増田悦佐のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
社会人になって読書を多くするようになってから、新刊が出るたびに必ず読んでいるのが、この本の著者である、増田悦佐氏の本で、私にとりましては、46冊目となります。
私より15歳ほど先輩ですが、私の好きな近代・現代史について、学校で習ってきた歴史とは一味違った解説を、具体的に検証できる一次データを使って解説してくださり、本当によく研究されている方だなと思います。
以前話題になった大作「ピケティ」の本の重要なポイントの解説は、あまりにもの分厚さに読む気力を失いかけていた私は福音のような感じでした。
今回の本は、質疑応答の形式で書かれていて、読者が持っているであろう質問に対して、増田氏が回答して解説する形式になっています。昨年から今年初めにかけて、大いに盛り上がった「ビットコイン」についての解説もあります。ビットコインはそれを売買して儲けるものではなく、新しい通貨の形であることを理解しなければならないなと思いました。
以下は気になったポイントです。
・世界中でアメリカ的な弱肉強食型の資本主義が終わって、市場経済が侵略的ではない本来の平和な形に戻る。その兆候が株式市場に現れている。経済展望が良ければ低迷、悪ければ活性化する、個別銘柄についても同じで、将来の収益成長展望で株価をはじき出す場所ではなく、内部留保を先払いする会社を評価する(p26、27、33)
・アメリカ上場企業において、2004年あたりで、設備投資と研究開発投資の合計額を、配当・自社株買いと買収に使う費用が上回った(p29)
・ビットコインは、約4世紀ぶりにピークまでの3年間の値上がり率世界最高記録を抜いた、チューリップ・ミシシッピ・南海・ゴールド・1929年の大恐慌と比較して(p34,35)
・オランダは植民地の略奪経営から、生産により長期に渡って持続する収入源に変えた、サトウキビ・タバコ・綿花といった商品作物によってであり、チューリップではなかった、最大の利益を得たのはイギリスであった(p37)
・イギリスが黒人奴隷貿易をやめることには、南海会社の株も年金も大英帝国永久国債に繰り入れられていた、なのでバブル崩壊後の南海会社株を買っていたオランダ人は、孫子の代まで優雅に暮らせる安定した金利収入を得た、これにより覇権がイギリスへ移った(p39、40)
・不換紙幣がこれほどバラまかれるようになったのは、1971年にニクソンが米ドル金兌換を「一時停止」してからのことで、まだ半世紀の歴史しかない。銀行小切手よりも新しい(p82)
・ビットコインが暗号通貨界の金なら、イーサリアムは原油である、金は貨幣としての価値以外に観賞用くらいの価値しかないが、イーサリアムは送受信のときに色々なサブプログラムをつけられるので、カネのやり取りのついでに契約を結ぶことができる(p101)
・世界のビットコイン採掘現場の新規参入が増えない理由として、1)高速大容量コンピュータが必要、2)大量の電力必要なので低価格の電気代、3)中国政府が突然廃業を命じる可能性がある、しかしこれは杞憂である(p123)
・単位当たり石油換算エネルギー消費量は、ビットコインが金採掘よりも7倍以上も大きいが、年間消費エネルギーはビットコイン総採掘量は金よりも、20分の1以下と、ずっと少ない(p125)
・地表が温暖化している理由は、建物や住宅の冷房が完備されて、冷房をかけているから、発生した熱を冷ます技術は存在しない(p133)
・エンジンの往復運動を車軸の回転運動に変える必要がないので、電気自動車はエネルギー効率に優れている。ところが前段階では、エンジン車は廃熱が出るだけに対して、電気自動車は発電時に半分くらいは廃熱になるところから始まり、送電ロス、充電所に溜めてロス、車載充電器に入れてロス、溜めた電気でモータを回すときにロス、エネルギーの大半をモーターを回す前に失っている(p134)
