カトキハジメのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本作において、かなり異質なエピソードを含むこの13巻。けど同時にネェル・アーガマでの内紛を描くことで異なる立場の集団による信頼や許容の難しさをこれでもかと表現しているね
前巻ではユニコーンが発する虹の光に包まれた事で連邦とジオンの間に和解への道が開かれたのではないかと思われた。でも、その程度の奇跡で和解できるなら、それこそアクシズショックの時に和解できていたはず
それを思い知らされる内容だったね
ネェル・アーガマに拾われマリーダも救出できた状況。ジンネマン達としてはそれだけで充分と言えるかもしれないのに、戦争が終わったわけではない彼らはその程度で平和なんて享受できない
というよりも対策と監視が出来ていなかったネェル・アーガマ側の失態とも言えるのか
ただ、それによって割を食ってしまうのはいつだって振り回される側の人間であるわけで
ジンネマンと協力してミネバやマリーダを連れ戻せたのに、その人達を威嚇するための銃を渡されるとか堪ったもんじゃないよなぁ……。バナージって多くの戦場に介入し今もガンダムに乗り続けているけど未だに軍属じゃないのに……
そうして当然のようにネェル・アーガマを乗っ取ったネオ・ジオンを責めるのは果たして正しいと言えるのか…
元々連邦とジオンは敵対していた。ガランシェールとネェル・アーガマという別枠を見つけられた所で大枠が変わらないなら状況は変えられない。この段に来て、ジオンの服装に身を纏うミネバは本当に敵になってしまったかのよう
でも、ここで面白いのはミネバがそうしてジオンの姫君として振る舞う行為は、フル・フロンタルがシャア・アズナブルの見た目を纏う行為とどこかリンクしている点かな
フル・フロンタルはシャアではない。しかし、あの見た目と思想を纏うことでシャアであるかのように偽装できる。彼はそうやってネオ・ジオン残党を纏め上げている
なら同じようにミネバだってジオンの服を纏うことで偽装していると考えることも出来る
その思惑が明らかになるのがタクヤへの伝言であり、ちょっとお転婆な医務室での殴打だね
一方、カイ・シデンが仮の主人公となる形で関わる事になったアーメットとバハールの兄妹
彼らの境遇は悲惨の一言。ダカールを襲撃したテロリストと同じ宗教を進行しているというその一点で迫害を受け、父も理不尽に殺される。父の訃報を前にしたアーメットの態度はある意味当然のものだったかもしれないが、そこで流されてしまっては復讐の連鎖に取り込まれる
それを止めたバハールは確かに真の善へ向かおうとしていた。だというのに……
カイが向かい合うことに成るのは地上の人々の物語。宇宙では『ラプラスの箱』を巡る陰謀と疑念が渦巻いているが、カイはそれによって人々の間に生じた様々な歪さと向き合っている。だからローナン・マーセナスの誘いにも乗らない
彼はひたすらに無力な人々と関わり続けるね。ただ、彼はもうMSに乗るわけじゃないし、敵となるのだってMSではなく人間
その状態で何が出来るのか……
宇宙と大地それぞれで行われる対立と疑念、それに抗う変化への道。バナージやミネバ、そしてカイは可能性を示されても変われない者達を前に何を示せるのだろうか? -
Posted by ブクログ
マリーダやミネバだけでなく多くの人を助けたいバナージ、ミネバだけを助けたいリディ。そこにこそ大きな差が生じてしまった気がするよ
体制に抗い続ける人間、体制に呑まれてしまった人間。そういった両者を前にしてザビ家の生き残りとして藻掻き続けるミネバが手を取りたい相手なんて決まってる
だからってあの状況で瓦礫から手を離して自由落下を選択するのは度胸があるとかそんなレベルじゃないけど
バナージを信じていたから飛べる。バナージなら助けてくれると確信しているから待てる
人を傷つけ殺すしか出来なかったユニコーンでようやく大切な人を助けられたバナージは大きな分岐点を正しく乗り越えられたように思えるよ
ミネバを助けてユニコーンを人を助ける機体と出来たなら、マリーダだって助けられる。「必ず連れ戻すよ」と約束する際のバナージとミネバの顔がいいね。二人はあんな顔ができるようになったのだと成長を感じられる
でも、本当の意味でマリーダを助ける役目を課されているのはジンネマンであるのは良いね
ジンネマンも多くを失って、彷徨って、何を壊すか何を守るかに藻掻いた人物。そんな彼が『ラプラスの箱』やバナージと関わる中で最も守るべき相手と定めたのが娘の名前を付けたマリーダか
単純に助けるとか守るとかではなく、「帰るんだ」の台詞にジンネマンの本質的な願いが凝縮されていると感じられるね
そしてそしてのガランシェールとネェル・アーガマの接触、大きな枠で考えれば連邦とジオンという敵対勢力。でもどちらもその大きな枠から外れるが如く自己の理念に従って行動する場面もあった。だから連邦とジオンでありながら本当に守らなければならないものの為に協力できる
