あらすじ
昨今誰もが口にする「日本型雇用の崩壊」。それは一体何を指すのか? 終身雇用は本当に崩壊したのか。若者は急に「3年で」辞めるようになったのか。悲惨な派遣社員は「急に」増えたのか。データを見れば、これらの問いに対する答えは全て「否」。人気漫画『エンゼルバンク』の“カリスマ転職代理人”のモデルにもなった、人事、雇用のエキスパートが、「作られた常識」に斬りこみ、錯覚を起こすメカニズムを解明する。
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終身雇用は崩壊していない。転職は一般化していない。成果主義は一般化していない。派遣社員の増加は請負業者の変わったもの。正社員はむしろ増えている。しかしそれよりさらに派遣社員が増えた。格差は20年間広がり続けているが、それは高齢化と経済の成熟によるもの、etc.
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我が心の師匠、海老原さんの本。
こんだけ定量的裏付けを持って雇用の話をできるジャーナリストが
海老原さんを置いていま日本にいるだろうか?(いやいない。)
他のジャーナリストやコンサルタントがイメージや印象で前提としている
事実に鋭く切り込み、自分なりの暴論を展開している最高にエンターテイメントな1冊。
あえて暴論に振る海老原さんのスタンスは、日ごろの会話でもそうなので、
まさに生き方そのものなんだろうなぁと思い、とてつもなく勉強になります。
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2010年1月~テレビ朝日木曜21:00から好評放映中の
ドラマ エンゼルバンク~転職代理人~のモデルと
なった著者の一冊。
この海老原嗣生さんの
「雇用の常識-本当に見えるウソ」という本、
私は周囲の人にずいぶん、一読をすすめています。
先週、人材の社長たちとランチのときに、
またこの本を薦めたら、やり手社長が
「僕、あなたに言われてすぐ買って読んだよ!」
さすが、アイディアいっぱいの社長。
数字で突く労働問題の核心。
いろいろなことが検証されています。
・正社員は減っていない
・終身雇用は崩壊していない
・転職はちっとも一般化していない
・女性の管理職は増えない
・ワーキングプアの実態は「働く主婦」 などなど
世間で言われているワーキングプアの問題など
数字とデータで鋭く突いています。
人材業界はもちろん、経営者もぜひご一読を。
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■終身雇用の正確な言葉「若年時には数回の転職を行う事もあるが、30代までには年貢を納め、その後は定年まで1つの会社にとどまること」
■ダッチモデル:オランダに始まった、非正規雇用を中心にした、同一労働同一賃金の就労モデル
■騒ぎを利用して経営を緩やかにシフトチェンジすることが、日本企業の得意技
■04年の派遣労働者実態調査によると、製造請負事業は、直接雇用者が86万5000名、派遣社員が13万名の、計99万5000名
■少子高齢化は、大学で言えば、非ブランド校が打撃を受け、職業で言えば、非ホワイトカラー職が打撃を受ける
■労働分配率は景気と逆の動きをする。
■小泉改革など夢想だにしなかった90年代初頭から、失業率は上がり続けていた。この事実をどう説明するのか。
■好景気・不景気の波はあるが、そのピーク同士・ボトム同士を比べても、ここ20年間失業率は上がり続けている。この事実をどう説明するのか。
■ミスマッチ:「仕事はある。しかし、失業者が減らない」
■ディスマッチ:?仕事の高度化・・・職務能力の問題?嗜好の壁?単純労働のパッケージ化・・・職務が固定で給与が上がらない
■外食産業における嗜好の壁?対人折衝?殺人的に忙しい時間帯が有る?給与が安い?寮や社宅などが無い?社会的にネームバリューがない?勤怠・転職職歴の関係で登用されない。製造業は、これが全て裏返る。
■エンジニアでありながら、一般派遣として就労しているタイプは2つ?能力不足のため、企業に直接雇用されず、特定派遣にもなれない?能力はあるが、長期勤務の志向がなく、1社での従事には後ろ向き