・アメリカでさえ、1989年をピークに国民一人あたりのガソリン消費量は減少している、原油価格の高止まりと言われていたが、価格が暴落しても消費量は減っている(p137)
・アメリカの製造業の設備能力は横ばいか微減である、稼働率はずっと減少している、アメリカの貿易構造が資源国化している(p147)
・設備投資額の伸び率が鈍化しているのは、小型軽量の設備でも仕事がこなせる、グラスファイバー・カーボンファイバー・ファインセラミック、これらは日本企業の総生産量に占める割合が大きい、もっと興味深いのは、どの分野も素材(石英、炭素、粘土・陶土)もありふれているので、原材料の確保に困らない(p150)
・各国中央銀行が金融市場に注入するお金の量は激増しても、金利は高くならない、マネーの流通速度(1年に何回現金が移動するか)が劇的に下がっている=投資先が無いので手元にお金を置いている、から(p195、196)
・エアービーアンドビー、ユーバーが「他人の褌で相撲を取る事業」とすれば、クラウドは「自分の褌を他人に貸して相撲を取らせてサービス料を取る」事業である(p226)
・2020年代半ばから、世界は確実に欧米型エリート社会から、真正大衆社会に変わる。経済は規模の大きな製造業・金融業が力を失い、数えきれないほどの中小零細サービス業がけん引するようになる。政治もそれに遅れて、国民投票で行われる。そうなったとき、知的能力格差のほとんど存在しない、それどころか大衆のほうが知的エリートより知的能力が高い日本が有利となる(p257)
・ビットコイン関係でお薦め本は、1)アフタービットコイン、2)仮想通貨・金融革命の未来透視図(p258)
2018年7月1日作成 -
Posted by ブクログ
この本は年末(2017)大掃除で部屋の隅っこに、読みかけ本として発掘されたものです。殆ど読み終えていたので、最後まで読み通しました。この本の著者である、増田氏の本は今まで何冊か読んできて面白かったので、この本も私の期待に応えてくれました。
以下は気になったポイントです。
・世界最先端を行く高齢化社会を築いた江戸時代の日本の庶民は、同時に徹底してモノを大切に使いこなすライフスタイルを作り上げた。その一方で、同じ江戸の庶民たちが、人間関係には豪勢な散財を競い合った、この落差がなんともすさまじい(p5)
・高い地位で仕事をしたいと思う者は、ある程度の年になったら奏者番という高級官僚への登竜門のような仕事についていないとむずかしい(p13)
・江戸時代の警察機構は極端に規模が小さく、たいていのことは地域住民の自警団組織に権限を委譲していた、武家町の自警団の詰め所は辻番、町人町の詰め所は、自身番(派出所)、木戸番(駐在所)と呼ばれていた(p17)
・一都三県で約3560万人の居住人口を擁する東京圏は人口だけで見れば世界最大でないかもしれないが、居住人口x平均所得では世界一豊かな大都市圏である、ジャカルタ・メキシコシティ・ムンバイと比較して。鉄道が発達していてエネルギー効率が高い(p19)
・1)江戸という資源循環型で環境に対する負荷の小さい高密大都市を育てたこと、2)徳川幕藩体制を通じて窮乏化し続けた武士たちという、世界史を眺めても類例のない特異な支配階級を持っていたこと、が世界一豊かで環境負荷の少ない高密大都市として東京を支え続けるだろう(p20)
・歴史始まって以来、日本の経済の中心はつねに関西にあった、江戸が成功するまで、関東の経済力が関西を凌駕したことは一度もなかった(p26)
・江戸の災害対策は、地震や火事の際に後腐れなく完全に燃え尽きてしまい、破壊消防もやりやすく、ほぼ無尽蔵に再生できる、木・紙・泥を主な材料とする平屋や二階建てばかりの家屋を建てることであった、燃えた後の復興はスピーディにできた(p29)
・江戸時代の庶民の大半は、人を説得する言葉を身に着けて支配階級にもぐりこんだところで、今よりたいして良い暮らしができるわけではない、一方気苦労のほうは、今の何倍にもなるだろう、という極めて経済合理性の高い判断を下した、これが明治維新以降も日本にしっかりとした知識人階級が育たなかった最大の理由であろう(p34)
