海老原嗣生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
クンデラの『存在の耐えられない軽さ』が手元に見当たらなかったので、むしゃくしゃして代わりに読んだ。当然ながら代わりにはならなかった。
前半は学歴の話。大学の入学者が激増しているため学生のレベルが下がっているという話。後半は就職の話で、大企業じゃなくて中小企業に目を向けろみたいなことが書かれている。
全体的に「なんでこんな簡単なこともわからないんだよ」という侮蔑的なメッセージが全体に漂っているが(別にそれ自体は問題ない)、それでいて後半には「ん?なんか言っていること矛盾してないか」という部分も。具体的に言うと、中小企業に目を向けろと言いつつ、とりあえずどこでもいいから正社員になって、好況期にもっと大きな会社に転職してキャリアップだとも書いている。
でもまあ、「ふむふむ」という内容ではあった。60分もあれば読める。 -
Posted by ブクログ
私はバブル世代だと認識していますが、最近の若者は就職を見つけるにしても大変だなと思っていますし、マスコミもそのような論調で報道していると思っています。そのような中で、データで裏付けられた「雇用不安」の正体を示して、「必ずしも若者は可哀相ではない」と主張している本には興味をもちました。
新規採用者数はこの20年間で変化していないこと、就職氷河期は大学数が増えたこと(p115)というのは目からウロコでした。確かに私の若かった頃と比べてみると、携帯電話があり、インターネットがあるので恵まれている面も多くあると思いますし、私の時代にも不遇な思いをしている人達はいたと思います。
なんとなく若者は可哀想という雰囲気を、このような本がデータでその根拠を示してくれるのは、私の仕事を進める上でも役に立つと思いました。
私も何となく感じていたのですが、20年以上前から年功序列や終身雇用制は崩壊したと言われていますが、転職する人は私も含めて少しずつ増えているようですが、昔ながらの制度は、この本に書いてある通り未だに残っていると思います。
また、言い難いことである、いまだに高学歴で大企業に勤めることは安定であるという、世の中で言われていることと逆行する事実をデータを持って証明している(p71)点は認識を改にしました。また正社員の定義は昔と今とでは異なる(p101)という点も同感でした。
以下は気になったポイントです。
・日本型雇用の崩壊の間違いとして、1)昔からそれほど終身雇用でなく、現在でも昔程度には終身雇用、2)大学新卒者の正社員採用も減っていない、である(p28)
・自己信託型の給料後払いと、海外におけるピラミッドは、大学卒ホワイトカラーの雇用においてのみ適用、高卒ブルーカラーは海外移転により崩壊した(p31)
・賃金データを調査する場合、所得別の実人数を調べるならば「民間給与の実態調査」、世帯別収入なら「国民生活基礎調査」、雇用形態別の構成員数ならば「労働力調査」がある、門倉氏は世帯構成や人数把握が難しい「賃金構造基本統計調査」を使用(p34)
・若年離職率の高さは下位高卒層に起因する、上位校×大企業という、いわゆる「エリート」的組み合わせでは、今でも3年転職率は1割程度、5年後には更に下がる(p71)
・かつての正社員には、事務職での一般採用、今ならば派遣に該当するような事務請負、構内製造協力会社(非系列下請)も含まれていた(p101)
・1985年から2008年の、4年制大学・新規卒業者の正社員就職数は減っていないどころか、バブル期(87~91年)の平均31万人を下回っていない、製造・事務・販売スタッフは非正規にシフトしている可能性は十分ある(p105)
・就職氷河期になったのは、企業が新規採用を減らしたのではなく、大学をつくりすぎたことにある(p115)
・正社員を非正規に変えたという表現は、詳しく言うと、高卒もしくは女子短大卒の受け皿を非正規に変えた、ということ(p120)
・卒業後3年間での転職率は、中卒(60%以上)>高卒(40%以上)>大卒(30%程度)であり、1987年から2005年まであまり変わらない(p125)
・2008年の生産年齢人口は、1984年とほぼ同一の8178万人、正社員数は、1984年が3333万人、2008年は3441万人で増加している(p138)
・現在の非正規社員総数は約1760万人、派遣数で考えると、一般派遣(常用:84+登録:281)+特定派遣(33)=398万人、常用就労者数だと(84+80+33=198万人)で非正規全体の1割程度となる(p144)
・派遣解禁により72万人も非正規が増えたことに対して、製造業の一般派遣就労者:48万人のうち30万人程度は、解禁以前は「構内請負企業で正社員」扱いであった、これを除くと解禁で増えたのは20万人程度(p144)
・正社員と派遣社員の人件費を比較すると、34職種中31職種において平均で21%高い、それでも企業が派遣を使うのは「解雇が容易だから」(p155)
・若者を取り巻く本質的な地殻変動とは、1)85~95年にかけておきた為替レートの大変化、2)85年から続く大学進学率上昇、3)80年以降、低下した出生率、である(p205)
