猪谷千香のレビュー一覧
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オガールプロジェクトの斬新さは、「稼ぐインフラ」という異名をとるほどのファイナンスの構造にある。
(引用)町の未来をこの手でつくる 紫波町オガールプロジェクト、著者:猪谷千香、発行所:株式会社幻冬舎、2016年、106
皆さんが町長なら、10年間も塩漬けにされ、一銭も生み出していない町有地をどのように活用していくだろうか。岩手県盛岡駅から電車に揺られること20分ほどで紫波中央駅に着く。まだ、自動改札機が導入されていない駅をくぐり抜け、目の前の信号を渡ると、眼前に「オガール」が広がる。
「オガール」とは、紫波(しわ)の言葉で「成長する」を意味する「おがる」と、紫波中央駅前(紫波の未来を創造する出発駅とする決意)とフランス語で駅を意味する「Gare」(ガール)を合わせた造語だ。私がオガールを知ったのは、10年ほど前になるだろうか。既にオガールの存在は、全国のまちづくり関係者に知られる存在であった。なぜ、オガールは、まちづくりの成功事例として注目されるのだろうか。当時、私は、オガールプロジェクトのキーパーソン、岡崎氏の講演を拝聴したことがある。講演の内容を聞いて、衝撃を受けたことは、「行政からの補助金に頼らない施設運営」であった。その衝撃から10年ほど経ったが、未だ、オガールは全国から注目されている。今一度、何故オガールが注目されているのか。改めて、猪谷氏による「町の未来をこの手でつくる 紫波町オガールプロジェクト(幻冬舎)」を拝読させていただくことにした。
本書を読んで、まず気づかされるのは、「公民連携」である。行政は、公平性・公正性の立場から民間との連携に後ろ向きであった経緯がある。しかし、現在はPPP、つまり行政(Public)が行う各種行政サービスを、行政と民間( Private )が連携( Partnership )し、民間の持つ多種多様なノウハウ・技術を活用することにより、行政サービスの向上、財政資金の効率的使用や行政の業務効率化等を図ろうとする考え方や概念が主流となっている。
その公民連携の先駆けとして、当時の藤原町長をはじめ、オガールのキーパーソンである岡崎氏は、他の自治体に先んじて、いち早く行政と民間との連携に目をつけた。そして、紫波町の職員とともに、岡崎氏は東洋大学大学院経済学研究科に通うことになった。その東洋大学で、岡崎氏は、「恩師」と呼ぶ人物と出会うことになる。客員教授の清水義次(よしつぐ)氏である。そして、紫波町にオガールが誕生するに至ることになる。
以前、私は、清水氏にもお会いしたことがある。お会いしたのは、東京の千代田区にある3331 Arts Chiyoda。ホームページによると、この施設は、旧千代田区立練成中学校を改修して誕生したアートセンターである。2010年の開館以来、現代アートに限らず、建築やデザイン、身体表現から地域の歴史・文化まで、多彩な表現を発信する場として、展覧会やトークイベント、ワークショップなどを定期的に開催している。また、地域住民や近隣の子どもたちとのアートプロジェクトの実践や地域行事への参加なども当館の重要な活動のひとつとなっている。実際、3331 Arts Chiyodaを訪れてみると、中学校の手洗い場などを残しつつ、懐かしさと新しさが同居するような、新たな空間が誕生していた。その清水氏から、私は「リノベーション」という言葉を教わった。「リノベーション」とは、既存の建物に対して新たな機能や価値を付け加える改装工事を意味し、単なる「改築」とは異なる。清水氏は、リノベーションにこだわったまちづくりを進め、当時から行政の補助金に頼らない運営をしてきた。
当時、紫波町におけるオガールプロジェクトは、議会を始め、公民連携手法で町の広大な空き地を活用していくという理解が得られなかったという。しかし、潮目が変わったのは岩手県フットボールセンターの誘致ではなかろうか。当初、岩手県サッカー協会からは、盛岡市、遠野市などが手を挙げており、紫波町は5番目であった。しかし、岡崎氏と当時の藤原氏の戦略により、最終的に紫波町に誘致することができた。その誘致は、人を呼び込むことによって賑わいをもたらし、「エリア価値」を高めることにつながる。そう、清水氏や岡崎氏らは、「エリア価値を高める」ことを最重要視する。
冒頭、オガールが「稼ぐインフラ」と異名をとると紹介した。「稼ぐインフラ」とは、これまでの補助金ありきだった公共事業をファイナンス主導に切り替え、公共インフラに「稼ぐ機能」を付加して、公共サービスの充実を図るという新しい考え方だ。
