宇沢弘文のレビュー一覧

  • 自動車の社会的費用

    Posted by ブクログ

    自動車が生み出す外部不経済とそれを社会的費用として内部化する方法についてコンパクトにまとめられた良書。
    自動車は混雑や事故、環境汚染などの外部不経済をもたらすのだが、そのコストを計算し、自動車利用者に負担させようというのが外部コストの内部化である。本当にわかりやすくまとめてあり、経済学初心者の方でも気軽に読める!

    0
    2010年12月17日
  • 経済学の考え方

    Posted by ブクログ

    既読の「経済政策を売り歩く人々」や「物語 現代経済学―多様な経済思想の世界へ」と取り扱っている射程は概ね同じと感じました。
    一気通読。
    近代経済学の前提やその前提から導出される諸命題などについてコンパクトながらも詳らかに記され染み入るものがありました。
    また上記他書にはあまり記述のない、ヴェブレンやロビンソンについて多く頁を割いたり、他の章でも度々登場するなどしており、感嘆。
    森嶋通夫著「思想としての近代経済学」を手にしながら、これまで本書を手にすることのなかったのは因縁でしょう。

    0
    2009年10月04日
  • 自動車の社会的費用

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    自動車の社会的費用、というタイトルに惹かれた。自動車を運転することが歩行者の基本的人権を如何に蔑ろにしているかについて論じている。その費用は一台200万円だという。

    もっとも、交通事故による障害や死亡もしくは排気ガスによる疾患などは、当事者にとっては不可逆的な事象であり、金銭に換算できない『費用』である。目が覚めるような論考であった。

    そしていっそう不味いのは、そのような当事者には低所得者層が多く含まれる。富裕層は自動車の交通量の多い・排気ガスの多い地域からは、その財力を使って容易に逃走できるからである。

    我々の世界は社会的費用を内部化する方向に向かっているのだろうか。それとも、深刻な外

    0
    2025年11月29日
  • 社会的共通資本

    Posted by ブクログ

    堅苦しい。哲学ほど難解ではないが、スラスラとは読めない。もう少し柔らかく表現してくれると読後の満足感がもっと高くなりそう。
    マネタリズムはキワモノ。市場至上主義は行き詰まり、修正が必要となること。戦後から現在をカバーする大きな物語でした。
    権力を行使する役割を担う人と、その際の意思決定にあたり専門家として助言する人と、そいうった人たちを選んだその時代を生きる人たちの、ちょっと笑えない壮大なコント、とも思えました。
    企業価値を上げること至上主義の今の日本、やっぱ周回遅れなのかな…。取り残されてしまう人たち、疎外感を感じてしまう人たちが一定数を超え、分断が政治情勢や社会現象に顕在化するほどになって

    0
    2025年06月29日
  • 社会的共通資本

    Posted by ブクログ

    SDGsの考え方のもとになることが書かれています。初版は1994年です。
    まさに2025年現在、環境問題、経済格差などの社会的問題について、この頃から声をあげていたのかと感心させられる。

    まずは、本を知った経緯や読んだ経緯を。
    当方エネルギー関係の企業に勤めています。5-6年ほど前になりますか。上司から読んでみろと言われ、受け取ったと記憶しています。

    読んだか読んでないか記憶になくなってましたが、最近家の掃除をしていると出てきたので改めてちゃんと読んでみました。

    5-6年前とは、世界情勢も自身の知識や考え方も異なり、より本の内容がスッと入って来ました。

    ゆたかな社会とはどういうものを指

    0
    2025年02月07日
  • 経済学の考え方

    Posted by ブクログ

    経済学の入門書は沢山あるが、何よりもまず本書を読むべきだと思う。必ずしも分かりやすい内容とは言えないが、日本を代表する経済学者が経済学という学問をどのように捉えているかについて、その思考の一端を覗くことができる点で貴重な一冊だろう。