2010/09/05作成 -
Posted by ブクログ
珍しく新書などを手に取ってみたり。一~二章は「若者はかわいそう」論を流行らせた本3冊やニュースなどへの反駁。三章は対談。四章が解決策の主張。最終章は対談。
一章はベストセラー本3冊への論駁なので、対象となる本を読んでからの方が理解できそう。という訳で1.門倉貴史「ワーキングプア」、2.玄田有史「仕事のなかの曖昧な不安」、3.城繁幸「若者はなぜ3年で辞めるのか?」を読んでみる。就活も数年前に過ぎてるし、雇用問題にあまり興味がないので3冊とも読み通せるか不安だけど。とりあえず手に入れてきたい。
一~二章は「こうなっているからデータを鵜呑みにしちゃ駄目ですよ!」って感じの解説なんだけど、筆者にも騙されている気がする。四章が勢いがあって面白かった。期間限定の外国人労働者の受け入れ等は夢物語だと思うが。
本の内容より、本に対する色んな人の感想を見ている方が面白いかも。 -
Posted by ブクログ
この数年間、景気が悪くなってきたために就職活動が難しくなってきて、それを行っている若者は大変だなと思っています。そう思っていたところへ、この本の帯に書かれている「正社員は増加している、若者=犠牲者は間違い!、」という内容は衝撃的でした。
この本では、それらの内容を客観的なデータ(だれでもホームページからダウンロード可能なもの)で説明しているところに説得力がありました。物事を判断するには、正反両者の意見を聞くことが大切であると思いました。
以下は気になったポイントです。
・1960年代に日本の経営は終身雇用であるとアベグレンが彼の著作の中で記したが、彼が調査したのは典型的な大資本の大工場のみ、中小規模の工場では全くの転職社会(p10)
・1970年代前半に、20代前半の年間転職率は20%のであった、最近では大卒3年で3割が転職とあまり変わらない、あり得る姿は、若年時に数回の転職をして30代までに決定して、その後に定年まで勤める(p11)
・80年代よりも2000年以降のほうが勤続年数は長い、長期雇用慣行は強化こそすれ、崩壊していない(p13)
・男性正社員の驚異的定着の裏に、男性非正規雇用者と、女性が雇用の緩衝材となった(p17)
・生涯賃金を考えると、転職は2回程度にしておくのが正しい、40歳の場合、転職ゼロの平均年収:731に対して、697(1回)、618(2回)である(p24)
・高校卒3年離職率はこの15年間変化ないが、大卒は増加傾向にある、この理由は、90年以降に大学進学率がアップして、卒業者が30%以上の増加したから(p30)
・給与差が広がっているのは事実であるが、大企業の40代以上で、過去比較で平均6%(上に3%下に3%)程度(p37)
・業界全体は、製造派遣解禁とともに、請負(請負会社の直接雇用)から派遣へと事業転換してきたというのが実情で、ほぼ同じ待遇で働いている(p48)
・生産年齢人口は1996年にピークとなり、もう12年も減少(600万人、8%)している、正社員数は1998年に3800万人でピークとなり、現在3400万人強(380万人減少)両者はほぼリンクしている(p55)
・生産年齢人口あたりの正社員比率は41%程度をこの20年以上キープしている、正社員も非正社員(正社員は1984年から20年間で3441万人:108万人増加) も増えている(p57)
・少子高齢化は、大学で言えば、非ブランド校が打撃を受け、職業でいえば、非ホワイトカラー職が打撃をうける(p75)
・ジニ係数は、全国消費実態調査は二人以上世帯のみで算出しているため、ジニ係数の拡大傾向は弱くなっている、1979年から2003年までで、0.26から0.30程度(p85)
・ジニ係数は、長期的に見ると、小泉改革以前から格差が広がっていることを示すが、それはあまり語られない(p92)
・製造派遣などの職務は3年以上の契約更新が不可能、継続する場合には、直接雇用義務が発生、この運用開始が2006年3月から(p94)
・近年の若年正社員の減少は、1)総人口の減少、2)大学・大学院への進学率アップによる就学中の人の増加が、要因となっている(p106)
・20年前だと高卒就職者:51万人、大卒就職者:30万人だったのが、現在は各々、17万人、40万人になっている、その結果、かつて大学をでたら就けると思われていた仕事は枯渇状態(p107)
・1984年と現在を比較すると、正社員の数は減少どころか108万人増えている一方で、「自営+家族従業員」は653万人減少している、小規模法人を入れると1000万人近い減少、これより、かつてなら零細商工の従業員が非正規になったと考えられる(p119)
・長期トレンドで失業率が上がり続けるのは、経済発展による社会の成熟、経済の成熟は、1)成長率の低下、2)ミスマッチにより失業率の上昇を引き起こす(p124)
・日本は40年前までは中進国だった、1967年にGNPで資本主義2位になったが、当時の日本は、イギリス・フランス・西ドイツ・イタリアの2倍強の人口であった、人件費が安く進学率が高いので、安価で質のよい労働力を活用できる日本企業は成長を続けることができた(p196)