本書では、ファイナンスのスキームについても一部紹介されているが、私が感心したのは、絶対家賃の考え方であった。絶対家賃とは、どんなに立派な建物を造っても、借り手側はこれだけしか払わないという基準だ。紫波町の絶対家賃は、市場調査により、共益費込みで坪単価6,000円であった。そこで岡崎氏らは、坪単価6,000円の家賃で10年以内に配当金を出せる投資額を見つけること。そして6,000円以内の家賃ではじき出される建設単価が税込で1坪38万円。つまり、38万円以内で建物を造ることを目指したという。よく公共の事例では、そこまで計算できていないケースが多々見受けられる。例えば、オガール紫波の隣の県、青森市の青森駅東口前に立地する複合施設「アウガ」の経営破綻は、私達の記憶に新しいところだ。公民連携とは、単なる民間資金を活用することではない。私は、民間マインドを取り入れ、民間スキームや資金を活用し、新たな公共的サービス価値を生み出すものだと再認識させられた。
以前、オガール紫波にも携わった日本の社会起業家、まちづくり専門家の木下斎氏に言われたことがある。その言葉とは、「補助金は麻薬」であるということだ。つまり、行政からの補助金頼みでは、まち全体が“甘え”に走り、上手くいかない。財政難で多くの自治体が苦しむ中、あまりにも先駆的な取り組みであったオガールプロジェクトは、まちづくりをする上で、他の自治体にも認知されはじめ、ようやく一つのスタンダードに成り得た。 -
Posted by ブクログ
情報の取捨選択についての1冊。
教育に1人1台のタブレットが使われる令和の世に、本の世界のはしっこで仕事をする人間として、伝えていけることはなにかなあ、と。
情報をアップデートし続けるのは大変だけど、今後はどれだけその波に乗り続けられるかがポイントになるなと思った。人間、常に勉強ということですね。
中学生からぜひおすすめしたい、読みやすい1冊でした。スマホ、タブレットは使えて当然。そのなかから、情報で溺れる、惑わされることのないように。
この本では触れられていなかったけれど、tiktokなどのフェイク動画系についても書かれている本はあるのだろうか? -
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子どもたちにはスマホを持つのと同タイミングで読んで欲しい本。だけど、低年齢で持たせてしまう大人たちほど手に取らなさそうだ。
認知バイアスにしてもフィルターバブルにしてもそうだけれど、問題なのは子どもや若者ではなくて、何にも考えずに道具を買い与えたり、情報に触れさせたりしている大人世代じゃないのかな。「便利は正義」「双方向性万歳」という空気に流されて、自分の情報受容能力を過大評価してしまった世代のツケがその下の世代に回されている。
例えば、ウィキペディアでコピペレポートを書いてしまう大学生の問題はもう随分前から指摘されていて、その対策アプリも出回っているのに、まだ書籍で取り上げられるくらいやらかしちゃう子がたくさんいるのか??とすれば、それは大学生の問題というより、レポートを書かせる先生方の指導不足じゃないのかなと。
砂糖やガソリンと同じで、その便利さに飼い慣らされて容易に手を切れない存在になっているのが、情報端末。使いこなして賢くなったつもりがGAFAのハムスターになりさがっている現状を、自覚しつつ距離を図るか、無自覚なまま溺れるか。
とりあえず、ん?これ、何次情報??どこ情報???何が目的???と突っ込みを入れるクセを身につけることと、人に喋る前に裏をとること。紙媒体の情報とのバランスをとること(ただし、紙媒体もやらかす時があるのを忘れずに。STAP細胞の時はひどかった)。コロナでインフォデミックが生じていることが指摘されている今だから、余計に大切なことだと思う。 -
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今さら誰もが承知していると思いますが
ネットの情報は玉石混淆です。
むしろ”石”の方が多いかもしれないです。
それでも通常時は分別がつくかもしれない
ですが、問題は災害などの緊急時です。
いわゆる「デマ」に冷静に対処できる人
がどれだけいるのでしょうか。
普段から情報への感度を養うべき、と
著者は警鐘を鳴らします。
一方では面白い提言もあります。
「ウキペディアタウン」というものです。
その地域の住民が町歩きをして、その町の
