立石泰則のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ソニーがいかにしてエクセレント・カンパニーから普通のパッとしない企業に没落していったかを、経営人事視点で追った本。ノンフィクションライターとして定評のある著者だけに、章立てが上手く読みやすかった。
通読しての全体的な印象は、ノスタルジー。乱暴にまとめると「昔のソニーはよかったな」だが、もちろんこれで終わると駄作。本書では歴代の社長や役員へのインタビューをベースに、歴代社長がソニーをどうしようと考え行動したか、あるいは行動しなかったかを綴る。時々「それは穿ちすぎでは」と思われるような著者の推測も入るが、おおむね間違ってはいないだろう。
本書では「ソニーは技術を捨ててしまった」というフレーズが何度も登場する。確かに出井社長時代からソニーはハードウェアビジネスからソフトウェアやネットワークでのビジネスに傾倒していった。著者はそれに対し極めて批判的だが、本当にその判断が間違いだったのかは僕は疑問だ。現に、今我が世の春を謳歌している企業───アップル、グーグル、サムソンなど───は、まさに独自のハードウェア新技術の開発に全く価値を置いていない企業ばかりだ。また、メーカーとして倒産の危機に遭い別業種で復活したIBMのような企業もあるし、逆に自社開発にこだわるあまり没落していった企業は数知れない。後出しジャンケンで「あれは失敗だった」といった批判は意味が無いだろう。
本書で最大の「戦犯」とされているのが前CEO(2012年現在)のハワード・ストリンガー氏。彼がソニーのDNAを完全に壊してしまったということだが、それを是とするか否とするかは意見が分かれるだろう。確かに彼の経営は大失敗だったが、「創業者の思いが詰まった○○の売却」といった事例を多く紹介してそれを批判するのは「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ではないか。
ただし著者自身、本書が多分にノスタルジーが込められたノンフィクションであることは自覚的、というか敢えてそういう一冊にしたのは明らか。題名にも現れているように、この本の主人公は「僕らの」ソニーなのだ。
最後に、ソニーから離れて本書の感想を述べておく。まとめると、大企業の役員であってもやはり人間というのは客観的な判断だけでなく自身のプライドや情に左右されてしまうのだなという衝撃。会社に長く勤めているとそういう場面は頻繁にお目にかかるが、大企業のトップ人事にもそんな理由で決まったりするのかと驚いた。
本書で批判されている人物の中で、完全な悪人として描かれている人間は一人もいない。ただ能力が欠けていたり、器でなかったりするに過ぎない。本来のコーポレート・ガバナンス(企業統治)というのはそういった一人の人間の適性などに左右されずに経営が安定的に機能するためのもののはずが、機能していないのが残念。民主主義の限界と同種の問題を感じた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレトランジスタラジオ、ウォークマン、CDなど、世の中を変える魅力的な製品を生み出してきたソニーが、なぜ凋落していったかを問う本。
ソニーは90年代半ばから、目先の売り上げに固執してしまい、強みだった商品開発能力に影を落とすようになったという。確かに当時以前ほどソニー製品に魅力を感じなくなっていたし、ソニー神話の神通力が徐々に失われていったのだろう。ソニーのトップは、大賀、出井、そしてストリンガーへ変わっていくが、エレキ軽視、ネット偏重へと会社の方針は傾いていった。
出井氏がネット社会に対応した製品を打ち出せなかった理由の一つに、当時ソニーが抱えていた借金の返済に追われていたことがある。大賀社長時代、映画会社と音楽会社の買収で負った有利子負債が重荷になっていた。これら買収会社のアメリカ人経営者による乱脈経営は「ヒット&ラン」という本が出版されているという。
著者のストリンガー氏の評価は出井氏よりも厳しく、技術軽視、コストカッターとしてもの作りそのものに関心がないと評している。 -
Posted by ブクログ