その両者を結びつける役をユニコーンガンダムが担う展開は良いね。ユニコーンはどちらの艦にも乗船したし、どちらの艦の為にも戦った
ケーブルを掴むためにNT-Dを発動させてしまうのは大げさであるように思えてしまうけど、ミネバ救出の一件でユニコーンを滅ぼす者から救う者に変えているのだから、これは正しい意味で使われていると言える。だからこそ救いの虹が関係者を包み込むわけだ
この時、バナージが救おうとしてけれど救えなかった人たちが助けてくれる描写が入るのは良かったなぁ……
ミネバに拒絶された末にバンシィに魅せられるリディ、蹂躙され人心が乱れたダカールに降り立つカイ・シデン
ユニコーンが新たな意味を掴んだ中で選ばれし者ではない者達による物語が始まりそうだ -
Posted by ブクログ
バナージの意思で止められる筈のパラオでの戦闘。けれど、戦闘を止める為のマリーダとの会話が逆に戦闘を引き伸ばしてしまうという……
これを欲をかいたと表現すべきか、それとも戦闘を止める為に全力にならなかったと見るべきか…。また、バナージにとって不幸と言えるのはNT-Dの存在だね。ニュータイプを殲滅するシステムはバナージの意思に反して苛烈な戦闘を行ってしまう
常人には不可能な戦闘はバナージがユニコーンの処理装置となる事で成立してしまう。戦いを忌避するバナージの存在が戦いを継続させる構図はあまりに残酷
だからこそ、最後の最後に意思をねじ込んでユニコーンを止めてみせたバナージは変化の兆しを手にしたといえるのだろうね
マリーダへの攻撃を止めた後に繰り返し発され、マリーダにも教え諭された「それでもと言い続けろ」 これはバナージにとってとても大切な指針となるね
既にバナージが戦場を構成する一つの単位になっている事実は変えようがない。その中で誰かを殺してしまう可能性も変えようがない。けれど、それが可能性であるならば最後の最後まで自分を戦闘単位として扱わない事でバナージは戦場を変えられるかもしれない
マリーダとの再戦はバナージにユニコーンの恐ろしさを突き付けたけれど、同時にユニコーンで戦場を変えられる可能性も示したわけだね
そういった可能性が示されつつも、状況が動き続けている点はどうしようもない。連邦もネオ・ジオン残党も『ラプラスの箱』を求め続ける。その鍵となるユニコーンの使い手であるバナージが状況の中心を為す構図は変えられない。バナージの意思は無視される
だから今のバナージには自分を再びユニコーンに載せようとするダグザは「悪い大人」に見えてしまうのかもしれない
一方でダグザ自身もバナージをそういった状況に追い込む自分に忸怩たる思いを抱いているという構図は好み
彼は自身を組織を構成する歯車であると認識し組織の論理に従って行動しているけれど、その中でどうにかしてバナージを「一人の大人」として守ろうとしている
その想いが現れたのがユニコーンへの同乗なのかもしれない
バナージもダグザもとても大きな存在の構成単位である事実が有るために、思い通りの行動は取れないどころか想いは無視される
バナージはそれと出逢ったばかりだから向き合い方が判らず藻掻いてばかり。けどダグザがそれとずっと向き合ってきたとするならば。この二人が同じコックピットに乗り込んで会話を積み重ねるのはバナージのこれからにとってとても良い影響を齎すのかもしれない
そして宇宙世紀始まりの場所にて起きる不要な筈の戦闘。ここでもバナージに難しい選択が突き付けられるね。ギルボアが求めるのはマリーダの奪還。つまりギルボアの要求を通せれば戦闘は止められる
でもそれは敵の言い分だし、そもそもシャトルからどうやってマリーダを救い出すというのか?どう動くか判断の難しい局面に再び現れる赤い彗星
マリーダとの戦闘で得た変化の兆しをどう扱うのかという点が試されているかのようだ -
Posted by ブクログ
巻の前半はフル・フロンタルの襲撃後の話
面白いのはリディとバナージが似た構図を取り始めた事か
リディは敵方であるミネバから、バナージは敵方であるマリーダからそれぞれ異なる立場の話を聞いた。そして最終的に敵方を助けるため、もしくは敵方こそ自分を助けてくれる存在になる
よくガンダム作品は単純な勧善懲悪でも正義と悪が対峙する物語でも無いなんて言及されるけど、バナージとリディが異なる所属の人間と交流する様が描かれる事で、これまでただの敵と思われていた相手の事情が見えてきて、ガンダム作品らしくなってきたように感じられるよ
そんな中で描かれたバナージとフル・フロンタルの会談は意味深な部分が多いね
フル・フロンタルは自分からシャア・アズナブルであると名乗る気はないようだけど、他者からそう見られる事、そして他者にそう誤認させる事には積極的であるように見える