    0
    2024年12月15日
  • 自動車の社会的費用

    Posted by ブクログ

    この本が出版されたのが1974年、
    高度成長期の真っ最中に、自動車による外部不経済の発生を指摘した宇沢弘文の先見の名には脱帽するばかりだ

    自動車は騒音や排気ガスを発生させている。また、我が国の道路政策も自動車のために最適化されている、すなわち歩行者道路と自動車通行道路は明確に分けられておらず、また自動車通行道路の開発に巨額の財源が当てられている。この結果、歩行者の歩行の権利は侵害されており、また公共交通サービスの低下が顕著である。
    そして、こうした費用に対して自動車ユーザーは負担をしていない。いわば、自動車による外部不経済が発生している。

    宇沢は、このような事態の背景にはこれまでの古典派経

    0
    2024年12月02日
  • 社会的共通資本

    Posted by ブクログ

    文化的で豊かな社会を持続させていくためには社会におけるどのような分野の要素、仕組みを「社会的な資本」として考える必要があり、それらの要素を管理するために必要なのはどのような視点か、著者の基本的な考えを概論的に論じた一冊。テーマは農業、都市、医療、教育、金融。本書の出版から四半世紀が過ぎ、時代はまた「資本主義のアップデート」などが各方面から議論されるようになってきたり後期マルクスの研究や再解釈も進んだりしている中で、新自由主義経済に対する独自の視点を語り続けた宇沢弘文は今後再注目される経済学者の一人ではないかと思います。

    0
    2024年07月27日
  • 社会的共通資本

    Posted by ブクログ

    経済学ってどうしても信奉する思想が先にあって、それを証明するだけのツールに過ぎない気がするんだよなあ。

    0
    2024年05月22日
  • 社会的共通資本

    Posted by ブクログ

    新書で手軽に考え方がつかめてよい。社会的共通資本=みんなの資源はみんなで大切に使おうね、という考え方を1970年代から言い続けてきたところが意義深いかと。経済学の中に位置付けるのは大変だけども。
    農業(自然)だけでなく、都市、教育、医療、金融制度などを社会的共通資本として取り上げていて興味深い。

    0
    2024年04月20日
  • 経済学は人びとを幸福にできるか

    Posted by ブクログ

    宇沢弘文の正義感に惹かれる。市場原理主義を厳しく批判。ミルトン・フリードマンを憎んでいるような発言も同根。制御しない資本主義は強欲を暴走させ、しかも力を与えてしまうから、社会的に制限をかけないといけない。社会的共通資本は、市場原理主義では守れないのだ。

    本書は宇沢弘文の思想や日常に触れるエッセイや対話文の寄せ集めなので、どこかで読んだ内容も多い。それでも理解が深まるので、私には嬉しい。

    ー 1945年夏、フリードリヒ・ハイエクとフランク・ナイトがスイスの避暑地モンペルランで会話。ナチズムによって、人間の存在基盤自体が破壊され、人間の自由や人間の存在を回復するために、経済学者として考えなけれ

    0
    2024年03月30日
  • 社会的共通資本

    Posted by ブクログ

    一読しただけの感想という前提で、今も議論になっていることを2000年当時から問題提起していたのはすごいなーという感想にとどまってしまう。くるま社会のところは面白かった。「会社法は誰のためにあるか」を読んだ時と同じような痛快さを感じるが、その痛快さへの乗っかり方に気をつけたいと思う。

    0
    2024年03月24日
  • 社会的共通資本

    Posted by ブクログ

    第1章は社会的共通資本の総論。経済学の講義のようでとても難解。第2章以降は、農業・都市・教育・医療・金融・地球環境と、個別具体的な各論で、こちらは判りやすかった。農業基本法が、個別農家と一工業事業所とを同列に位置づけていることへの問題提起をしているが、まったくそのとおり。「輝ける都市」の人間を無視した都市構想の問題も然り。地球環境での炭素税の考え方を発展させて、国連単位で炭素量に応じた基金への拠出+森林面積に応じた基金からの交付金という制度があれば、発展途上国の森林保護の動機づけにならないだろうか?

