神山典士のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
徹夜して本を一気に読むなんて久しぶりだ。この本はポルノです。日本的なものの恥部を一堂に会させたごった煮のポルノ本と言えると思う。主役は、佐村河内守、新垣隆、メディア、メディアを通じて美しい話に酔った一般人。。
昔、吉里吉里人を読んだ時に、日本のタブーに対する切込み、風刺がすごいなと思ったが、この本はそれが実話として、何も隠すことなく剥き出しで綴られている。なんというか偽善がメルトダウンを起こしている。
物語は佐村河内の虚構が織り成す不思議な人の縁を中心に生々しく続く。しかも、彼自身の嘘(耳が聞こえない)により、ほぼすべてのやり取りがメールで残っているという奇跡的な記録性の高さ。どれを以ってしてもこれを超える話はそう出てこないだろう。劇性があり過ぎる。
作者も書いているように、これは有名になる為には何でもよいと考える非常識な男と、才能溢れる音楽バカとの奇跡のコラボレーションの話であるとも解釈できる。そうすると、二人は日本の音楽業界、あるいは美しい話に酔いたいメディアや一般人に何を残し、これから何を作っていくのだろう? まだまだ続きがあるような気がしてならないが、とりあえずは、ここまでのところでも十分なので映画化したほうがよいと思う。そんな衝撃の本だった。 -
Posted by ブクログ
コロナ禍以降に取材した、いくつかの地方のパラダイムシフト(価値観の転換)の取り組みをルポし、ふるさと再生の光と影を紹介する本。
著者は、全国各地で「ふるさと作文教室」を主宰し、自らも移住二拠点生活を経験した大宅壮一ノンフィクション賞受賞作家である。
石丸伸二氏が市長を務め、政治による分断を招いた広島県安芸高田市の事例を地方創生の「影」の部分として紹介する第一部は起伏に富み、激しさもあり、読み物として面白かった。
第二部で紹介されている「各地の自治体の奮闘」は、著者がその熱量を応援する取り組みが紹介されている。
北海道大雪山麓・東川町は、美しい大自然を売りものに、大規模な施設は隣の旭川市にあるものを活用して「美しいコバンザメの町」を表象し、地域おこし協力隊の積極採用や「写真甲子園」という催しで関係人口や移住者の増加を目指す。
森林率が74%を占める宮崎県小林市では、民間とのチームワークでシティプロモーション動画配信、認知度を高め、ふるさと納税額が飛躍的に伸びた。この活動と同時に、高校生対象に郷土愛の向上を目指して、「ふるさとキャリア教育」も推進されている。
この他、著者が関わる「ふるさと作文教室」の事例として、福岡県直方市、埼玉県越生町、宮城県女川町での取り組みを紹介、子どもたちの「書く力」の養成と「ふるさと愛」の醸成をアピールしている。
地域社会やサービスは、このまま,手をこまねいていると、「溶けて」消失してしまう。
息の長い取り組みではあるが、子どもの頃から住んでいる町への「ふるさと愛」を育んでいくという考え方には共感を覚えた。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ<目次>
第1部 石丸伸二が去った後で~広島県安芸高田市ル
ポ2025
第1章 石丸市政で何が起こったか
第2章 反対派議員と、市長により解散に追い込ま
れた観光協会職員の視点
第3章 石丸市政を通して賛成派が貫いた熊高昌三
議員の視点
第4章 石丸市政を批判してきた「市政刷新ネット
ワーク」副代表田丸孝二の視点
第2部 各地の自治体の奮闘
第5章 「美しいコバンザメ」をつくりだす積極財政
~北海道上川郡東川町
第6章 ふるさとキャリア教育の深く長い取り組み
~宮崎県小林市
第7章 ふるさと愛を醸成する「書く力」~福岡県
直方市・埼玉県越生町・宮城県女川町
あとがき
<内容>
もはや「地方創生」と言っても、高度成長期やバブル期のような成長は見込めない。身の丈に合った周りの幸せを追うべきだと思う。第1部はかわいそうな町と言うことで読ませてもらった。第2部は、「コバンザメ」を主張する東川町。方言をキーワードにした小林市。そして著者の携わる「書く力」から子どもたちに気づきをさせ、長い目で「ふるさと愛」を育もうとする教育だ。東川町は即効性のある、それ以外は遅効性のクスリだと思う。ただ「ふるさと創生」はカネではない。そこの気づきをさせてくれた本であった。 -
Posted by ブクログ
神山氏と先日(2025/1下旬)にお亡くなりになった森永氏との対談本です。本の帯にあるように「森永卓郎氏の最期のメッセージ」となりました。昨年から現在に至るまで10冊以上の本を書かれていて、重複されている部分はありますが、それは彼が強調したかったことだと思い読みました。
この事実は、他の著者からは今後書かれることはなく風化していくとは思いますが、私の中では記憶に留めるべくこのようは形で残しておきたいと思いました。
以下は気になったポイントです。
・資本主義は15−17世紀にかけて欧州列強が世界各地の富を搾取した「大航海時代」にできた社会システムとする見方がある、資本家=国王や貴族が資本を蓄えて、労働者(一般市民)を雇用し、大船団を組織して新大陸に乗り出して行った。リスクは大きいが、見事到着して現地や現地人から様々なものを略奪して帰ってくれば巨万の富を手にすることができる。その一部と労働者に還元しつつ、資本家はさらに大きなビジネスを手がける。この「富の収奪と拡大再生産のシステム」を19世紀半ばにフランスの社会主義者ルイ・プランは「資本主義」と名付けた(p25)
