田原牧のレビュー一覧
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ネタバレ 購入済み
東京新聞の論説委員の講演より
当時はまだ特報部のデスクでしたが、今は論説・編集委員となっていて中東問題にもお詳しい田原牧記者が2011年にクレヨンハウス社で講演した内容をもとに冊子化した本です。
当時は廃案になっていた共謀罪も成立してしまい、原子力災害に関しては緊急事態宣言は出たまま今に至っています。何も終わっていないし、既に原子力回帰の動きが出ているのにはウンザリします。結局、ムラ、内部の村民は反省などしませんので。
讀賣新聞、新入社員の研修でいい新聞だよと褒めている阿呆がいて、幾らなんでも馬鹿すぎると思いましたが、そういう方がフツーの会社人に近いのが現実です。
本文で田原氏も触れていますが、詰まるところ、自分たちの生き -
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[春よ、いずこへ]世界中の耳目と賞賛を集めながらも、のちの政治的混乱などから今ではその季節は終わりを告げたと捉えられることが多い「アラブの春」。革命は徒労だったのか、という問いに対し、中東各地を取材し、生の声を聞いた記者が綴ったルポルタージュです。著者は、カイロ支局での勤務をはじめとして、長年にわたり中東地域に関わり続けてきた田原牧。第12回開高健ノンフィクション賞受賞作です。
自身も活動家であったことが影響してか、カイロを 始めとする都市を訪ね歩いた末に著者が導きだす「革命とは?」との問いへの回答には興味深い示唆がありました。また、特にアラブの春以降の中東情勢が簡潔にまとめられていますの -
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田原牧(1962年~)氏は、北海道生まれ、麻布高校在籍時に都内の定時制高校の統廃合反対運動に参加し、明大政経学部に進学したものの、新左翼セクトとの揉め事で大学を追われた。その後、小規模広告代理店勤務、フリーのジャーナリストを経て、中日新聞社に入社し、湾岸戦争、ルワンダ内戦等を取材。1995~96年にカイロ・アメリカン大学アラビア語専科留学、1997~2000年に中日新聞カイロ特派員、また、同志社大学一神教学際研究センター客員研究員、季刊誌「アラブ」編集委員等を務め、東京新聞(中日新聞東京支社)特別報道記者。紙面では戸籍名の田原拓治名義でも執筆している。2014年に出版された本書で、開高健ノンフ
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2002年にイランに行って以来、つとめてイスラムとは何かについて理解しようとしているけれど、未だに確たるものは無い。2014年の開高健賞受賞作品であるこのノンフィクションは、その意味でも出色である。アラブの春とは何だったのか。エジプト、そしてシリアの今の姿を、市井の人を通じて分析するこの一冊はここ数年ではピカイチのイスラムノンフィクション。そして、傍目にはとても成功したとは思えないエジプトの抗議運動から、日本の反原発(そして今なら反安保)デモを浮かび上がらせ、日本人に足りないものを間接的に指摘しているようにも思え、その視点に共感する。
筆者は1960年代産まれだか活動家としての前歴を持ち(つま -
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東日本大震災で遠い過去の出来事のように思ってしまうが、先頃もリビアでカダフィが倒れ、シリアでも混乱が起きているこの情況はいったいなんだったんだろうということを知りたくて読んだ。若干型に嵌めたがりな見方が気になる部分もあるが、革命の渦中のカイロに飛び、実際に取材した人の生の声の強さがある。今後のエジプトの情勢に注目するとともに、パレスチナやイラク、さらにはサウジがどうなって行くのかを見守って行きたい。さらに、イスラム教やパレスチナ問題についての最新の情報についても読みたいと思う。さらには、日本も頑張ろう、今目の前でおきている不正義を看過してはならないのだ。
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借りたもの。
社会に翻弄され、つまはじきにされた人間たちの慟哭を集めたもの。
「自己責任」という言葉でひとくくりにされ、偏見から社会の居場所を失った人々の集合体……それが社会の底辺(貧困、社会問題、社会の基盤、その全て)を作っている。
グローバリズムは本来、「多様性を認める」という意味だったが、細分化されあまりに漠然とした世界は尺度を求め、結局そこから外れた者は抹殺される。
それ故に、漠然と何かが「違う尺度」をあてがわれても、その毒まんじゅうを喰わざるを得ない。
それは単発でふっと沸いたものではなく、連綿と続いてきたものであった。
現代の社会問題が、そうしたものでできていることを――シリア -
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あまりにもアラブの国々、イスラム教についてわからないので、なんとかもう少し理解を深めたいと思っている。
少し前に内田先生と今話題の?中田考さんの対談本「一神教と国家」を読んだ。
これからも、関心を持っていきたい。
わかりやすく書かれていると思うが、わりと読みづらかった。著者の経歴も気になった。東京新聞も最近気になっていたところだし。
スンナ派とシーア派の区別だけでも、高校時代からどっちがどっちか混乱しているのに、スンナ派の中も分かれていて・・・ちょっと覚え書きとして書いておきたい。
スンナ派は四大法学派に代表される伝統主義とサラフィーヤに分かれている。
伝統主義というのは著名なイスラーム -
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ネタバレ独裁政権を倒した「革命」後、反革命が蘇って報道に走る。ただ、それだけならよくある平板な悲劇だ。だが、エジプトでのポスト「アラブの春」の展開の特殊性は、反革命の復活劇に民衆が進んで手を貸した点にある。民衆の主観的な意図がどうであれ、それが客観的な流れだ。p60
気がつけば、「春」ははるか後景に退き、人びとの口からは代わりに宗教、そして宗派抗争を案じる言葉がつぶやかれていた。イスラーム主義というこの地域の大命題がエジプトに限らず、「アラブの春」がめぐった先々の国で立ちはだかっていた。p152
そもそも「アラブの春」という一見、美しい命名自体が不吉だったのかもしれない。そこには1956年のハンガ -
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イスラーム国というキーワードを読み解くためには、中東の現状を把握しなければならないと思い立ち、本書を手にした。アメリカの中東戦略の徒花とでもいうべきアルカイダがテロを起こし、イスラーム国樹立に至ったのが2014年。9・11のアルカイダのテロに大義などないが、同様に報復したアメリカのイラク戦争にも大義はない。
イスラームは神という絶対的な他への完全なる服従によって、我執からの解放、すなわち絶対的な自由を獲得しようとする思想、だという。そこで異物の排除が生まれる。それはタクフィール(背教宣告)というイスラム教で定められた猛毒(虐殺)さえも容認される。民衆に牙を向ける運動の過激化はイスラムに限ったこ