・土壌が柔らかく穀物栽培に畜力を利用した深い耕起を必要としなかった日本では、馬の利用は軍事と運搬目的に限定され、馬は土壌の掘り起こしにはほとんど使われず、日本では去勢技術も普及しなかった、従って四足動物を家畜として飼育する習慣、食べる習慣も定着しなかった(p44)
・物理的に胃を膨らますことなく満腹感を得られることができるのは、1)砂糖、2)油脂類、3)和食の出汁(p50)
・国民全体が、和洋中華エスニック、さまざまな料理を食べている日本人は例外的な存在である。欧米文明は、カロリー過剰摂取で中下層の人たちが短命化し続けるところから没落していきそうな気がする、食文化から見ると欧米が没落、中国を除く東アジアが興隆するというのが妥当な筋書きだろう(p65、66)
・司法関係の任務に配置された、与力・同心といった侍が、個人的にこれと見込んだ町人を「岡っ引き」と呼ばれる手先に使っていた。岡っ引きの「岡」というのは、本来の場所ではない場所という意味、岡目八目の「岡」も同じ、岡っ引きは、地回りのやくざの親分クラス、岡っ引きの手先の「下っ引き」は、過去に収監された犯罪者で密告癖のある練習が選ばれることが多かった(p79)
・天明7年(1787)に15歳で将軍について、天保8年(1837)、65歳で息子に家督を譲って隠居するまで、数十名の妻妾、公認だけで合わせて54人の子女を生ませた、第11代将軍家斉は、将軍在位期間としては、第二位の8代将軍吉宗21年に大差をつけた50年である(p121)
・日本の銀価格が国際相場よりも大幅に高かったので、海外から銀を持ち込んで金に替えて持ち出す取引が激増した、幕府は銀価格を下げることで国際相場とするあわせようとしたが、欧米列強が自国の銀貨の購買力が下がると反対したので、金価格を引き上げて国際相場とすり合わせる方針にして、金流出を約半年で収束させた(p132)
・大間産のマグロはほかにも三本セリにかけられていたが、キロ当たり2.8-4.3万円という常識的な価格で収まっていた、1本目のキロ70万円と比較して(p158)
・5つか6つやっている習い事全部持ち出しではなく、そのうち一つではお金が入ってくると良い。お金をいただいて他人に教えるということは、きちんと教えなければならないという責任感も出てくる(p177)
2018年1月2日作成 -
Posted by ブクログ
私の理解では、今年(2016)初旬から、我が国では「マイナス金利」が導入されました。将来の日本を考えた場合に、マイナス金利を含めて、現在、日銀のやっている金融政策がどのように影響するのでしょうか。
私がこの20年ばかり追いかけてきた人の一人に、この本の著者の増田氏がいますが、彼の論調は、日銀も含めて世界にある中央銀行による金融政策は効果がない、と結論付けています。この本では、その結論に至るまでに生じるであろう、様々な質問に答える形で、論を進めています。
マイナス金利の影響を実際に私のような庶民が感じるようになるのは、もう少し後の事のような気がしますが、その成り行きを見守っていきたいと思いました。
以下は気になったポイントです。
・中央銀行とは、通貨発行の独占権を与えられた団体のこと、それが国直属の組織化、私企業であるかは枝葉末節の問題、通貨発行を独占する、というのが一番大事なこと(p12)
・通貨発行の独占権を中央銀行に与えるようになったかは、国と独占を許された金融業者が儲けたかったから(p14)
・イギリスには当時3つの大きな独占企業があった、1)東インド会社:インド大陸を侵略して、植民地経営する会社、2)イングランド銀行:通貨発行権を独占している、3)南海会社:新大陸で使う奴隷を独占的に供給する会社(p17)
・南海会社は、1720年の急落後も安定して利益を出し続けて、1851年までのデータでは株価も順調、フランスのミシシッピ会社は合併させられて破綻した(p19)
