梅崎春生のレビュー一覧

  • 怠惰の美徳

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    面白かったです!
    怠け者の著者が昭和日本をユーモア溢れる文体で切り取った随筆と、頽廃的な雰囲気を纏う短編が収録されている。
    句読点の多い文体がある種のリズムを作って本の世界観に呑み込まれていく体験をした。
    前半の随筆は面白い語り口のなかでも考えさせられるような内容。
    後半の短編はどこか寂しげな読後感に心地よさがある。

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    2025年11月28日
  • 桜島 日の果て 幻化

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    高橋源一郎が『幻化』を絲山秋子の『逃亡くそたわけ』に影響を与えた作品として紹介していたので気になり読んでみた。『幻化』も素晴らしいが他二作の戦争物が極限状態での人間の心理を見事に描写していてすごかった。
    積読残り91冊。

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    2025年04月12日
  • 十一郎会事件 梅崎春生ミステリ短篇集

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    どの話もとても面白い。

    梅崎春生は1915年生まれだから、小説の時代は古い。でも、今読んでも面白い。
    戦争ものも、戦後のものも、どちらも良い。
    語る口調が良いし、ストーリーも良い。

    親交の深かった福永武彦は梅崎春生の文学の本質は「風俗的ニヒリズム」であり、「ニヒリズム的風俗を描くのではなく、現代風俗の中に、より観念的に昇華されたニヒリズムを探求しようとする」精神があると言っている。とてもよく分かる。

    短編集で読みやすいし、おすすめ。

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    2025年01月03日
  • 怠惰の美徳

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    戦後間も無い日本をユーモア溢れる観点から書き綴った梅崎春生のエッセイ集。現代の若者が憧れるような、文学と自堕落に耽る「怠惰」な生活が描かれながら、戦後日本の雰囲気を一市民として語る視点は興味深く、楽しめる。怠惰であることに社会は厳しいが、もっと生きることのハードルを下げて楽しめる社会が来るといいのではないかという視点も感じるが、苦しんだ先にある悦びに価値を感じる方が、人間として健全であるとも思う。

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    2024年06月15日
  • 怠惰の美徳

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    戦前戦中戦後の中を生き抜いた作者だけれど、怠惰ぶりがおもしろい。生きなければと思いつつも布団から出たくない。まるで自分のよう
    百円紙幣のはなし笑えた。読みやすかった!

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    2024年06月09日
  • 桜島 日の果て 幻化

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    心情の描写がとても緻密で繊細だった。「桜島」や「日の果て」の戦争における中での主人公や環境の息苦しさや理不尽さ、そして「幻化」における「死」にじわじわと向かっていく者の空虚さの表現が素晴らしいと思った。

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    2023年07月20日
  • 桜島 日の果て 幻化

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    戦争という事実の記憶は、戦後66年経って、まだどれだけ生きているでしょうか。私たちは、その記憶を保ち続けることはできるのでしょうか。

    梅崎春生は、いわゆる「戦後派」の作家。梶井基次郎の影響を指摘される、鋭敏な感覚を持つ作家です。彼の代表作のひとつ、昭和21年9月発表の「桜島」は、作者自身の体験をもとにした作品。終戦の迫る1ヶ月余りの時間を、鹿児島県の桜島の海軍基地で過ごす暗号員の話です。日本の敗色濃厚な状況で、情報がなかなか入ってこないことにいらだちと不安を隠せない上官や主人公の、極限に追い込まれた精神状態が描かれています。

    「その夜、私はアルコールに水を割って、ひとり痛飲した。泥酔して峠

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    2022年10月06日
  • 怠惰の美徳

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    がんばらない。楽していい。たっぷり休め。戦争するな。日本すごいって勘違いするな。年寄りの言うことは聞かなくていい。

    今の時代こそ、梅崎文学が必要。

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    2022年07月10日
  • 桜島 日の果て 幻化

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     初期の作品3つと、最後の作品「幻化」が収録されている。「桜島」などつとに有名なものはたぶん高校生の頃読んだと思うのだが、手元になく読み返したかったので買った。
     それにしても講談社文芸文庫は高い。ハードカバー並みに2,000円するものもあり、ちくま学芸文庫よりも更に高い。売れ線でない本を敢えて売っているラインナップは魅力的だけれども、高いのでなかなか手を出せない。異様な高さの代償として、一つ一つの巻末に「作家案内」や「著書目録」が入っているのは、それはそれで意義があるのだが。
     本書の巻頭に収められている「風宴」(1938《昭和13》年)は24歳の頃書いた処女作で、翌年雑誌に掲載された。この

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    2021年10月02日
  • 桜島 日の果て 幻化

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    梅崎氏の内面描写は本当に精緻だなあと感嘆していたけれど、解説をよんで彼に独特なのは他者への目線なのだという視点をもらって膝を打った。単に内省的なのではなくて、必ず心の動きと連関する他者の存在がある。だからこそつまらないモノローグにはならなくて、作中人物の心の動きが嫌に生々しいので、読者に対して己の中にもある昏い何かを、刺激してくるのだと思う。その生臭さとある意味風流な陰翳をもった彼の文章をとても好ましく感じる。その意味では特に『風宴』は秀逸だが、これが処女作だというのだから恐ろしい。

