宇沢弘文のレビュー一覧

  • 経済学は人びとを幸福にできるか
    宇沢弘文の正義感に惹かれる。市場原理主義を厳しく批判。ミルトン・フリードマンを憎んでいるような発言も同根。制御しない資本主義は強欲を暴走させ、しかも力を与えてしまうから、社会的に制限をかけないといけない。社会的共通資本は、市場原理主義では守れないのだ。

    本書は宇沢弘文の思想や日常に触れるエッセイや...続きを読む
  • 社会的共通資本
    一読しただけの感想という前提で、今も議論になっていることを2000年当時から問題提起していたのはすごいなーという感想にとどまってしまう。くるま社会のところは面白かった。「会社法は誰のためにあるか」を読んだ時と同じような痛快さを感じるが、その痛快さへの乗っかり方に気をつけたいと思う。
  • 社会的共通資本
    第1章は社会的共通資本の総論。経済学の講義のようでとても難解。第2章以降は、農業・都市・教育・医療・金融・地球環境と、個別具体的な各論で、こちらは判りやすかった。農業基本法が、個別農家と一工業事業所とを同列に位置づけていることへの問題提起をしているが、まったくそのとおり。「輝ける都市」の人間を無視し...続きを読む
  • 社会的共通資本

    宇沢弘文教授の数式のない経済学。
    まずここは、著者による「ゆたかな社会」についての明快な定義の引用から始めるべきであろう。

    「ゆたかな社会とは、すべての人々が、その先天的、後天的資質と能力とを充分に生かし、それぞれのもっている夢とアスピレーション(aspiration: 熱望、抱負)が最大限に実...続きを読む
  • 宇沢弘文の経済学--社会的共通資本の論理
    社会主義的統制でも自由主義的放任でもなく、かといってケインズ主義的な手法だけでもよしとはしない。そこに宇沢の言う制度学派、あるいは進化論的な経済学が置かれる。ケインズと宇沢の着眼点の違いは、次のように著されている。
    「ケインズ経済学で、財政支出の有効需要に及ぼす効果に焦点が置かれ、その内容を問わなか...続きを読む
  • 今を生きる思想 宇沢弘文 新たなる資本主義の道を求めて
    人の世には市場に任せてはいけないものがある。
    それらを社会的共通資本としてとらえる。現状とは異なる資本主義の向き合い方だ。どうしてこの考え方が主流にならなかったのか。人間の欲望とはかくも強大ってわけだ。
  • 社会的共通資本
    社会的共通資本について可能な限りシンプルに定義を試み、経済学的なアプローチで課題と対策をハイレベルな見地から示している。
    宇沢氏のアカデミズムの端的な集大成なのかもしれないと、初心者には大変ありがたい著作だ。
    既に20年経過しており、様々な環境変化を加味する必要はあるものの、普遍的な視点も多く、参考...続きを読む
  • 社会的共通資本
    宇沢弘文の伝記『資本主義と闘った男』の後に読んだため、理解しやすかった。

    社会的共通資本という概念を踏まえて、炭素税のあり方や食料自給率の問題など、現在にも通じる課題が検討されている。本書で提言されている政策は納得感があるが、”経済の定常状態を想定している”という点が、受け入れられにくかったのかも...続きを読む
  • 今を生きる思想 宇沢弘文 新たなる資本主義の道を求めて
    こんな人だったんだとおもろきの1冊。

    宇沢さんといえば、数学が得意で、経済学の科学化に貢献した人。でも、市場原理主義ではなくて、社会資本、公共財といったところにも、議論を広げた人という印象だった。

    が、これによると、もともと数学科だったのが、マルクスにいき、その後、アメリカで行動主義的な経済学者...続きを読む
  • 社会的共通資本
    22年前に本書が出版され、日本では宇沢氏の言葉は響いたのであろうか。
    社会的共通資本に対して市場メカニズムを適用し食い尽くすことは、一時的な経済発展を将来世代の安心と天秤にかけて自分達の経済発展を優先するに等しい愚行である。
    既にツケを回された"将来世代"である我々が更に自分達の子どもや孫に同じ愚行...続きを読む
  • 自動車の社会的費用
    筆者は自動車の社会的費用を分析するにあたって近代経済学の重要な柱である新古典派理論の限界を指摘している。と同時に、社会的費用の発生を許す経済活動自体、市民の基本的権利を侵害しているとの論理で展開する。
  • 社会的共通資本
    SDGsという言葉が広く流布するようになった今でも通用する普遍的な内容。

    制度主義の柱である、自然環境、社会インフラ、制度資本をいかに構築するか。

    経済学とは人間を理解することから始まる、倫理的、社会的規範から考えるという視点がとても参考になる。
  • 経済学は人びとを幸福にできるか
    宇沢は、モンペルラン・ソサエティに淵源する正統ネオリベラリズムの潮流(ハイエクやナイト)とフリードマンの市場原理主義を峻別して、前者には一定の重要性を認めた上で、後者を厳しく批判している。宇沢によれば、フリードマンは経済学について、マクロな側面についてはいっさい論文を書いていないし、ミクロな側面につ...続きを読む
  • 社会的共通資本
    2019年に出版された評伝『資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界』が大変素晴らしく、いつか本人の著書をしっかり読みたいと思っていた矢先、ちょっとしたきっかけで本書と出会いセレクト。

    本書は宇沢弘文という経済学者が後期に提示した”社会的共通資本”の概念と重要性を平易な言葉で語りながら、ひいては...続きを読む
  • 社会的共通資本
    社会的共通資本を意識しながら、資本主義を貫くというのはなかなか大変なことだということを理解しました。経済学者は大変!
  • 宇沢弘文の経済学--社会的共通資本の論理
    以前から必ず読まねばと思っていた宇沢先生の論文集。資本主義、民主主義ついて学び直しの総決算。社会的共通資本の考え方の基礎について、まず開祖ともいうべきヴェブレンの考え方を解説。第二部では「自動車」「公害」「青森県むつの大規模開発」における社会的コストの考え方を解説。第三部では「地球温暖化」「教育」「...続きを読む
  • 社会的共通資本
    民主主義とは、教育とは本来…というところからそれぞれ始まり、農業、教育、医療…に資本主義の論理を持ち込むからおかしくなっているということはよく理解できる。この辺りは『人新世の「資本論」』にも通じる。
    こういった分野について、資本主義からは切り離し、「社会的共通資本」として、その道の専門家が管理する=...続きを読む
  • 人間の経済
    市場原理主義、フリードマンの批判がとても良かった。排出権取引に至るアメリカのスタンスを見るとすさまじい。
    学問、医療、農村などの記述は共感する。ただどうすればいいのか、社会的共通資本は改めて理解しておきたいと思った。
  • 経済と人間の旅
    宇沢弘文 「経済と人間の旅」

    自伝と著者の経済学的テーマを論じた本。ケインズ、ヴェブレンを中心に 経済学のエッセンスをわかりやすく説明している

    著者の経済学的テーマを具現化したものは、社会的共通資本という考え方。特に制度を通じた医療と教育の効率的な分配に重点を置いている


    著者は ヴェブレンの...続きを読む
  • 自動車の社会的費用
    社会的公共財としての道路を使用する自動車の社会的費用の賦課方式は、自動車保有と使用に対してなされる。理想的道路の構造および自動車な公害防止基準に依存する。観光道路も同様。
    歩車分離、自転車道、歩行者保護や公害防止等の為、自動車重量税、ガソリン税が使われるべきと言えるが、すでに一般財源化されており、ど...続きを読む