■日本企業は「世界トップクラスの人件費」との戦いを日々繰り返している
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読むのがたいへんな本である。
常識と思われていることを、データをもとに丁寧に検証しており、その検証を追っていくことで頭をつかう。
終身雇用は崩壊していない、
転職はちっとも一般化していない、
正社員は減っていない、
派遣社員の増加は、正社員のリプレイスが主因ではない、
などと検証する定説は、検証しがいがあるものばかり。
何をもって日本型雇用が変わってきたというのか、
データをもとに語ってこなかった自分は考えさせられるものがある。
3年くらい前に購入して、なかなか読み進めることができずにいたが、あらためて読んでみると2009年頃の風潮を少し感じる。
それでも、今読んでも、発見がある検証をしている。
人口動態の変化の影響、少子化による大学全入時代の到来、女性の社会進出の増加などの影響は案外軽視されがちかもしれない。
昔の日本の雇用はよかった、今の日本の雇用はけしからんという人にこそぜひよんでいただきたい1冊。
“急速に増えた女子大生は、就職も好調。そのあおりで男子は就職数・率ともに低下。”
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巷に溢れる雇用に関する風評に対し、データを精緻に分析することで誤りを指摘し、正しい姿を見せてくれる。
いささか強引な考えを推し進める箇所もあるが、全体的にはフムフムと納得できる部分が多い。
やっぱり海老原さんの本はデータ分析のお手本になる。
自分もこんな風にデータを華麗に扱ってみたいもんだ。
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最近の学生は、3年で3分の1が退職するというが、それは最近だけの傾向なのか?実は昔からそういう傾向である。というのをあらゆる統計数字を用いて説明しています。
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他の著書やエンゼルバンクでも披露されているが、移民受入・教育安保という世界戦略は、面白い。
実行するには色々な問題が発生するのだろうが、それでも今の日本には、このようなクリエイティブな政策が求められているのだと思う。
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世間に蔓延る俗論をデータ検証によって斬る。とにかくデータに基づいて話が進むので、読み進めるには時間を要するかもしれないが、その分しっかりと納得いく論調となっている。
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小泉悪玉論をデータを用いて反証。小泉改革が始まる前から、格差も失業率も、非正規雇用者も増えていた事実などを示す。小泉さんを擁護するとく目的ではなく、感情で世論が流されている実態に待った!をかけることが狙い。
「小泉改革で、正社員が減少した」との感情論があるが、本当なのか。
正社員数の増減は、今後65歳以上の人口が急増する中にあっては人口構成も考慮しなければ数値を見誤る。(★生産年齢人口(15歳〜65歳)は、今後10年で730万人減る★)
生産年齢人口が現在と同じ8178万人だった1984年との比較では、正社員数は3333万人→3441万人(108万人増加=3.2%増加)。非正規社員は1128万人増加。つまり、正社員が減っているのではなく、正社員は増えているが、それにも増して非正規社員が増えているというのが実際のところ。(P54〜)
日本型雇用が崩壊したと騒がれるが、実は15年に一度「日本型雇用が崩壊する」との騒ぎがおき、ゆるかやなシフトチェンジが行われている。1960年代の資本・貿易自由化時、1975年のオイルショックから安定成長への移行期、90年代のバブル崩壊期。これを大騒ぎにしつつ、実質的には一部の修正を加えることで、日本型雇用の進化を実現しているとも見える(60年代は個人評価が困難であった点から能力給を導入、75年時はポスト不足の問題を職能資格制の導入で部下なし担当課長を導入、90年代は下方硬直性で給与が高まりする部分を緩やかなな成果主義で改善。この流れで言えば2005年頃の崩壊騒ぎはもらいすぎの熟年の給与を下げるために成果主義とコンピテンシーを導入したと言える)。