・1980年半ばまで、日本は欧米比で、人件費が今の韓国並み、だから世界に出る必要はなく、日本で作れば世界一安い製品が作れた(p196)
・60年代の猛烈な少年犯罪多発社会を日本はどのように変えてきたか、1)経済成長による所得アップ、2)高学歴化(高校進学率アップ)、3)進学競争による日本型生徒管理システムの完成、がある(p202)
2010/11/27作成 -
Posted by ブクログ
ネタバレ世代間不平等、新卒一括採用、非正規雇用、ワーキングプアなどにまつわる「若者はかわいそう」という論調をさまざまなデータによって論駁した本。
確かに実情を顧みず、安易なムードで若者が語られることは多いと思います。マスコミは「新卒学生の就職率が史上最低だ!」などと他人事のように語るが、「で?それがどうした?」としか言いようがない。情報の精度もあてにならないものばかり。不安と悲惨さを煽るだけ煽って、あとは野となれ山となれ状態。
ですが、やはりこの本の総論には賛成しかねる。「本当に悲惨なのは若者よりも中高年」、「新卒で失敗しても第二新卒があるから大丈夫!」なんて論調で語られても… マスコミの語り口よりはマシなものの、あまり変わり映えはしない。
読んでおいて損はない。 -
Posted by ブクログ
世間の「若者はかわいそう」を打ち崩す論が展開されている。
若者を巡る状況に昔と今でそう大差は無い。
確かに日本の労働環境は昔とは変わっている。
しかし、メディアが大きな声を出していることで、本当に見るべき構造の変化を見逃していると指摘する。
データについては、世間に使われているものよりも信頼出来るものを出しているとしている。
が、自分で検証していないためわからない。
ただ、データの嘘の様々な方法については本書も疑いの対象としながらも学ばなければいけないだろう。
また、本書中で述べられている「期限付き移民政策」は現実的で非常に良いと感じる。
詳しくはぜひ読んでほしい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ[ 内容 ]
就職難・派遣叩き・ロスジェネ・貧困etc.はやりの俗説は間違いだらけ!
『エンゼルバンク』のモデルとなった雇用のカリスマが解決策を大胆に提言する。
[ 目次 ]
第1章 「若者かわいそう」ベストセラーを論駁する(論駁1『ワーキングプア』(門倉貴史著)
論駁2『仕事のなかの曖昧な不安』(玄田有史著) ほか)
第2章 流布された「怪しいデータ」を検証する(「貧困率」をめぐるOECDのミスリード;多発するトンデモ「若者かわいそう数字」 ほか)
第3章 対談・教育と雇用の現場から(vs私立4大学キャリアセンター職員―就活の最前線に立つ4人に聞く、就職氷河の本当の理由;vs鈴木寛参議院議員(文部科学副大臣)―文部科学行政のキーマンに聞く、大学問題への処方箋 ほか)
第4章 問題の本丸は何か?3つの地殻変動をどう吸収するか(80年代と現在の間にある3つの断裂;地殻変動に対応するための暴論)
最終章 錯綜した社会問題に解を!(vs湯浅誠・反貧困ネットワーク事務局長)
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☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
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読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
「若者の貧困はウソで貧困なんてない」ではなく、「若者の貧困という偏った問題意識では、より大きな貧困問題を見過ごしてしまう」という話。筆者も文中で「タイトルが誤解を生むかもしれない」と述べているが、そう思うなら副題で分かるようにすればいい。というか、主題である「ウソ」として挙げている統計のごまかし等は、本書発行時点でもよく指摘されている内容で、特に目新しい感じはなかった。
筆者の主張では正社員を幹部候補と実務職員とに分けて採用、処遇するべきというのには同感。また、公的派遣という提案はありかなと思った。最終章での、筆者の持論を湯浅さんにぶつけた対談が一番面白かったが、終わりがずいぶん尻切れトンボで残念。 -
Posted by ブクログ
豊富な資料と数字で現在の就活事情を批評している。その話は大学の経営システムから戦後日本の状況、インターンシップ制度の罠、偏差値トリックなど多岐にわたり、幅広い視野から現在の就活をとりまく状況を分析している。特に筆者の「就職より就社」理論はそれまでの「やりたい仕事に就く」といった常識を否定する独自の主張であったが、大変納得のいく論調でとてもわかりやすく、なるほどなぁそうかもしれないと納得してしまった。この本を読んだことで現在の就活はおかしい、異議ありっという立場に変化したわけではないが(笑)、とても刺激になった。いま就いている仕事が人生のすべてではない、そう思える本であった。