか?
ときどき覗きこむような人影の描写は、夢か現実か?

ミステリー的な要素で、ずっと興味を惹かせる構造が上手い。
そして、最終章での衝撃的な種明かし。

愛とは、弱い者のために、自らの命をかけること。

「悪童日記」「Dブリッジテープ」など、搾取され迫害される、名前もない子供たちの話が胸に刺さる。

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2025年03月27日

Posted by ブクログ

東京創元社さんの校正課員さんが選んだズシンと響く本文200ページ以内セットに入っていた1冊
落ちてしまったというか落とされてしまったというか...
とりあえず読んでみるかとページを開いてみたら想像以上に描写がきつく驚いてしまった。
考えさせられる一冊なのは確かなのだが、ここから何を読み取ろうかと言われるとまた話し辛い。とはいえ、知ることができて良かった一冊であることは確かだ。

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2024年07月08日

Posted by ブクログ

短編で面白く2時間程度で読めた
かなり生々しく気持ち悪い描写が続くが、表紙のおかげで兄弟のことを角のある寓話的生き物として捉えられたのでよかった
きもちわるさから出る幻想的な美しい文章もあってうっとりした
このひもじさと発狂はなかなか他にない
穴=きびしい現実、兄弟=人間のもつ性質として、現実から出るための蜂起の暗喩と読むこともできるが、そこは正直あまりわからず(なんで2人だけ?みたいな)、穴の中で描かれる景色に圧倒された

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2024年07月07日

Posted by ブクログ

森の奥深くにある、深い穴に落ちてしまった兄弟。脱出方法を考えるも見つからない。食料は虫たち、飲料は泥水という環境の中でどうやって生き延びていくのか。絶望的な日々と、幻覚、幻想のようなものが広がったりと、狭い穴の中でさまざまな感情に出会う。どうやって脱出するのか、二人が選んだ道は。その先には何があるのか。ラストの余韻が読み終わった後も残り続ける。

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2023年06月12日

Posted by ブクログ

眠くなるかなと思いましたが、短いのでサクサクと読めて、内容も楽しめました。解説まで読むといろいろな仕掛けがあるとか。暗喩に富んだ大人の寓話ですが、だから推理文庫なのかと納得。

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2025年08月16日

Posted by ブクログ

これは、難しい…気になる…気になるというのは、どうにもひっかかっていくというような
「現代の星の王子さま」というキャッチコピーは、シチュエーションとしては似てるところもあるけど、もっと暗くて生々しい肉肉しさの印象が強くて、星の王子さまではないかな、と思う。現時点では。

一周読んだだけで、生々しい爪痕を残していくような作品だった、私は十分気になる(面白い)作品だった。
けど、どうやら様々な解釈があるらしい。普段はそういうの読まないけど、これは気になるので調べてみたい。そうしたらまた感想も変わるかもしれない。

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2024年03月22日

Posted by ブクログ

深い穴に落ちてしまった兄弟の話し。
つ、つらい。
どんどん病んでいく様が。
精神削られる。
結局なんだったのか、は読者に委ねられる系。
『現代版星の王子さま』と書かれているけど、いやぁ・・・暗黒すぎでしょ。

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2023年06月21日

Posted by ブクログ

兄弟が深い穴に落ちている。
彼らはそこから脱出しようと、生き延びようともがく。

言ってしまえばそれだけの話を、淡々とした筆致で描きます。不合理で危機的な状況をふたり協力して脱出する話かという予想は、序盤の方で霧散します。強圧的な兄、黙々と従う弟。見る見るうちに悪化していく状況、狂っていく弟。

やかな悪循環が、童話を語るような筆致でなめらかに描かれ、読む側までもが蟻地獄に引きずり込まれたかのようにただこの酷い顛末を追うばかりでした。

そうして、ぱっとわかる真実と結果を残し、するりと物語は収束します。どこかあっけなく、軽やかに。幾重にもくるまれた寓意や仄めかしに明確な答えを導けないもどかしさはあったものの、読後感はそれほど悪くもありませんでした。

彼らふたりの物語だったのか、彼らをなにかになぞらえた物語だったのか。とらえようはさまざまで、きっと読む方の自由なんでしょう。その境界線をつけないもどかしさを生む描き方が上手い物語でした。

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2023年05月21日

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