・連邦準備制度が誕生してから、アメリカは金利も債券価格もすごい乱高下を起こし、慢性的なインフレになった、創設前にはデフレが頻発していた(p31)
・世界中の大都市の人口10万にあたりの殺人発生件数を見ると、植民地だった国だけが高い殺人件数率を記録している(p46)
・オランダがインドネシアを植民地支配するようになったとき、中継貿易だったトルコのオスマン帝国とも関係ができ、トルコ原産のチューリップ球根がオランダに持ち込まれた。オランダは1602年に東インド会社を設立、1609年に中央銀行に等しいアムステルダム銀行という、潤沢に資金を供給できる機関を創設した(p59)
・植民地そのものが略奪経営から、持続性のある植物栽培経営に変わったという背景があったからこそ、ものすごく価値がつく、チューリップの変わり種子に、人々が飛びついた(p61)
・大部分が18-19世紀に設立されたヨーロッパ列強の中央銀行は、基本的には巨大な資金が必要な植民地経営のために機能した(p61)
・1930年に設立された国際決済銀行(BIS)は、各国の中央銀行をメンバーとする組織で、日本も創設時には株主として参加している。ドイツの第一次世界大戦の賠償金支払いの行き詰まりを打開するために生まれた(p72)
・フォードのシェアは1920年は60%を超えていたが、26年には20%を切るほどであった(p76)
・イギリスは無理やり金固定相場にして、1ポンド=4ドルでポンドの価値を維持しようとした、何度も「ポンドは下がる、ドルは上がる」という投機を仕掛けられ、ぼろ負けして国力を疲弊させていった(p124)
・フランクリン・ルーズベルトは、1932年に当選し、1933年に就任したが、初仕事が、アメリカ国民の金所有禁止であった。4月6日に通知し、5月1日までに保有している金を提出し、22ドル(1トロイオンス)で交換するとした(p126)
・買い上げがほぼ済んだ翌年に、金の公定価格を35ドルに引き上げた、保有等が許されたのが、1964年、金地金保有の自由が復活したのは、1974年であった(p127)
・外国人投資家は、日本株を売ると買った時に借りた円を返さなくてはならないので、円を市場から買い取るので、株安円高となる(p137)
・三菱東京UFJ銀行は、2016.7.15付けで、プライマリーディーラーの返上を届けて、取り消された。これは、同年4月29日に、マイナス金利を更に大きくする可能性があることを、日銀黒田総裁がコメントしていることと関係がある(p142)
・日銀がマネタリーベースを増やしている時期も、国民はカネを使わず、つまり貨幣の流通速度を下げて、マネーサプライは平準化している。日銀が債権放棄をしても、流通速度を自然に上げれば被害は無いだろう(p196)
・ドイツ経済の実力に対してユーロが低すぎるので、ドイツ国民は損をしている事になる。ドイツはユーロにしがみついているのが不思議(p201)
・ソ連邦はロシア連邦を始めとして、14・15の国家に分裂した。中国は、言語圏ごとに、北京語・上海語・福建語・四川語・広東語などに分かれるだろう(p215)
2016年10月10日作成 -
Posted by ブクログ
新刊本が出るたびに読むことにしている著者の一人が、この本を書かれた増田悦佐氏です、長い付き合いになります。
彼の論調は一定して、日本の素晴らしさを、具体的なデータやほかの国との比較、データを使う場合もできる限り長期間のもので説明されていて、とても楽しみにしています。
日本の特徴について具体的には、城壁のない都市が歴史的に栄えている、自動車社会よりも鉄道社会を選んだ賢明さ、どの業界も独占企業がなく複数の企業が良い意味で競合している、日本の金持ちは貪欲でない、日本のエリート(支配階級)よりも一般大衆が優れている等、彼独自の視点が多いような気がしています。
