畠山理仁のレビュー一覧
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第15回開高健ノンフィクション賞を受賞した、選挙をテーマにしたノンフィクション。「選挙」と聞くと堅いイメージを抱く人も少なくないと思うが、本作はヘタな小説よりもよほどエンターテインメント性に溢れていて、読んでいてとても面白かった。それはもちろん、著者の筆力が成せる業でもあるが、何よりもまず、題材の妙に尽きるだろう。本作で著者がおもに取り上げる「無頼系独立候補」は、一般的には「泡沫候補」と呼ばれているが、本作の「第一章」で詳しく述べられている「マック赤坂」や、昨年戸田市議選に当選したあとに結局当選無効となった「スーパークレイジー君」などのように、いわゆる「政治家」らしくない、個性的なキャラクター
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ネタバレ風変わりな泡沫候補の活動を追ったドキュメンタリーがおもしろくないはずはなかった。
そして、メディアに無視され自分の存在・主張が届かない状況で選挙戦を戦う手段として変わり者になり注目を集める戦略のことや、「多様な選択肢」であるはずの泡沫候補の政策をあらかじめ切り捨てるのは社会にとっては損失ではないかとの視点、高額な供託金の没収など大きなリスクを取って出馬した候補者に対して、もう少し敬意を払う必要があるとの主張など、なるほどと思わされた。
何より、「もし、自分が立候補するとしたら」と想像を巡らすことが、民主主義社会に自分が参加していることへの実感を持つことに繋がるだろうと、納得させられた。「一 -
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この本を読み終わって、一番に出てきた言葉は「尊い」。
ほとんど自分では使ったことのない言葉だ。
「黙殺」されても侮蔑されても何度落選しても、孤軍奮闘で、自分の主張、政策を訴える候補者たち。
アルバイト生活をしながら、生活に困りながらも、20年もの間、その「無頼系独立候補」を取材続ける畠山さん。
何のため、誰のためになるのか、はっきりわからない。だけど確実に、見えないけれど、ボーッと生きている私(たち)に何か大きいものをもたらしてくれていると思う。
尊い人たちだと思う。
参院選直前の今、選挙報道の不平等さについては、ありありと実感できる。
それこそ、あの人の好きな言葉「既得権益」だ。
制度の -
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これは歴史に残るノンフィクション本です。
ちょっと古い話になりますが、2016年に小池百合子氏が勝って都知事になった
東京都知事選には、何人の立候補が出馬したかを覚えていますでしょうか。
なんと21人です。
おそらく多くの人は、小池氏、増田寛也氏、
そして鳥越俊太郎氏の三つ巴の戦いとしか
記憶していないことでしょう。
それもそのはずです。
その主要3名しかTVでは扱われなかったと
言っていいからです。
その他は「泡沫候補」という言葉で括られることが多い。
しかし、彼ら彼女らは決して目立とう精神で、負けて元々で出馬したのではないのです。
ややもすると変テコリンな格好で「頭がおかしい、
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有力候補だけがマスコミに取り上げられて、いわゆる泡沫候補の情報が全く報じられないのは何故なのか。
そんな無頼系独立候補たちの取材をライフワークにする筆者は、彼らと有力候補との情報格差を問題とする。
安くはない、300万円ほどの額の供託金を候補者は等しく払っているのに、マスコミに報じられる候補者と、報じられない候補者がいる。
泡沫候補の政見放送がパフォーマンスのようなものなのは、彼らがその手段でしか世間に認知されないからだ。
彼らの政治主張は、至ってまともなものが多い。
何かの信念を持ち、それに基づき立候補しているからだ。
しかし、彼らの政治主張をどれだけの人が知ることになるだ -
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「泡沫候補」と呼ばれる候補者がいる。
有力な支持者もいなければ、政党の後ろ盾もない。知名度もなければ、資金も十分にはない。ないない尽くしで、しかし、彼らはドン・キホーテよろしく、選挙に立候補するのである。そしてたいていの場合は、当然のごとく、あえなく散る。
たった1つの枠に21人もの候補者が立った2016年の東京都知事選は例外的な多さではあったが、多くの選挙には少なくとも1人や2人、誰の目から見ても闘う前から負けが見えているかのような候補者はいる。彼ら・彼女らを駆り立てるものは何なのか?
これはそんな候補者たちを綿密な取材で追った1冊である。
著者は長年にわたり、こうした無名の候補者たちに注 -
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【孤立無援の独壇場】泡沫候補と称され,そもそも選挙に出馬していることすら認知されていないような候補者に焦点を当てたノンフィクション。「勝てない選挙」に出馬する彼/彼女らを突き動かすものとは何か,そしてそういった候補者から見えてくる日本の選挙の問題点とは......。著者は,早稲田大学在学中から取材・執筆活動を始めた畠山理仁。
「気づくと絶対面白いテーマだとわかるが,そのテーマにまず気づかない」というタイプの一冊。取り上げられる候補者一人ひとりの人間ドラマに引き込まれることはもちろん,政治とは,選挙とはという大きなテーマへの思考にも導いてくれる作品です。
〜生身の候補者一人一人にはドラマがあ -
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素晴らしいっ!もうこの一言に尽きる。
選挙に立候補するいわゆる「泡沫候補」を「誰にも頼らない、無頼系
独立候補」と呼び、そんな彼ら。彼女らを追い続けた記録だ。
私は注目を集める選挙にマック赤坂氏とドクター中松氏の名前を見つける
と、「あ、また出ている」と嬉しくなって来るんだよね。そして、本書
の冒頭はそのマック赤佐氏なので、ワクワクした。
スーパーマンやガンジーのコスプレをしたり、頭に天使の輪をつけて
いるけれど、彼の「スマイルっ!」ってとっても大事なことだと思う
のよ。みんなが笑顔でいられる政治っていいじゃないか。
選挙になると大手メディアは「主要候補」と「その他」 -
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日本の空虚な民主主義社会、その根幹をなす政局に風穴を開けたい。2009年の民主党政権による記者会見は、記者クラブによる閉塞からフリーランス記者の参加を求めていく。それはフリーランス記者側の強い要望であり、そこから少しでも透明化へと近づく政治の本質へと繋がっていく。この当たり前の民主主義の振る舞いは21世紀まで看過されていた。その原因のひとつに私たち有権者の政治への無関心、そして安易に同調へなびく "事なかれ風土" が根付いているからであろう。そんな現状に諦めない筆者畠山理仁の足跡は、為政者や官僚、マスメディアの愚と賢が交錯する。便利や分かり易さとは対極にある "デ