さすが古典SF作家の短編集と思わせる一冊!
作品の多彩さもそうなのですが、最近のSFの傑作たちに通じるアイディアも随所に見られ、普遍的なSFの血脈を感じました。
もっとも印象的だった短編は表題作の「無伴奏ソナタ」
音楽を愛した天才が、国家から音楽をはじめ多くのものを奪われていく姿を描いた短編。
国に逆らうと分かっていながらも音楽を創ろうとする主人公の静かな熱意と過酷な人生に思いをはせるとともに、ラストシーンの素晴らしさが強く印象に残ります。文章が主人公から距離をとった冷静な語り口なのですが、その分深く静かな感動がゆっくりと押し寄せてきました。
SF作品でありながらもホラーの雰囲気を感じる作品も多く、その不気味さも相まって面白い作品も多かったです。
「王の食肉」は人間を食べる外来生物とその生物に仕えた〈羊飼い〉と呼ばれる人間の物語。ぱっと読んだ雰囲気ではB級ホラーっぽいあらすじになるのですが、そこを描写の気味悪さで引っ張ります。そしてラストの展開でまったく味わいのちがう作品に変わり、アイディアとテーマの見せ方の巧さを感じました。
「ブルーな遺伝子を身につけて」もSFにホラーの雰囲気をまとった作品。化学戦争で地球から逃れた人類。それから数百年。宇宙飛行士たちが再び訪れた地球には、生き残った人類が生活していたが……
地球で生き残った人類とともに生活しているアメーバ状の謎の生物。その正体が分かったときの不気味な感じと衝撃の一方で、どこか説得力もある奇妙さもあり印象に残りました。
他にもSFだけでなく怪奇小説の雰囲気の強い作品も多数収録されていて、著者の多彩な一面を垣間見ることのできる短編集でした。