ジュール・ルナールのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
以下、中学2年生の時に書いた読書感想文をそのまま掲載:
「あなたの分のメロンはないわ。だって、あなたは私と同じでメロンが嫌いだから…ええ、まちがいないわ」
「そうか、ぼくはメロンが嫌いだったんだ。ママが間違いないと言うなら、間違いない。」
ジュール・ルナール作の「にんじん」。この本は、あらゆる面で私に大きな衝撃を与えたし、私なりの大きな褒め言葉としてあえてこう言いたい。「出来ることならもう二度と読みたくない」。それほどに悲しくて、痛い。
まず、この話の主人公の本当の名前は最後まで分からない。なぜかといえば、この主人公は終始周りから「にんじん」と呼ばれ続けるからである。にんじんは髪色が由来のあだ -
Posted by ブクログ
これは大人が読む本だと今さら気づいた。子供の頃読んだ気がするがたぶん子供向け版だったと思う。赤裸々な自伝である。子供時代の思い出は無邪気なだけではないはずである。両親のいやな面を見たり、残酷なことを楽しんだり(動物だけでなく人に対しても)、異性に性的な感情を抱いたり。みんなが平気で忘れて向き合わない恥ずかしい子供時代。これこそがこの作品の素晴らしさだ。読んだきっかけは大竹しのぶのミュージカル「にんじん」を見たからだが、原作には悪役の母親も正義の味方の女中も純粋な主人公も出てこない。とても人間らしく、時に懐かしく時に失望させられるそんな家族、仲間、知り合いたち、にんじん本人だ。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ『にんじん』なんて可愛らしいタイトルの意味が切なくなってしまった
最後まで主人公のにんじんは誰にも名前を誰も呼ばれなかったのだ
お母さんのにんじんへの仕打ち、価値を見いだした途端気にかけ始めるお父さん、兄、姉もにんじんのこと下に見てるのがよくわかる
そりゃ、にんじん、歪むよね
途中途中に入る動物へのにんじんの仕打ちがにんじんの歪みをあらわしていたように感じた
なんかどのエピソードもパンチすごくて、それでも誰かに愛されたいと願い叶わず、から回るにんじんの姿が上手く表現されている
全て話、母親から離れたいと願ったのに父親になだめられるようなこと言われたにんじんの気持ちを思うとあまりにも痛いで -
Posted by ブクログ
ネタバレ訳者による解説が秀逸である。今から読むならこの高野優さん訳の新潮文庫版をおすすめしたい。
にんじんはかわいそうだけど、にんじんも小憎たらしいところがあるからそこまで感情移入できないというような書評や感想を目にしたことがあるが、なぜにんじんはそういう言動に及んでいるのかということだ(訳者の違いによって、よりどっちもどっちと受け取れるような訳になっているものもあるのかもしれない)。
誰がなんと言おうが、このにんじんという作品は母親に苦しめられている少年が母親を拒否するまでの成長を描いた物語である。
なんとなく児童文学ぽく扱われている気がするけど、大人こそ読むべき本ではないかと思う。 -
Posted by ブクログ
ジュール・ルナール『にんじん』新潮文庫
はじめの方は、読み進めれば進めるほどに憤りや嫌悪感、不快感が募るばかりだった。
一言で片付けるなら、かわいそうなにんじん。
しかし、話が進むにつれて、段々とお母さんの方がかわいそうに思えてくる。
なぜなら、お母さんは誰にも好かれていないからだ。
一方のにんじんは、母親からの精神的虐待はあるものの、彼を想う人は周りにいく人もいる様子だ。
特に、名付け親のおじさんは、この話のなかで唯一と言っていいほどにまともで暖かい人物である。
ルナールの自伝的小説である本書の大きなメッセージの一つであり、ルナール自身が最も求めた言葉が、次に述べる名付け親のお -
Posted by ブクログ
いじめられっ子の立場において
家庭内に居場所を見いだしている男の子がいる
彼は本当の名前を剥奪され
「にんじん」というあだ名でしか呼んでもらえない
家庭内にある歪みの中心に「にんじん」は立っていて
そこに決定的な亀裂が入らないよう押さえている
そんな「にんじん」を家族たちはむしろ
愚図で意気地なしのどうしようもない奴だと考えている
…そういう形で家族たちは「にんじん」を愛しており
また「にんじん」も家族を愛してはいるのだが
ときどきいたたまれなくなる彼は
自分より弱い誰かを見つけてきて
自分がされる以上の残酷な目にあわせたりもする
さて、この家族たち…直接「にんじん」をいじめるのは主に母親 -
Posted by ブクログ
なんともつかみ所のないと言うか、複雑な話だった。荒唐無稽であるようにも思う。
表向きな物語としては、その風貌から母親から疎まれ、イジメのような仕打ちをうけながらも賢明に生きる少年の物語となるのだろうか。
しかし、これはそうそう簡単な物語ではない。
ストーリーから考える少年像としては、素直で純粋だが、心の強い男の子というイメージがわくのではないだろうか。しかし、この物語の主人公、通称にんじんは、けして、誰もが愛する事の出来るような少年ではない。暴力的で、陰湿ですらあり、ハッキリ言って嫌な子供なのである。少年犯を犯す現代っ子の様な心理の持ち主なのだ。母親にしろ、ただ意地悪な母親ならば分かりやすいの