若者の非正規社員数の増加を見て、ワーキングプアが若者に増えているというが、実際には正規社員数も増えている。ワーキングプアの増加の実態は、非課税(年収103万円未満)、被扶養者(130万円未満)という上限により、おもに主婦(と学生)の労働が制限されながら、増えているから。
慶応大清家篤教授は「一人で4人(夫婦子ども二人)を養う社会から、二人で5人(夫婦・子ども・両親)を養う社会へ」の構造変革が浸透しはじめており、熟年年収の削減で企業体力は温存され、人口減で働き手が減る中に新たな主婦労働の提供が進むことが期待される。しかし、主婦労働の制約となっている非課税・被扶養者枠の再考が不可欠であると指摘している。
女性の管理職が増えない要因、データで見ると、新入職者数は男性とほぼ同様でも、管理職比率が伸び悩んでおり、その原因は早期退職者が多いためとなっている。ではなぜ早期退職するのか、育児が女性だけの仕事になっており、ママ社員の退職理由の86.7%が出産・育児となっている。とくに、復職時の意識差に悩み、その後退職する例が多い。
本書のポイントは、「小泉改革批判を表層でとらえず、メガトレンドで見よ(要はGNP二位に躍り出た1967年頃はダントツに人件費が安く、人口は英、仏、西独などの二倍いることで、高度成長を続けた。80年代中盤になっても、欧米比60〜70%野レベルだった。ところがプラザ合意後の5年間で為替レートが2倍に高騰、以降日本は世界一高い人件費に悩まされ続け、右肩上がりの時代に設計された福祉モデルの維持も困難になった、小泉改革以前から非正規・高失業率の問題は顕在化しはじめていた)」「ガラパゴス化している正規男性社員への過剰保障構造から、非正規と正規の行き来が可能でや育児でキャリアを中断された女性も再挑戦可能な構造へ(グレイのハイブリッドへ)」の二点。
点でなく、線・面で考える思考を促す意味でも、労働問題をとらえ直す好著である。
Posted by ブクログ
終身雇用や成果主義といった人事体系に関することから、派遣社員の問題、正社員の減少等、世の中に流布することをアンチテーゼとして数値という根拠を持って説明し自論を展開している。
この中で興味深かったのは女性が社会進出することで、20年間といったスパンでみると正社員も派遣社員も総体的に増えている。それに対して男性の労働力率は女性に押し出されるようにして低下している現実がある。そんな中問題は全体的に日本人の働き手が減少している点である。
全体的にいま世の中で問題視されていることについて、分母にあたる数値の取り方や人口動態から考えるとマスメディアなどが報道していることが果たして本当なのか疑問を感じてしまう。それを確かめるには面倒くさがらず自分で実際に調べる必要がある。そうすると現実が見えてくるかも。
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この数年間、景気が悪くなってきたために就職活動が難しくなってきて、それを行っている若者は大変だなと思っています。そう思っていたところへ、この本の帯に書かれている「正社員は増加している、若者=犠牲者は間違い!、」という内容は衝撃的でした。
この本では、それらの内容を客観的なデータ(だれでもホームページからダウンロード可能なもの)で説明しているところに説得力がありました。物事を判断するには、正反両者の意見を聞くことが大切であると思いました。
以下は気になったポイントです。
・1960年代に日本の経営は終身雇用であるとアベグレンが彼の著作の中で記したが、彼が調査したのは典型的な大資本の大工場のみ、中小規模の工場では全くの転職社会(p10)
・1970年代前半に、20代前半の年間転職率は20%のであった、最近では大卒3年で3割が転職とあまり変わらない、あり得る姿は、若年時に数回の転職をして30代までに決定して、その後に定年まで勤める(p11)