この本においては、インフレは一部の金持ちしか恩恵を受けない、経済学者は金持ちに気に入られる理論しか言うことができない、資源バブルで被害を受けるのは資源国、日本は有利になる、アベノミクスはダメ等が、再度強調されています。
私の理解したところでは、アベノミクスが進むと一部の人以外は厳しい生活となるが、個人はしっかりと仕事と確保できるように努力しましょう、という、ごく基本的なものでした。
以下は気になったポイントです。
・縄文時代が長きにわたって続いた結果、日本は他の国とは違う独自の発展を遂げている(p13)
・日本では木の実、草の実が大量に採れたら、それを積極的に増やそう(投資)とはせず、保管(貯蓄)をして万が一に備えた、保管する技術が磨かれた(p16)
・日本ならではの傾向として、同じ政治体制が長く続くと、権限が下の階級へ移って行った(p18)
・日本の庶民がそれなりに借金をしていたのは、お金を借りることのできる信用力のある庶民がいた、これは世界的にも珍しいこと(p20)
・16世紀以降、経済の中心地となったのは、ベネチア→アムステルダム→ロンドン→ニュウーヨークであり、城壁に囲まれていない無境界都市であった(p27)
・オランダ人は自分達はプロテスタントだが、カトリック相手でも商売するという姿勢を見せたので、経済覇権の奪取へつながった(p29)
・近代的な大規模生産工程の始まりは、奴隷労働と密接
不可分であった。イギリスは当初はポルトガルから黒人奴隷を卸売してもらっていたが、奴隷を積んだポルトガル商船を略奪したほうが良いと気づいた(p39)
・イギリスで工業生産が伸び悩んだのは、すでに植民地経営と金融に特化していたから(p61)
・南北戦争は黒人奴隷が焦点ではなく、南部諸州がアメリカ合衆国から脱退する動きに危機感を持っていたので、彼らを引き留めるためのもの(p62)
・デフレで本当に困るのは、借金をしている人や企業(p67)
・中国は、二本柱であった「アメリカへの輸出」がうまくいかなくなったので、ますます投資に傾斜していく。普通の国だと投資は20-25%程度だが、中国では45%が投資(p78)
・戦争の起きる原因は、1)食っていけない人が食糧を奪おうとする、2)エネルギー資源を収奪、3)宗教等の理念の戦争(p80)
・征服欲にかられて歯止めが利かなくなったのは、アレキサンダー大王、チンギスカン、ナポレオンくらい(p84)
・日英同盟を締結している日本は、日露戦争前に英国に確認した。ドイツやフランスが三国協商を根拠に参戦したら、戦争を辞さない。しかし戦火を交えるのが日露両国にとどまる限りは中立する、軍事力の異なる二国間の条約はこのようなもの(p85、87)
・スコットランドがイングランドの傘下に入ったのは、負債を全額チャラにするので一つの国に纏まろうという経緯(p97)
・資本は豊かな国では必ず利益率が低下するから、世界中のあまり豊かでない国にいかないと利益率は保てない(p101)
・資本主義は、世界中の非資本主義的な国々を資本主義化する過程においてでしか稼げない(p102)
・ニューディール政策が大恐慌を解決させたのは疑問がある、不況のまま第二次世界大戦に突入し、生産設備の破壊があった。その復興の過程で景気が良くなった(p120)
・経済成長率が鈍化する理由は、企業の利益率が高すぎてもうけてしまうから、消費が減退するので(p124)
・旧通産省の3つの大きな間違いとは、1)工場制限法、工業制限法をつくり地方に人を定着させようとした、2)天然ガスを法外な値段で買い続けている、3)大企業を次々と統合させたこと(p128)
・ストックの量(一定時点での総量)は、フロー(一定の期間内に総量がどれだけ変化したか)は異なる。フローは変化するが、ストックは大きな変化がない、つまりストック量をコントロールしても、フローは制御できない(p132)
・アメリカ経済の成長率がいちばん高かったのは、1850年(19世紀後半)の年率4.5%、この時期は南北戦争あたりを除いて、ほぼ一貫してデフレの時期(p144)
