宇沢弘文のレビュー一覧

  • 人間の経済

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    ずいぶん前に読んだサピエンス全史でも、自分の体験や知識の答え合わせをしたが、今度も経済学者の目から見た歴史を読んで、もっと深い答え合わせができた。結果は散々でしたけど、資本主義の行方や、国家間のパワーバランスや社会の移り変わりが頭の中で整理されていく感覚がとても心地良い時間だった。

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    2025年12月06日
  • 今を生きる思想 宇沢弘文 新たなる資本主義の道を求めて

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    入門に最適。期待していた通りの新書。
    この人に照らして経済学の流れを概観できるので、何だかよく見えた気になってしまう。逆に、そう構築できてしまうほど、偉人だったと言うことなのでしょう。ノーベル賞受賞者たちからエピソードが出てくるような立ち位置の人で、これからもっと再評価されれば良いですね。日本オリジナルの視座、としてアイデンティティを感じるような思想家の匂いがしますね。

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    2025年06月18日
  • 経済学の考え方

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    日本で最も著名な経済学者である宇沢弘文による、世界の経済学を敷衍し、その発展の流れをまとめた本。
    1989年刊行。

    経済学は、人間の営む経済行為を直接の対象とし、経済社会の基本法則を明らかにすることを目指した学問である。

    本書では、アダム・スミス以後の経済学の流れがまとめられている。

    ①アダム・スミスによる経済学の成立
    経済学が学問として成立したのは、1776年アダム・スミスにより『国富論』が著されたときである。

    スミスは、元々道徳哲学者として名声を得ており、彼からすれば、経済学の研究もハチスンやヒュームの思想を発展させ、社会を個々の人間の感情と行動の総体として捉えようするテーマの延長

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    2025年04月06日
  • 人間の経済

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    経済学者は、経済学を超えて人々を幸せにするるために学問をし、行動、発信してきた人だということが分かった。ノーベル賞も取れたかもしれなくて、そうしたら、この人の業績が最も知られたと思うので残念。ミルトン・フリードマンの悪行がよく分かってよかった。

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    2025年01月26日
  • 経済学の考え方

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    1989年の1月に書かれた本なので、1989年末からのバブル崩壊、その後の日本経済の惨状については書かれていません。
    宇沢先生が日本のバブル崩壊後の様々な経済政策をどう評価するのかと思いました。
    宇沢先生はマネタリズムや合理的期待形成仮説について痛烈に批判しています。これらの経済学が人間を、ただひたすら自分の利益を最大化するための計算機械とみなしているからだと思います。
    経済学は、経済現象を(できるだけ)科学的に理解したい、という動機から発生したものだと思いますが、なぜ理解したいかというと、世界の様子(貧困や不平等、格差など)を少しでも良くしたいという思いが根底にあるのだと思います。

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    2024年10月13日
  • 社会的共通資本

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    以前から勧められていたが、コモンズについて関心を持ったことを機にようやく読んでみた。日本語でコモンズをわかりやすく解説してくれている。それにも増して、この当時から気候変動問題に真正面から対峙し、炭素税の仕組みを提唱していたことには、畏れいる。

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    2023年12月29日
  • 人間の経済

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     著者宇沢弘文が遺した、これまでの講演やインタビューを1冊にまとめた本。宇沢は「社会的共通資本」という概念を生み出したことで有名であるが、これは著者がシカゴ大学で教鞭を取った時代に関連する。当時のアメリカは、第2次世界大戦で勝利して以後、覇権国家として君臨した。経済活動においては、ハイエクやフリードマンといった新自由主義(ネオリベラリズム)が主流であった。これは、ケインズ経済学と異なり、政府の介入をできる限り最小限に抑えて、個人が自由に活動できる経済体制である。しかし、本書を読むと、ハイエクとフリードマンの思想は、厳密には違うことがわかる。ハイエクはたしかに自由を重視したが、人間の理性について

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    2023年11月04日
  • 人間の経済

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    「社会的共通資本」の入門的な新書。
    中でも数々の大学を行き来し、多くの学生を教えてこられたからこそであろうが、大学教育の章には力が入っているように感じられた。宇沢先生が逝去されて9年の月日が経つが、いまこそ必読の書だと思う。

