佐江衆一のレビュー一覧
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94歳の父と、87歳の母を抱えて暮らす主人公、トモアキと妻の蕗子。
主人公が小説家であり、仕事場が家であるという点で、他の要介護者を抱える家庭とはすこし環境が違う。
この主人公は、両親と「スープの冷めない距離」というには遠いがそれほど離れていない距離で暮らしている。そして、週に一度は顔を出していた。
介護が本格的に必要になってからも、通院など自らがやり、「妻にすべて背負わせたくない」と考えているところもある。
サラリーマンであれば、通院の付き添いも難しいだろう。
こういう点においても、介護は女性の仕事とされるのが「当然」であるというのが伺える。
主人公はそれを知っていて、自分は -
Posted by ブクログ
介護を終へて、英語を勉強する
芥川賞とれずじまひ、『黄落』がベストセラーになった作家・佐江衆一の唯一の英語本。電子化されてゐたので読んでみる。
思ひついて、一気呵成に英語を学んだのがよかったやうだ。カナダやニュージーランド、ペンシルベニア大学に短期留学してゐて、お金あったんだなとおもった。
平凡だが楽しい本で、ホームステイの写真付き。
後半では妻を連れて旅行に出かけたりしてをり、充実した英会話の日々が送れたやうでなによりだ。
ホワイトハウスの観覧整理券のために、ひとりで朝4時から並んだともある。ペンシルベニアの茶器の展示で、積極的に周囲のアメリカ人に話しかける著者がほほゑましい。 -
購入済み
普通かな
以前時代小説にはまって、よく読んでいたのですが、こちらの作者は初めてです。特に劇的な展開があるわけではないですが、市井モノとして、穏やかに読めました。
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Posted by ブクログ
訃報を知り、過去(2007年12月17日)の読書メモ
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12月も終わりだというのに、ことしはやっと銀杏が黄葉して散っている。さすが陽に映えるさまは美しいけれど、落ち葉のかさこそ鳴るはもの悲しい。
『黄落』の書き出しの「こんにちでは六十五歳以上を老人というから、わたしはまだ老人の部類ではないが、還暦を間近にしてちかごろ、駅の階段で時折つまずく。」という主人公が「老親老後」をおくるもの悲しさは身にしみる。
私小説かとまごうフィクションは、高齢社会突入現代の普遍性が散りばめられている。主人公といっしょに「どうしたらいいんだろう」と途方に暮れる。
30年くらい前有吉佐和子の『恍惚