・80年代よりも2000年以降のほうが勤続年数は長い、長期雇用慣行は強化こそすれ、崩壊していない(p13)
・男性正社員の驚異的定着の裏に、男性非正規雇用者と、女性が雇用の緩衝材となった(p17)
・生涯賃金を考えると、転職は2回程度にしておくのが正しい、40歳の場合、転職ゼロの平均年収:731に対して、697(1回)、618(2回)である(p24)
・高校卒3年離職率はこの15年間変化ないが、大卒は増加傾向にある、この理由は、90年以降に大学進学率がアップして、卒業者が30%以上の増加したから(p30)
・給与差が広がっているのは事実であるが、大企業の40代以上で、過去比較で平均6%(上に3%下に3%)程度(p37)
・業界全体は、製造派遣解禁とともに、請負(請負会社の直接雇用)から派遣へと事業転換してきたというのが実情で、ほぼ同じ待遇で働いている(p48)
・生産年齢人口は1996年にピークとなり、もう12年も減少(600万人、8%)している、正社員数は1998年に3800万人でピークとなり、現在3400万人強(380万人減少)両者はほぼリンクしている(p55)
・生産年齢人口あたりの正社員比率は41%程度をこの20年以上キープしている、正社員も非正社員(正社員は1984年から20年間で3441万人:108万人増加) も増えている(p57)
・少子高齢化は、大学で言えば、非ブランド校が打撃を受け、職業でいえば、非ホワイトカラー職が打撃をうける(p75)
・ジニ係数は、全国消費実態調査は二人以上世帯のみで算出しているため、ジニ係数の拡大傾向は弱くなっている、1979年から2003年までで、0.26から0.30程度(p85)
・ジニ係数は、長期的に見ると、小泉改革以前から格差が広がっていることを示すが、それはあまり語られない(p92)
・製造派遣などの職務は3年以上の契約更新が不可能、継続する場合には、直接雇用義務が発生、この運用開始が2006年3月から(p94)
・近年の若年正社員の減少は、1)総人口の減少、2)大学・大学院への進学率アップによる就学中の人の増加が、要因となっている(p106)
・20年前だと高卒就職者:51万人、大卒就職者:30万人だったのが、現在は各々、17万人、40万人になっている、その結果、かつて大学をでたら就けると思われていた仕事は枯渇状態(p107)
・1984年と現在を比較すると、正社員の数は減少どころか108万人増えている一方で、「自営+家族従業員」は653万人減少している、小規模法人を入れると1000万人近い減少、これより、かつてなら零細商工の従業員が非正規になったと考えられる(p119)
・長期トレンドで失業率が上がり続けるのは、経済発展による社会の成熟、経済の成熟は、1)成長率の低下、2)ミスマッチにより失業率の上昇を引き起こす(p124)
・日本は40年前までは中進国だった、1967年にGNPで資本主義2位になったが、当時の日本は、イギリス・フランス・西ドイツ・イタリアの2倍強の人口であった、人件費が安く進学率が高いので、安価で質のよい労働力を活用できる日本企業は成長を続けることができた(p196)
・1980年半ばまで、日本は欧米比で、人件費が今の韓国並み、だから世界に出る必要はなく、日本で作れば世界一安い製品が作れた(p196)
・60年代の猛烈な少年犯罪多発社会を日本はどのように変えてきたか、1)経済成長による所得アップ、2)高学歴化(高校進学率アップ)、3)進学競争による日本型生徒管理システムの完成、がある(p202)
2010/11/27作成
Posted by ブクログ
雇用関連の諸問題を分析し、常識とされていることに結構ウソがあると主張した本。就寝雇用が健在である一方、成果主義や、転職人口は全然増えてないというデータをそろえている。
一方で非正規雇用の増加は問題とし、それが生み出された原因も述べている。日本企業が国際競争力をつける必要性に迫られる一方で正社員の雇用を従来の方式で守ろうとした結果、非正規社員という逃げ道を選ばざる得なくなったと断じている。
大地震以降、また別の角度で雇用問題が発生しているが、日本企業のシステムが被災による雇用問題をさらに難しくしている可能性があると感じた。