立石さんという琵琶法師を得て、ソニー物語が平家物語として語られています。今や誰もが「モノからコトへ」を唱えますが、その流れに表層的にマネジメントが乗ると、こういうストーリーになるのでしょう。設立趣意書の「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場」というソニーから、盛田・大賀時代の「ソフトとハードは、ソニーグループの両輪」を経て出井時代の「ソフトとハードの融合」、そして「デジタル時代では製品の差異化は難しい」と考えるストリンガー時代へ。ただ、生き残る、ということは変わり続けるということも真実だと思います。「日本から」「エレクトロニクス事業から」見たソニーが「米国から」「エンタテインメント事業から」見たソニーに変わっていく。ただ、その企業がソニーである必要はあるのでしょうか?しかし、平家と違って、まだソニーは滅亡していません。今日だってCLの決勝は"make.believe"の看板で埋まっていました。ウォークマン世代の自分としては、「時代は進化した、ソニーはどうですか?」と見つめて行きたいと思います。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ日本を代表するメーカー、ソニー衰退の裏事情。
かつてのソニーは、高品質な製品を作る代表的な企業として有名だったが、創業者亡き後、徐々にその評判が低下し現在では普通の電機メーカーになってしまった。長年ソニーを取材し続けてきた著者は、経営の度重なる方針転換が現在の状況を招いたと考える。時代をリードする技術を持ちながら、それを製品に生かせなかったこと。時代の流れを読み切れず、ユーザーの志向の変化についていけなかったこと。創業時の指針に反し、メーカーでありながら、コンテンツビジネスを重視したことで、核となる収益手段を失ったことが要因と指摘する。経営者が会社を纏めきれないことも原因としている。
著者は、様々な問題を抱えて、昔のような優秀な製品を生み出すソニーは戻ってこないと考えている。
若い頃、ソニーの製品を買った人達は、みんな誇らしげでした。ソニーは高性能の代名詞で、高価でなかなか手が出ないので、持っている人が羨ましかった記憶があります。また、優秀な企業として、多くのビジネス書に成功例として採り上げられていたのを思い出します。しかし、創業者が相次いで亡くなった頃から、革新的な製品が出なくなり業績が悪くなってきている印象があります。この本を読むとその理由が判るような気がしました。
(追記)2021年現在、ソニーは大復活を遂げました。1兆円の利益を挙げて、この本に書かれた時代とは大きく変わりました。この本のタイトルは「さよなら、昔のソニー」に変えた方が良いかもしれません。ビジネス本は難しい、、。 -
Posted by ブクログ
ハイビジョンを越えるテレビに注目が集まり、近藤さんのICC研究所とシャープの関係が去年話題になりました。
本書は、ソニーの近藤さんのソニーに入社するところやDRCを製品化する事業について述べられています。また、ソニーのテレビの歴史についても述べられていました。
とても個性的で寡黙な近藤さんが周囲と違い浮いていたが、偉い方々に一目置かれており、DRCの製品化を進める様子が、紆余曲折しており、興味が持ちました。
本書を読んで感じたのは、目先の利益や売上にこだわらず、本書の特命や徒弟制度のような長期的スパンで技術者を育てることが今の日本で必要だと感じました。
また、近藤さんのいう「自己否定」し続けることで技術を常に進歩させる考え方に共感しまし、互いに議論をぶつける「共振会議」の話はその通りだと感じ、自分も「共振会議」ができる環境を作りたいと思います。
だれにも負けないと思っているが、なかなか上司に認められない方や技術者の方にお勧めします。 -
Posted by ブクログ
今は無き三和銀行が香港/中国市場に対しどのようにアプローチしていったかという企業戦略を時系列にまとめたもの。立石さん、読み物として面白くまとめよう、というサービス精神が旺盛な方らしくどの本を読んでも面白いが(特にホンダの話は秀逸だった。)これもなかなか良くできてる。取材を真面目にやってないとこういう本は出来ない。ただ中国市場に関しては、日本の銀行が不良債権処理でもたついているうちにどんどん変わっていき、ここに書かれていることが既に過去のものとなってしまっているわけで、いや、改めて時代の移り変りを感じ。どちらかというと政府主導で合併してメガバンクになったわけだけど、この先どうなるんでしょうね。