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    2023年05月10日
  • 経済学の考え方

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    日本を代表する経済学者宇沢弘文氏による「経済学の考え方」の解説になります。本書で最も大事なのは第1章でしょう。経済学とはどのような性格の学問なのかについて、宇沢氏による明確な定義がなされています。経済学は科学でもありながら芸術(アート)でもある。また理論的でもある一方、きわめて実践的でもあり、高度な倫理、正義心が求められる学問分野です。経済学は貧困などの社会問題の解決策を考えられるのと同時に、実はその問題の根源にもなりえてしまうことがあるからです(権力におもねったり自己虚栄心によって反社会的な政策立案をしてしまうことも可能)。

    宇沢氏が本書でどの経済学者を取り上げたのかについては、極めて宇沢

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    2023年05月04日
  • 社会的共通資本

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    もともとは数学の専門家だったのが、社会を良くしたいという「正義感から」経済学に転向し、36歳でシカゴ大学の教授になられたという宇沢先生の本になります。宇沢先生の教え子である岩井克人さんの本(『経済学の宇宙』)にも書かれているように、宇沢先生の心は新古典学派にあらず、新古典派およびその後裔であるマネタリスト、合理的期待形成学派について本書でもバッサリと切り捨てています。宇沢先生の言葉を借りれば、マネタリスト、合理的期待形成学派の人々は「反社会的勢力」の最たる人々、ということになりそうです。

    本書からも宇沢先生の「社会を良くしたい」という熱い思いが各所からあふれ出しているのがわかります。本書で書

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    2023年05月04日
  • 経済と人間の旅

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    前半の内容は佐々木実による『資本主義と闘った男』とほぼ同じ。復習にもなるし、理解を深める役に立つが、基本的には宇沢弘文の生い立ちから学者としての半生、理論形成に影響しただろう人間関係について。違うのは自叙伝である事。本著も佐々木実ね取材内容もどちらも読む価値あり。

    宇沢弘文の主張を理解するために重要なキーワードは、社会的共通資本。社会的共通資本とは国ないし特定の地域に住むすべての人々が豊かな経済生活を営み、優れた文化を展開し魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置。それは教育を始めとする社会制度、自然環境、道路などの社会基盤の三つによって構成される。一貫して宇沢

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    2023年01月02日
  • 人間の経済

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    ものすごく良かった。戦後の著名な経済学者が、市場主義経済を批判し、自然との共生、仏の心などを有してあるべき姿を語る。サステナビリティが重視されるようになった今だからこそ、目を通しておくべき本だと感じた。経済学者の立場から地球温暖化、生物多様性の保全にも尽力されており、主張がわかりやすい。

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    2022年08月06日
  • 人間の経済

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    『人間の経済』 宇沢弘文

    最近、仕事でESGに関連するサービスのプロモーターを担うことになったため、ESGについて調べているが、どうも懐かしい感覚になる。その感覚を突き詰めると、学生時代に読んだ宇沢弘文氏の『社会的共通資本』に行き着くことがわかり、改めて宇沢氏の著作をもっと読んでみようと思い、本書を手に取った。
    本書は、エッセー的な側面も強く、宇沢氏の過去の仕事や思想的な遍歴を追体験するような本である。宇沢氏は、稀代の経済学者であるとともにヒューマニストであった。なんでも計算範囲に含めようとするイメージの強い経済学者の中でもトップを走る宇沢氏が行き着いた結論が「大切なものは決してお金に換えて

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    2022年05月08日
  • 自動車の社会的費用

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    同時期に発売されたシューマッハーの『スモールイズビューティフル』と土地の扱いに関する提案でほとんど同じことが書いてあったことに、そしてこの提案が今ほど必要な瞬間もないと痛感することに、驚き。
    多くの人に読んでほしい。

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    2022年03月30日
  • 自動車の社会的費用

