土居征夫のレビュー一覧
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イノベーションは、ある理論を前提とし、そこから論理分析的に正しい答えを引き出す演繹的思考では実現しない。完全競争状態の市場という理想郷を不完全状態に変えることで、企業は利潤を手にすることができるという考えをモデル化したのがマイケル・ポーターだが、そういうやり方では現実の延長線上にある戦略や革新ならぬ改善しか生まれない。
それに対して、個別具体の現実から出発し、新しいコンセプトや物事の見方を打ち立てようという強い思いから生まれる帰納的思考が、イノベーションには不可々となる。帰納的思考は最後には必ず行動につながる。行動によってみずからの考えや判断の正否がわかるからだ。
本田宗一郎はまさにそういう人物だった。彼の口癖が「試す人になろう」であり、静岡県浜松市にある母校の敷地に石稗となって建っている。
53人がハイライト
「人生は見たり、聞いたり、試したりの三つの知恵でまとまっているが、多くの人は見たり聞いたりばかりで一番重要な『試したり』をほとんどしない。ありふれたことだが失敗と成功は裏腹になっている。みんな失敗を恐れるから成功のチャンスも少ない。やってみもせんで」
思えば栗林も「試す人」だった。 -
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「失敗の本質」の続編となる本書は、前作よりも読みやすい内容で、色々と頷きながら読み終えました。
イスラエルは、組織の戦略的失敗から学習を繰り返したそうです。
過去の成功事例にとらわれたり、他所の成功事例を真似るだけでは能がないと思っています。
やはり失敗から学ばないと。
恐怖心の存在を認めた上で、それをコントロールして任務を遂行するアメリカ兵。一方、恐怖心自体の存在を認めず、否認や抑圧によって受動的に対処した日本兵。
このあたりは山本七平氏の「日本はなぜ敗れるのか-敗因21ヵ条」とも共通する分析かと思います。
実践から学んで行動を修正することが出来なかった日本軍の姿も浮き彫りになっており、組織論として学ぶべき点が多い一冊でした。 -
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「失敗の本質」の本を読んだことがあり、その後に久しぶりに野中先生の本が読みたいと思い読んでみた。非常に興味深い内容で、今まで通り日本軍の戦争を研究材料としつつ、戦場でのリーダーシップについて大量の論文とデータを元に分析されて納得感のある内容であった。
個人的には第8章の辻政信の内容に思うところがあった。幼い頃から文武両道で部下の信頼も厚く飲み会や風俗などが大嫌いで教科書に載るお手本のような軍人であるのにも関わらず、組織として何故上手く立ち回ることができなかったのか?日本人が目指すべき人物に限りなく近いはずなのに何故同世代のエリートには嫌われていたのか?そもそも日本の学問における優秀な人材は何なのかを考えさせられる内容であった。
最後の菊澤先生の章もおすすめ。非合理的な意思決定プロセスに使われる【空気】という目に見えないものについて、取引コスト理論を用いて説明しているので、現代のビジネスでも応用できる内容であると思う。総じて自身の知的好奇心が満たされる素晴らしい本であった。 -
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時代の流れのなかにいるときは見えてこないことがある。
見えていても、カタチを伴ったものとして全体を捉えることができないので、時代の片隅にいた自分が見ていたものだけで、無意識にその時代を記憶に留めている。
自己の記憶はそういったもので、その記憶が己が生きる世のなかを造っていく。だから、人それぞれに見えている世のなかは違う。
でも、時代というのは、今を通り越すことによってその時間経過とともにカタチを現してくる。そしてそのなかで時を過ごした自分の記憶が、そのカタチのなかに位置付けられると、自分の記憶もまた朧気にカタチを伴ってくるし、違った存在になる。
もうすぐ8月が来る。また今年も日本の大きく道を誤った原点を見つめてみよう。 -
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野中教授が主張されている「現場感覚」「大局観」「判断力」を有した「フロネティック・リーダー」を裏付けるための、戦時の事実・将校の行動を通じて各専門家が論じている。
自分は、「石原莞爾」「辻政信」「山口多聞」の考察が大変深く印象に残った。
天才肌故か、組織に目配せする能力が欠落していた石原。
軍の基本ポリシーに忠実すぎるが故に数々の失策に対し誰も苦言を呈すことができず、結果的に独走を許してしまった辻。
組織や上官への抜群の目配せと溢れる程の愛国心故に自らの不利をあえて飲み込み率先して殉職した山口。
ヒューマニズムに偏った感想になってしまい、申し訳ありませんが、私にとっては非常に参考になりました。 -
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リーダーシップの本質は、フロネシス(賢慮)ないし実践知と定義している。
"フロネシスの中身を一言で言えば、個別具体の物事や背後にある複雑な関係性を見極めながら、社会の共通善の実現のために、適切な判断を素早く下しつつ、自らも的確な行動を取れる「実践知」のことを言う。そうした知を備えたリーダーがフロネスティック・リーダー"
フロネスティック・リーダーの能力
①善い目的を作る能力
②場をタイムリーにつくる能力
③ありのまま現実を直観する能力
④直観の本質を概念化する能力
⑤概念を実現する政治力
⑥実践知を組織化する能力
典型はチャーチル、目的が共有できなければミッドウェイのように陥る
本書は、それを備えるリーダーについての書。
現場とコンセプトをたえず行き来するフィードバック・ループを機能させるには、現場を身体的に理解しているリーダーの存在は不可欠。
それにはサイロの破壊と、タスクフォースの創設を通じた機動的な知の総動員がカギ。
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ネタバレ失敗から学ぶことは多々あり、それが戦時のことであれば、生死をかけた戦略や行動であるために、更に学ぶべきことは多いと考える。ただし、完ぺきな人間などいるはずもなく、限られた情報の中で、限定合理的に行動した結果であることを念頭に置く必要がある。
・ウェーバーの価値自由原理である、ヒト/モノ/カネを効率的に利用できているかという効率性の問題と、価値の問題は分けて考えるべきというのはなるほど。そして、効率的なものが常に正当であるということにはならないというのも納得である。
・戦時において、成功した体験は、なかなか否定できない。実績が一度伴うと、それに寄りかかってしまう。必要な時には自己否定ができることが良いリーダーであり、その場合でもスピード感を持って判断できるようになるべきである。この判断のためには、大局観を持ち、真実に目を向け、新しいことを生み出そうとする思考が重要である。
・部下たちの面倒をこまめに見ることが、指揮官への信頼と親近感を増幅させる。
・これらを成すのは、体力と健康である。