あらすじ
生命を惜しむということは、死を怖れることではない。大義のための死なら貴い。しかし……。瀬戸内の基地で「回天」特攻隊員として出撃を待つ兄は、たぎる想いと葛藤の日々を、日記と弟への手紙に綴った。学童疎開先から返事を書き続ける弟。だが東京大空襲で父母を、そして疎開先で妹を失う――著者渾身の書下ろし長編小説。
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Posted by ブクログ
壮絶な兄弟の戦争体験。兄は回天の搭乗隊員、弟は学童疎開。兄は海軍でシゴキにあい、死を当たり前に考えるようになる。それでも22歳の若さで死にたくない!と本音が垣間見えるシーンが辛すぎる。弟は学童疎開でひもじく霜焼けを悪化させ、また上級生からのいじめにあう。両親妹は大空襲で亡くなってしまう。戦争の悲惨さをこれでもか、と味わえる作品。回天という狂った兵器に乗れる異常さ。回天のことを読むのは2冊目になる、もっと知りたい。
Posted by ブクログ
浅草の質屋の息子昭二は、学童疎開で東北白石で集団生活を送り、兄善一郎は海軍の特攻兵として回天に乗船する訓練をしていた。
ある兄弟の戦争の物語。
戦争の小説は、毎回辛く悲しい気持ちになります。
親元を離れ、疎開先での生活は、子供にとってそれは寂しく辛いものだったでしょう。
親元や戦地の兄からの手紙が心の支えというのは胸に染みます。
人間魚雷回天という凄まじい兵器については、過去に読んだ『出口のない海』で知っていましたが、今回はその悲惨さはあまり感じることなく、ただ最後に善一郎が選んだと思われる道に苦しくなりました。
戦争は、二度と起こしてはいけない過ち。
平和な世の中であることを望みます。