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Posted by ブクログ
「生れつき私はじっとしているのが大好きで、せかせか動き回ることはあまり好きではない。体質的に外界からの刺戟を好まないのだ。」
(『怠惰の美徳』)
おそらく梅崎春生は、根本的に体力が乏しかったのだろう。蝋燭に例えるなら、芯が細く、強い風や無理が効かない身体。私自身も健康な人と比べれば虚弱なほうなので、このグダグダした文体が妙に身体に馴染むというか、心地いいというか。
梅崎の生活態度は、古代ギリシャの哲学者エピクロスが説いた「隠れて、生きよ」、「アタラクシア(心の平穏)」もどこか通じる。外界の刺激を必要以上に求めず、自分にとって最低限の穏やかさを守って生きる姿勢だ。
彼の「怠惰」は、単なる「サボる」という意味ではなく、虚弱な個体が、生きづらさから自分を守るための、切実な防衛本能だったのだと思う。
体力や気力をすり減らしがちな人とかは、この本を読むとなんかラクになれるかもしれない。
Posted by ブクログ
【滝なんかエッサエッサと働いているようだが、眺めている分には一向変化がなく、つまり岩と岩の間から水をぶら下げているだけの話である。忙しそうに見えて、実にぼんやりと怠けているところに、言うに言われぬおもむきがある。私は滝になりたい】(文中より引用)
何もしないことの素晴らしさを説いた表題作品を含む短編小説集。何もしない、何もしたくない人間の目に映る社会の厳しさやおかしさを見事に捉えた一冊です。著者は、海軍体験を踏まえた『桜島』で注目を集めた梅崎春生。
なにかと心がささくれ立つニュースや出来事が多い毎日に効いてくる処方箋のような作品。肩の力をふっと抜くことのできるエッセイ調の小説の数々が、現代の心性にもピタリと当てはまっているように感じました。
推薦作として読みましたが確かに良かった☆5つ
Posted by ブクログ
【目次】
I
三十二歲
己を語る
*
怠惰の美徳
蝙蝠の姿勢
憂鬱な青春
終戦のころ
編集者の頃
茸の独白
エゴイズムに就て
世代の傷痕
近頃の若い者
文学青年について
私の小説作法
人間回復
衰頽からの脱出
聴診器
閑人妄想
二塁の曲り角で
昔の町
暴力ぎらい
烏鷺近況
只今横臥中
あまり勉強するな
オリンピックより魚の誘致
居は気を移す
法師蟬に学ぶ
チョウチンアンコウについて
アリ地獄
II
寝ぐせ
猫と蟻と犬
寒い日のこと
一時期
飯塚酒場
百円紙幣
防波堤
解説 荻原魚雷
【感想】
小説家だけど「小説を書くことは、私には苦痛です」と正直に書いてるのが憎めない。ときどき鬱になって布団から起き上がれないのは深刻ではあるはずなんだけど、その描写が妙に軽やかでちょっと笑ってしまった。
でも書名どおりのだらしない話ばかりかと思いきや、戦中と戦後を生きた人だけあって人間観察や時代・社会への批判はけっこう冷徹で、日本社会の最大の不幸は未熟でありながら一種の偏った完成を示していること、という主張なんかはそのまま今の日本にも当てはまりそう。
小説作法、チョウチンアンコウ、猫のカロの話もおもしろかった。
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