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    「資本主義と闘った男」宇沢弘文氏の名著。自動車に限らず、任意の製品や仕組みを導入するときに、社会全体でどのように費用が発生しているのかという思考実験を実演している。本書が出版された1974年は世の中に急速に自動車が流通され始めた時代であり、政府が一斉に高速道路の建設など、社会を自動車向けにし始めた時代でもある。社会の変化において、何か恣意的な変化をもたらす場合には、その変化にかかるコストとベネフィットを精緻に比較する必要がある。宇沢氏の問題意識としては、当時の時代状況として、自動車のベネフィットをことさらに主張する人間が多く、コストについて今一度目を向けるべきであると主張している。結論を先取り

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    2021年12月24日
  • 社会的共通資本

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    ネタバレ

    1928年生まれの著者

    2000年刊行の岩波新書

    なのだが、内容は2021年現在深刻に語られているすべての経済的、SDGS的持続可能社会への道標となる考察に満ちている。

    俊英としてアメリカ経済学界でノーベル賞受賞のスター学者たちの中にあっても一目置かれていたという宇沢氏が、日本に帰国、高度成長真っ只中で積み上げていった知見。

    時代より早過ぎたのかなあ。
    そして本書に書かれていることが、過去50年に少しでも顧みられていたならば、地球の現在はもう少しマシになっていたはず。

    しかし、経済が自己増殖し続け、環境も人のコミュニティも破壊し続け、ついには崖っぷちまで来てしまった現状、理性や良心や

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    2021年09月27日
  • 人間の経済

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    この人が奨めるのだから間違いなかろう、ということで経済は苦手なのだが手に取ってみた。東京大学から36歳でシカゴ大学の経済学部教授になりベトナム戦争への反発もあって東京大学の教授に転じられて長く経済学の第一線で活動されてこられた方で風貌も特異なことから自分には理解できない難解なことを話される方、という決めつけをしておりこれまで触れたことがなかったのだがここまで分かりやすい話をされる方だとは思ってもみなかった。元々は数学者になるはずがより社会の問題に関わりたいという意向で経済学に転じられたという経歴らしく、公害問題や環境問題に対し具体的な関与をされて来られたところも素晴らしい。「富を求めるのは、道

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    2021年08月09日
  • 社会的共通資本

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    この本の基本的概念=「制度主義」
    それは人間が豊かに生きることができる社会をめざすこと。資本主義は経済面では豊かになるが人が豊かに生きれるかと言ったらそうではない。
    制度主義の重要なキーワードは「自然環境」「社会的インフラ」「制度資本」から構成される3つの社会的共通資本。
    これらの社会的共通資本を「より人間的で、住みやすい社会」を前提にどう管理していくか。各国における政策の歴史や各専門分野の著名人の理論などを参考に、社会的共通資本に対してどのような変革が必要かを提言している。

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    2021年07月13日
  • 社会的共通資本

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    宇沢弘文先生の理論の中核本 
    大学時代塩野谷先生にご紹介頂いて40年漸く読破良かった
    資本主義経済体制の限界・本質的問題は今日的「格差問題」
    市場原理主義から漏れる「社会資本」の劣化
    SDGsの問題意識に通じていると思う
    宇沢弘文先生の価値観が求められる時代 コロナで加速する
    バイデン大統領の理念は近いものがある 米国の力が間に合うか

    1.アンチ新自由主義
     資本主義のダイナミズム リスクテイクとアップサイドリターン
     市場の失敗 外部経済の統制 市場化・政治規制
    2.地球という枠組みが劣化すると
     与件の中で成果を最大化する資本主義は新たな制約を受ける
    3.農村 都市・自動車 学校教育

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    2021年06月19日
  • 経済学は人びとを幸福にできるか

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    経済学が科学にシフトした分、「人々の幸せ」から遠くなっているのではという、基本的問題意識は共感できるとともに、非科学ではないかという恐れもある。
    我々は「アカデミズム」という現代宗教の門徒であって、破門される恐怖があるのは中世と変わらない。
    その呪縛を否定したのが宇沢先生、特に、公害・自動車問題など外部不経済について厳しい論調に転じられたような気がする。
    本書でもそのスタンスは揺るがないとともに、世界史では英国帝国主義、国内では官僚権力体制に対する姿勢は驚くほど厳しい。
    現在のアベノミクスや、原発問題など、宇沢先生のコメントがほしいと思うのは、甘えだろうか。
    本年、ご逝去のご冥福を祈ります。

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    2021年02月09日