神山典士のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本書は「ペテン師」佐村河内と「天才」新垣の出会いから生まれた「佐村河内事件の全貌」のドキュメンタリーである。佐村河内事件の暴露には著者の神山も噛んでいるので当事者によるドキュメンタリーの側面もある。何が起こったか、マスコミやネットで報じられなかった事実も掘り起こされている。
佐村河内の来歴はだいたいネットで曝されていた通りだが、売り込みの戦略と粘り強さ、図々しさでは一流ではないか。ただ、肥大した自我を持ちながら彼には売り込むものが何もなかった。他方、新垣の神童ぶりも凄まじい。だが、彼には自分の芸術を押し出す図々しさ、押しの強い自我がなかった。2人が出会ったのは偶然だったのか、運命だったのか。
また、この事件では障害者も重要なキーワードである。「障害を売り物にしたくない」と著書で述べながら、実は自分の虚偽の「障害」を使って売り込みをしていた佐村河内が、しきりと障害児に接触を繰り返していたことが書かれている。そしてそのひとり、先天性の上肢欠損ながらヴァイオリンを習う少女「やっくん」を売り物にしようとしてやっくんから「大人は嘘つきだ」と拒絶を受けたことが契機となって、ゴーストライティングの事実が暴露されることになったという経過。暴露はやっくんを守るためでもあったのだ。フィギュアスケートの高橋大輔選手が〈佐村河内作品〉の《ソナチネ》を使うことで迷惑をかけてはいけないというのは実は表向きの理由だった。障害を弄んではいけないという社会の良識を自分の嘘の隠れ蓑に利用した男が、他人の障害を弄んでしっぺ返しを受けたのである。
著者の神山も佐村河内のプロデューサーとしての才能を評価し、再起を促す場面もあるのだが、「謝罪会見」で彼が嘘をついたことを謝罪するのではなく、嘘がばれたことを利害関係者に謝罪しているだけであることにたいそう失望する。それゆえの「ペテン師」呼ばわりなのである。また、新垣がこの関係を終わらせようと説得にかかりはじめた頃に、ある音大生を第二の新垣にすべく画策していたことも暴露されている。佐村河内守氏には出直してよい道を歩んで欲しいと思うが、本書を読むと無理だろうなと思わざるをえない。
佐村河内が大ブレークする要因となったNHKスペシャルのディレクター古賀淳也の番組製作の酷さ、あるいはいかに佐村河内にいいように手玉にとられたかも述べられており、筆者も含めてマスコミすべてが「共犯」をさせられていたという指摘もある。
著者は「佐村河内なるものはいる,私の中にも、あなたの中にも,誰の中にも」といって本書をまとめる。つまり「売れるが勝ち」という発想。しかし新垣なるものも私たちの中にいる。お金ではなく、ただよいものをよいと思う心。
どのような経緯であれ生み出された音楽に罪はないこと、新垣隆氏にはこれからもよい作品をたくさん書いて欲しいこと、この二点はとりわけ著者に共感すると表明しておきたい。 -
Posted by ブクログ
(15-50) 抜群のプロデュース能力があり、ずうずうしく押して物事を成し遂げてしまう佐村河内。才能はあるのにいつも一歩引いてしまい、自分から出ることが無い新垣。佐村河内は自分が有名になりひとかどの人物として扱われることに執着。新垣は頼まれたことを断れず、人を喜ばせることで幸せを感じるという性格。この二人が出会ったのは悪魔の配剤か?ここまで相性が良い二人がコンビを組んでしまったのが、このペテンがこんなにも長続きしてしまった理由だ。それにしても一番情けないなと感じたのはNHKだ。ドキュメント番組を作るのなら対象者と対等でなければならない。天下のNHKが対象者の言うままになって、番組を作らせて頂いている状況だったとは・・・。