文化財や観光名所などの情報を調べます。
そしてその内容のウキペディアを編集して
その町についての情報発信をするのです。
地域活性化にもつながるのでは、という
提案です。
ネット社会はこんな活用方法もあるの
です。 -
Posted by ブクログ
ツイッターなどでナウシカのメーヴェを再現した人がいる…というのはなんとなく知っていて手に取った。読んでみて、ただの再現ということではなく、実際に飛ぶ飛行機をイチから作るということに込めた思いがよく理解できた。また、それがどれだけ大変だったかも。「飛行機」という具体的な機能のある機械が「アート」になるというのは、読む前にはあまりピンとこなかった。けれど、この飛行機作品に至る八谷さんの創作活動を原点まで遡って紹介してもらうことで、なぜ飛行機を作ったのか、メディア・アートというものでどこを目指しているのか、一端を知ることができた。何より、八谷さんが一つ一つ障害を超えながら夢を実現していくストーリーにわくわくした。
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Posted by ブクログ
著者はポストペットを生み出した人だと知り驚いた。
風の谷のナウシカで主人公が乗っていたメーベを実際に作ろうとここ見た10年の記録をまとめた本。
正直題名からは、もっと気軽に作ろうと言う感じを想像していたが、実際はもっと骨太でビジネス的な話としてとても興味深く読むことができた。
また、どんなプロも最初はアマチュアからスタートしているので、志で負けなければいいと言うのは自分の子供にも聞かせてあげたいと思った。
一つのプロジェクトとして全体を俯瞰して、メーベを作る方法を考えている点や、実際にパイロットを募集して合格者にハンググライダーの講習を受講させる箇所等は、ビジネスで成功するには色々考えて落とし穴を埋める必要があると感じた。
またロマンとしてではなく、制作費用の捻出方法や移動を一人で出来る様にと考えて車を購入するくだりや、コンテンツの二次利用する許可を取る話などはビジネスで未踏の道を生み出す苦労を詳細に書かれているのでいい意味で勉強になった。
そして、自分よりも年上の人が真剣に夢中になってロマンを実現する姿はかっこいいと感じた。 -
Posted by ブクログ
誰もが、一度は夢に見、想像したことがあるでそぅ。
『風の谷のナウシカ』に出てくるメーヴェに乗って、
ナウシカのよぅに、空を自由に飛んでみたぃな~と。
本作品は…、そんな夢に向かって、本気で取り組み、
本当にメーヴェを作って、空を飛んでみよぅといぅ、
オープンスカイ・プロジェクトの10年間の軌跡です。
単純に…、このよぅな取り組みって、大好きです。
公的機関や大学のプロジェクトじゃない点もよぃ。
(ちなみに…、ジブリ公式プロジェクトでもなぃ)
プロジェクトの企画から初テストフライトまでの、
大きな一区切りまでの足跡が語られておりますが、
読んでいて、なんとも心地よぃ気持ちになれます。
さらに、順調に、テスト飛行を繰り返していけば、
2~3年後には、大空を飛翔することも夢ではなぃ、
いよいよ、そのよぅな段階まできている模様です。
どんな夢でも、
夢が実現する、といぅその瞬間に出会える機会は、
とても稀なことでそぅ。でも…、
あきらずに夢を追い、夢を実現することの、
楽しさや素晴らしさを感じ取ることができる、
そんな、ステキな読み物でした…。
文章も、簡単なので、
小学校の高学年~中学生にも、オススメです! -
Posted by ブクログ
ネタバレチェック項目4箇所。「今、日本では、民間用の航空機は年間何騎くらい製造されているでしょうか?」。日本が第二次世界大戦で敗戦してから、乗り込んできた連合国軍最高司令官総司令部「GHQ」によって飛行機は破壊され、製造はもちろん、研究すら禁止されました、これが、「航空禁止令」と呼ばれるものです。航空の歴史を知れば知るほど、「戦前の人たちが、こんな素晴らしい無尾翼機を作っているのだから、戦後の僕たちだって作れるはず!」と思いました、ちょっと大げさかもしれませんがオープンスカイの目的のひとつは、一旦途絶えた日本の飛行機の系譜を継ぐことなのかもしれません。その世界のプロが、経験による先入観ゆえに気づかないことをアマチュアが突破することがしばしばあります、企業が新卒を採用するのも、そういう視点が重要であることをよく知っているからです、また、どんな立派なプロであっても、最初はアマチュアだったわけです、まずは志で負けなければいいのです。