    0
    2024年03月01日
  • 社会的共通資本

    Posted by ブクログ


    宇沢弘文教授の数式のない経済学。
    まずここは、著者による「ゆたかな社会」についての明快な定義の引用から始めるべきであろう。

    「ゆたかな社会とは、すべての人々が、その先天的、後天的資質と能力とを充分に生かし、それぞれのもっている夢とアスピレーション(aspiration: 熱望、抱負)が最大限に実現できるような仕事にたずさわり、その私的、社会的貢献に相応しい所得を得て、幸福で、安定的な家庭を営み、できるだけ多様な社会的接触をもち、文化的水準の高い一生をおくることができるような社会である。」

    そしてこの実現を妨げている最大の要因が資本主義経済、とくに資源の私有を無制限に肯定するメカニズムであ

    0
    2023年08月28日
  • 宇沢弘文の経済学--社会的共通資本の論理

    Posted by ブクログ

    社会主義的統制でも自由主義的放任でもなく、かといってケインズ主義的な手法だけでもよしとはしない。そこに宇沢の言う制度学派、あるいは進化論的な経済学が置かれる。ケインズと宇沢の着眼点の違いは、次のように著されている。
    「ケインズ経済学で、財政支出の有効需要に及ぼす効果に焦点が置かれ、その内容を問わなかったのに対して、生活権の思想では、政府が果たす役割に関する理解が全く異なったものになってくる。「完全雇用を!」と言うスローガンに表されたケインズ理論に対して、「何のための完全雇用か!」と言うことが問題となってくる。このような観点から、生活権に対応するものは社会的共通資本の考え方であると言ってもよい。

    0
    2023年08月16日
  • 今を生きる思想 宇沢弘文 新たなる資本主義の道を求めて

    Posted by ブクログ

    人の世には市場に任せてはいけないものがある。
    それらを社会的共通資本としてとらえる。現状とは異なる資本主義の向き合い方だ。どうしてこの考え方が主流にならなかったのか。人間の欲望とはかくも強大ってわけだ。

    0
    2023年06月01日
  • 社会的共通資本

    Posted by ブクログ

    社会的共通資本について可能な限りシンプルに定義を試み、経済学的なアプローチで課題と対策をハイレベルな見地から示している。
    宇沢氏のアカデミズムの端的な集大成なのかもしれないと、初心者には大変ありがたい著作だ。
    既に20年経過しており、様々な環境変化を加味する必要はあるものの、普遍的な視点も多く、参考になる。特に、社会的共通資本としての医療は、指摘されている経済性の命を守る医療のバランスの難しさが最後は医療関係者の高邁なモラルに依存する、という指摘は、高齢化社会真っ只中の日本にとって喫緊の課題だ。
    最後に、各共通資本項目をまとめると、今、そして将来、人類社会はどうすべきかどうあるべきかという示唆

    0
    2023年05月28日
  • 社会的共通資本

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    宇沢弘文の伝記『資本主義と闘った男』の後に読んだため、理解しやすかった。

    社会的共通資本という概念を踏まえて、炭素税のあり方や食料自給率の問題など、現在にも通じる課題が検討されている。本書で提言されている政策は納得感があるが、”経済の定常状態を想定している”という点が、受け入れられにくかったのかもしれない。

    0
    2023年04月26日
  • 今を生きる思想 宇沢弘文 新たなる資本主義の道を求めて

    Posted by ブクログ

    こんな人だったんだとおもろきの1冊。

    宇沢さんといえば、数学が得意で、経済学の科学化に貢献した人。でも、市場原理主義ではなくて、社会資本、公共財といったところにも、議論を広げた人という印象だった。

    が、これによると、もともと数学科だったのが、マルクスにいき、その後、アメリカで行動主義的な経済学者として業績をだしたのち、日本に帰ってからは、公害問題などに関心をもって取り組んだ人。

    つまり価値中立的ではなく、価値判断をいれるしかないということをやった人なんですね。

    これはすごいことだ。

    そして、それを定性的に語るのではなくて、定量的、経済学の一般均衡論のロジックを使って、その理論の内在的

    0
    2023年04月02日
  • 社会的共通資本

    Posted by ブクログ

    22年前に本書が出版され、日本では宇沢氏の言葉は響いたのであろうか。
    社会的共通資本に対して市場メカニズムを適用し食い尽くすことは、一時的な経済発展を将来世代の安心と天秤にかけて自分達の経済発展を優先するに等しい愚行である。
    既にツケを回された"将来世代"である我々が更に自分達の子どもや孫に同じ愚行をせず、何ができるかを考え行動する事が求められる。

    0
    2022年01月17日