・資本主義が行き詰まる4要素、1)地球環境が破壊、2)経済格差が広がりすぎる、3)少子化が止まらなくなる、4)ブルシット・ジョブが蔓延する(p28)
・後期高齢者は免許をとりあげたらトカイナカに住めなくなって地域の中核市(20-50万人)に引っ越さなければいけなくなる、それは間違いなく東京一極集中になる(p55)
・公共交通が必要な理由、1)運転できない高校生や高齢者にとって公共交通は生活の支え、2)温暖効果ガス削減、自家用車から公共交通に需要をシフトする必要がある(p59)
・1950年に特殊法人「住宅金融公庫」を設立し、一般国民(労働者)が住宅を建設するための「公庫融資」を行なった、25年長の長期間固定融資で民間の金融機関よりも低金利であった、2002年に小泉行政改革で実質廃止になるまで、公庫融資は半世紀にわたって庶民の「マイホーム」取得の切り札だった(p73)
・戦後GHQの要請を受けてアメリカからやってきたシャウプ使節団からは「源泉徴収」を廃止しろ、と言われる(アメリカではサラリーマンも主婦も確定申告して納税する)が、当時の大蔵省の役人は、第二次世界大戦を支えた「戦時国債」に代わる「源泉徴収」制度をがんとして手放さなかった(p76)住宅ローンと源泉徴収が戦後の日本の巨大集金システムになった(p76)
・コロナ禍のもとにあった4年間の非本経済をじっくり観察して、「毎年赤字国債を60-80兆円も出し続けても日本経済はびくともしない、超インフレは起きないし財政破綻もしない」と言い続けている(p93)
・月に1000万円の売り上げがあるコンビニでも、地域に残る貨幣は200万円に満たない、2割程度である。それに対して地元産の商品を仕入れ、地元産の電力を使い、地元の人を雇う個人商店は、8割残る。月の売り上げが330万円でも、地域には264万円を残すことができる(p123)
・自分が好きでないことに関わっても、アートは生まれない、重要なのは「好きと嫌いをはっきりと分ける」どんなに頑張っても本心から好きでないものは長続きしない(p144)現在の都市生活者は「好きと嫌いのスイッチを「オフ」にしている」と意言った人がいる。嫌いな満員電車に乗る、好きな温泉に行けないで仕事をしている(p145)好きなことをしていれば「免疫力」が上がる(p150)
・森永氏の設立した「B宝館」は、グローバル資本主義とは訣別して、マイクロ経済に徹している。どんなビジネスも、人件費と家賃がかからなければ赤字にならない(p157)
・毎日を「ワクワクドキドキ」しなければならない、そのためには、1)どういうライフスタイルをとったらいいのか、2)どんな人生設計をしたいのか、3)どんな人と交わったらいいのか、4)どんな所に住めばいいか、5)どんな仕事に就けばいいか、6)どんなものを食べればいいのか、7)どんな服を着ればいいのか、8)何を好きといって何を嫌いというのか、9)自分の幸せな何か、10)どんなふうに生きていれば幸せか(p161)
2025年5月14日読破
2025年5月15日作成 -
Posted by ブクログ
全国に店舗を持つイタリアンのチェーン店「カプリチョーザ」創業者の一代記。創業シェフの本多征昭氏の生い立ち、北海道の出身と知ってまず驚き。
単身イタリアに渡って料理を学ぶ経緯が、1960年代ならではの破天荒さ。今でこそ、イタリアで修行してきました!なんてシェフはたくさんいるけど、その先駆けだったんですね。帰国して1970年、大阪万博のイタリア館でシェフを務め、1978年に渋谷でカプリチョーザを創業。わずか6席の店が味と手頃さで注目され、芸能人やメディアの贔屓になり、イタメシブームの一角として波を興し、どんどん名を上げていく。このへんの展開は痛快・胸熱!
シェフの神業的な技術やセンスあってのレシピをどのように明文化しチェーン用に起こしていくかというストーリーも興味深いし、奥様とのお話もイタリアンに相応しく、情熱的でロマンティック。
ただ、本多シェフは病に倒れ、1988年に40代の若さで亡くなってしまう。北海道のシェフといえばフレンチの三國清三氏が有名だけど、もし長生きされていたらこの方も、偉大な道産子シェフと呼ばれていたのかも。
時間調整に立ち寄った図書情報館で、ふと目についてイッキ読み。サイゼリヤの創業記とかもあるのかな?読み比べてみたくなりました。
でもその前に、トマトのパスタが食べたーい! -
Posted by ブクログ
北斎の生涯や画業に関する本は数あれど、この本は北斎が如何にパリで評価されるようになり国内でも認められるようになったのかがテーマ。
明治開国間もない頃にパリで画商をした林忠三。彼によって印象派の画家達に浮世絵が広がった。浮世絵を海外に流出させた売国奴的な評価されていた忠三が、本作では真逆の評価に。
晩年の肉筆画のパトロンとなった信州小布施の豪商高井鴻山。彼が江戸から北斎を呼びよせ庇護した事で、かの地に沢山の北斎の作品が残された。そして近代になり鴻山の子孫が、今の小布施の街づくりに携わってきた経緯が克明に書かれている。
美術書と言うよりも経済的なノンフィクション。