ジュール・ルナールのレビュー一覧
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雰囲気的に、ほのぼのとしたものを期待して手に取ったこの本。
予想は見事に裏切られ、なんとも形容し難い、複雑…というか、あまり快い気分にはなれない本だった。
平易な言葉で書かれていながら、理解しがたい、という複雑。
何が理解し難いかって、その主人公の少年「にんじん」だ。
平気で動物を惨殺したり、嘘をついたり。
母親からは兄弟に比べても可愛がられない「にんじん」
同情したくなるが、なんとなく出来なかった。
それは、「にんじん」がただかわいそうな少年として描かれていないからかもしれない。
でも、父親との抱擁をもとめる話や、可愛がってくれる名付け親のおじいさんとの
話などは、素直な「にんじん」が描 -
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にんじん―。髪の毛が赤くてそばかすだけらけのルピック家の三番目の男の子はみんなからそう呼ばれている。あだなをつけたのはお母さんだ―。
原作は1894年の出版。村田沙耶香sanが小学生の時に読んで、「最後まで絶望的であることにすごく救われた」と紹介されていることを知り、手に取りました。
冒頭から母親による精神的な虐待につぐ虐待の連続。「にわとり小屋」から始まり、「うさぎ小屋」辺りでは、読むのがツラ過ぎて断念しそうでした。ただ、「ウマゴヤシ」で兄のフェリックスと野原で無邪気に遊んでいるシーンは、少し救われました。
訳者の高野優sanのあとがきにもありましたが、本作は、この辛い状況でもにんじん -
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ネタバレどんな話かは一言で言い表せない。一話一話が2~3ページで収まる短編集のような構成となっている。一見すると、にんじん一人だけが、他の二人の兄姉に比べて母親に冷遇されてひどいことをされるという悲しい話とも捉えがち。しかしにんじんがそのことに関して特別悲嘆にくれ続けているわけではない。日常のことに関して男子のよくある見栄心とかそういった感情が多く書かれている。それに、ではにんじんが聖人君子のような人間なのかと言われれば、ザリガニ捕りのために猫を殺したり、寧ろその対局にあるような行動が多い。そのため、一重に悲劇とは言い切れない。
この話は恐らくにんじん目線での様々なエピソードを書いているもの。なのでこ -
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題名が有名ランキングではかなり上位に来るであろう、しかし実際には読まないよなランキングでも上位に来そう、なんだけども、とりあえずにんじんが何を意味しているかは割とすぐに分かった。母親と息子の関係ってのは今も昔も重要なテーマなんだろうけど、こゆのを心理学的に読み解こうとする現代医学というかカウンセリングの類とか、無い時代には、本を読んで何かを知ろうとしたんだろうか。でもってこれが名作と持て囃されるのは、そこに何がしかの共感を得る人が多いという事なのか。
しかしガキンチョの頃から銃をぶっ放すような時代を見るに、銃を規制するのと銃犯罪がなくなるのは全く関係ないっていう話か。動物を簡単にぶっ殺せなくな -
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奇怪なわが子虐めの物語の体裁をとる『にんじん』。
ここに出てくる母親は、明らかに心を病んでいて、その原因なのか結果なのか、父親との関係が奇妙だ。
にんじんは屈折した思いから残酷なことをしでかしたりもするが、賢い子で、両親の関係がどんなものかを見抜いている。
にんじんと父親とのあいだにはこのような葛藤がなく、この息子と父親とのあいだには、他人同士であるかのような距離感があると思う。にんじんは両親の結婚生活が父親の独りよがりなものであるにすぎず、母親は妻として容れられていないことを洞察しており、母親の女としての悲哀を子供ながらに感じ、心を痛めてきたようだ。
子供の本としても知られる物語だ -
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データなしにつき転用 家のは岩波文庫版
お父さんとの会話が忘れられません。
ルビック氏:「諦めろ。鎧兜で身を固めろ。それも20になるまでだ。性質や気分は変らんでも、家は変えられる。われわれ親兄弟と縁を切ることもできるんだ。それまでは、上から下を見下ろす気でいろ。神経を殺せ。そして、他の者を観察しろ。お前のいちばん近くにゐる者たちも同様にだ。こいつは面白いぞ。わしは保証しとく、お前の気休めになるような、意外千萬なことが眼につくから。」
にんじん:「それやそうさ。他の者は他の者で苦労はあるだろうさ。でも、僕あ、明日さふいう人間に同情してやるよ。今日は、僕自身のために正義を叫ぶんだ。どんな運命でも