本人が言うように彼は器であり、そこに何を見出すかは他者の自由だからこそ、彼への問い掛けはどうしても重い意味を持ってしまう
だとしたら彼に戦争の理由を問い詰め、テロ行動を批判し「あなたはシャア・アズナブルなんですか!?」と詰問したバナージの行動は蛮勇と言え、同時にフル・フロンタルという器に何が入っているか、それどころかフル・フロンタルとは何者かを見定めようとする行動と取れるのかもしれない
そういった意味ではバナージはまだ何も知らない人間だね
自分が戦闘の中で人を殺したことも、ジオンに与する形で生活する家族が連邦をどう思っているかも
マリーダが話したのは教科書に乗らない宇宙棄民の苦難と信仰の話。そして軍人としての心構え
バナージが何処まで受け止められたかは曖昧なまま。けれどティクバが差し出したクッキーをかじれたなら、バナージは自分が知らない様々を飲み込み始めたと言えるのだろうね
そうして始まるバナージとユニコーンを取り戻す隠密作戦
たったそれだけの為に引き起こされる新たな戦闘。以前にバナージが戦った理由はそれぞれ、コロニーから敵を引き剥がすため、オードリーを戦争の道具にしないため
今回はパラオからユニコーンを連邦の手に戻すため。いわばバナージの意志によって戦闘を終わらせられる
ただ、終わらせる為には敵を倒す必要があって…
どちらにせよバナージにとって再び辛い戦いになりそうだ -
購入済み
メカの戦闘シーンが
ゲームの元ネタがある先品だから仕方ないのかもしれないけど
メカのロボットの戦闘シーンが何やってるのか良くわからなかった。
メカの拡大コマが多いからか?どっちの機体か分かりづらく、何してんのか
分からない。切りつけてんのか、ビーム出してるとか?
ゲームのプレイ画面を遠景で見ているくらいのコマ割でも良かったのかも?
人物のシーンはキャラも綺麗でいいですね。
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Posted by ブクログ
本作において異質さを放つ前巻からのエピソードに蹴りが付く巻。これまで『ラプラスの箱』を巡る因縁に一切絡んでいなかったカイ・シデン、家族を守るか恨みに従うかを彷徨うジンネマン。そういった人物を中心に据えつつ対立する運命の中で必死に抗い続ける人々の姿が。これはバナージ達が解決しなければならない問題を当事者目線で描いたものだったのかもしれないね
対立に踊らされる人々が描かれるからこそ、対立構造そのものを変える立場に居るバナージやフル・フロンタルの言葉にスポットライトが当たる構図になっていたのかな
器として自分が属する組織が望む形で箱を使うと宣言するフル・フロンタル。所属や生まれに関係なく皆の為に箱を使うと宣言するバナージ
今後を見据えると面白く思えるのは対立構造の上位にいるこの二人もまた対立しているという点
そういった対立構造をあの場面で越えようとしたのがマリーダであるのは本当に良いね
彼女はジオン側でありつつ、実際の行動原理は自身を拾ってくれたジンネマンのため。そのジンネマンがマリーダの反逆を諫める行動に出た。それは彼女が仕えるミネバの意思に反する
そこで生じるジレンマを「わがまま」という子供っぽい言葉で乗り越えてみせたマリーダは対立を超えるだけに留まらず、ジンネマンの心すら救ってみせたかのよう
「偶然関わっただけ」の立場であり対立構造そのものにも関係のないカイ。彼がアーメットを助ける理由として語るのは「責任」
それは宇宙世紀に纏わりつく因縁も『ラプラスの箱』も連邦もジオンも関係なく、人間としてごく当然の感情。でもその当然さを貫くのは実際はとても難しい。そういった意味では自分のスタンスを変えないカイの英雄っぷりが気持ちよく描かれていたね
また、テロリストとのカーチェイスシーンでも、迫り来る銃弾や爆発を物ともせず、撃ち抜くべき相手だけを正確に撃ち抜いたシーンにも痺れてしまうね!
そういう格好良さを見せられたとしても最後には言葉しか役に立たない。対立を対立にしない為には言葉と行動を尽くさなければならない。けど、失った哀しみと植え付けられた憎しみが強すぎるアーメットに必死に語るカイの言葉は簡単には届かない
だからこそアーメットを助けたいという真摯な行動が必要になって、哀しみを打ち消す為の優しさがこの街に残っていると示す必要があって…
言葉と行動によってアーメットを助けてみせたカイはやはり素晴らしい英傑だよ。でも、そんな人物でもアーメットの最後の嘆きには答えられない点からは、人を救えても人が作り出す対立構造の根深さと残忍さは消せないのだという難しさが見えてしまうね……
バナージがマリーダに好物を聞くシーンはどう見ても死亡フラグなんだけれど、その前のシーンと併せる事でバナージが少しでもマリーダが生存する可能性、理由を広げようとしているようにも映る
果たしたいと思うから戦いが終わった後の約束を結ぶ。それは未来への可能性を開く約束になるはずだけど……