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    2021年07月14日
  • 桜島 日の果て 幻化

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    ネタバレ

    『幻化』
    <空気のような狂気>
    全体を通してユーモアなのか狂気なのか明確な線引きを拒む軽妙な語り口ですすんでいく。狂気があまりにも透明で空気のように紛れ込んでくるので、ふとするとわたしたちは知らぬ間にそれを呼吸している。
    しかし知らぬ間に呼吸し得るということは、普段からわたしたちは同じ種類の狂気を呼吸しているということで、彼の語りはその正常と異常とが溶け合ったわたしたちのごく当たり前の世界を、ただ微視的に描き出しているということになるのだろう。

    <おかしさについて>
    「天才と狂気は紙一重」と言うけれど、梅崎春夫の作品を読んでいると「笑いと狂気は紙一重」のほうがしっくりくる。
    おかしさとは笑え

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    2021年03月13日
  • 怠惰の美徳

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    【滝なんかエッサエッサと働いているようだが、眺めている分には一向変化がなく、つまり岩と岩の間から水をぶら下げているだけの話である。忙しそうに見えて、実にぼんやりと怠けているところに、言うに言われぬおもむきがある。私は滝になりたい】(文中より引用)

    何もしないことの素晴らしさを説いた表題作品を含む短編小説集。何もしない、何もしたくない人間の目に映る社会の厳しさやおかしさを見事に捉えた一冊です。著者は、海軍体験を踏まえた『桜島』で注目を集めた梅崎春生。

    なにかと心がささくれ立つニュースや出来事が多い毎日に効いてくる処方箋のような作品。肩の力をふっと抜くことのできるエッセイ調の小説の数々が、現代

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    2021年01月26日
  • 桜島 日の果て 幻化

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    『幻化』は、戦争文学である『桜島』とは異なり、戦後文学であるという点がやはりポイントなのだろう。戦争があり死が身近であった青春を振り返り確かめることを通して、生がよりくっきりと感じられた。
    『幻化』を読んでいる最中は人称がいつも気になった。三人称で書かれていると思ったら、主人公の幻想(?)では一人称的な書き方となっている。これによって、主人公の精神が本当に病んでいるのか、病んでいたとしてもそれによる幻想が必ずしも非現実であるとは言い切れないような感じとなっているのではないだろうか。

    『日の果て』のラストはまるで映画のクライマックスのような時間感覚によって、主人公の心理に迫る描写が面白か

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    2020年03月16日
  • 桜島 日の果て 幻化

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    なんと言っても「幻化」が素晴らしい。

    過去にNHKのドラマとして、映像化されているらしい。

    映像的な風通しと息苦しさに、読者は右往左往しながら、火口の男たちのセンチメンタルに息を呑みます。

    こういった精神疾患を患った主人公を作品にした作品はとても多いけれど、これは決定版かも。

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    2020年03月14日
  • ボロ家の春秋

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    今まで読んだことの無い作風だったので、漫才にたとえれば「ぞうさんのポット」のような笑いが含まれた短編集でした。とても好ましいです。

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    2009年10月04日
  • ボロ家の春秋

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    主人公はみんな貧乏で気が弱く、お話は哀しくやるせなく、でもなんだかマヌケというかとんまというか、ヘンだ。
    おとぎ話みたい。
    今まで全っ然、いっこも読んだことなかった梅崎。梅崎春生はとてもいい、地味で。

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    2009年10月04日
  • 桜島 日の果て 幻化

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    梅崎春生,生涯の作品のどれも,すこし鬱気味で,虚無的なトーンに染まっていて,それでいて渋いユーモアに満ち満ちていて大好きです。

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    2009年10月04日
  • 桜島 日の果て 幻化

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    読み終えた時は、虚無という言葉しか浮かんでこなかった。死と隣り合わせの状態でも、生きなくてはいけない。その葛藤やどうしようもなさが強く印象に残った。人間の心理描写を鋭く描いている。

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    2025年07月07日
  • 怠惰の美徳

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    とにかく、このひとのことすごく好きだ。
    怠けていながらも、人間の底にあるものをいつも見ているし、人間を愛しているし、とてもやさしいひとだったんだろうと思う。

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    2025年07月06日
  • P+D BOOKS 桜島・狂い凧

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    「殺されること」って本来言葉にできない怖さがあるじゃない?でも平和な日本の私にはその怖さがわかるようでわからない。その怖さをわかってるふりしてもそれでもとても軽いんだ「殺される」ってことのイメージが。
    戦争知らない世代が読んだらどれくらいこの怖さが伝わるだろうか?そう考えた時にこの長くない「桜島」はとてもよかった。じわじわと怖い。これか…的な。
    戦争なんて人が壊れるだけで何も生まれないものまず基本だと改めて。
    それから本書の描写の数々に自分をただ生かす(心を保ち生きる)だけでもこれほどまでに過酷かと忌々しくおもうリアリティある精神の1冊。

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    2025年05月29日