・経済記事で使われる完全失業率(U3)ではなく、それに不本意就労率を足したU6という指標は、GDP成長率低下の被害を国民の大多数が受けていることを示している(p155)
・今ではFED自身が、自己資本に60倍以上のレバレッジをかけて、米国財務省債、資産担保証券で手広くヘッジファンド顔負けの運用をしている(p164)
・中国は2012年に日量100万バレル目前でピークアウトし、資源浪費バブルは2012年で止まった。生産者物価指数(PPI)のマイナスのままがそれを示している(p166)
・2014年7月に始まった、バレルあたり100ドル台から40ドル台への原油価格暴落は、中国資源消費バブルの崩壊により、需給が大幅に緩んだことを象徴している(p169)
・採掘生産設備を大幅に拡大してしまった国として、アメリカ、オーストラリア、カナダ、ブラジル、インドネシアがある(p171)
・円安が進んだにも拘わらず、アメリカの対日赤字のシェアはほぼ横ばい、つまり円安が対米輸出を拡大するという議論は机上の空論であった。円安政策が成功するとは、輸出相手国の通貨ベースで輸出額が増えている必要がある(p175、188)
・支払われる金利が、インフレによる元本の目減り分を下回る、すなわち実質金利がマイナスになってしまったら、則利回りを求めて債権を買う投資家は売ることになるだろう(p178)
・企業の自社株買いには、解散価値の前払い以外の意味はない(p180)
・実質賃金を左右する最大要因は、総労働時間の増減である、インフレやデフレはそれほど重要な因子でない(p192)
・日本の株式総額は2014年には、478兆円にもなったが、これはほぼ全面的に外国人投資家によって演出されたもの、日本では個人も機関投資家も売り続けていた。日銀や年金運用法人の買いをあてこんだ日本機関投資家は買っていた(p197、200)
・アメリカやイギリスで技術進歩が効率性の低下を呼びやすい理由として、不要になった人材を簡単に切ることが正しい経営の在り方とされているから(p231)
・積極的に移民導入をしたスウェーデンの都市圏は荒廃、ほとんど受け入れなかったノルウェーは平和で落ち着いた雰囲気(p240)
2015年7月12日作成 -
Posted by ブクログ
今ではもう改善されたと思っていますが、原発事故の安全性が国民に伝わっていなかった頃は、「日本は危険な国」という過剰報道が日本でもされていたと思います。
私もそのように信じ込まされていたのですが、最近読んだ副島氏の本によれば、地震が起きた直後に調査(支援という名目で)した米国とフランスによって、致命的な問題は無いという確認が爆発直後になされて、それを受けて日本の株式市場も値が戻ってきたとのことです。
このようなことは、ニュースや新聞を見ている限りでは理解することはできず、昨日(7月24日)お祭りのように、「デジタル化へ完全移行」という行事がなされましたが、今後メディアはどうなっていくのでしょうか。
さて、この本は、最近かなり多くの本を出版されている増田氏によって書かれたものですが、いつもながら的確な公開データを用いて、日本と世界各国との経済比較を、歴史的な背景も時には織り交ぜながら解説されているので、興味を持って読んでいます。
以下は気になったポイントです。
・今回の福島原発とスリーマイル島やチェルノブイリの事故との最大の相違点は、陣地の及び難い激甚な自然災害によって引き起こされた事故と、構造欠陥か、発電所要員の操作ミスが起こした事故との違いにある(p15)
・最重要事項である緊急時の運転停止は、きちんと行われていた、燃料棒の溶解が起きたとしても、運転風の原子炉が発電のために励起したエネルギーの送り出す大爆風をともなって放射能を大量かつ広範に散布するという事態は、絶対に起きなかった、これを即座に指摘したマスコミ報道は皆無であった(p16)
・オーストラリアの元ラッド首相は、2008年の在任中に対日戦勝記念日を制定した人で、現在は外相を務めている、日本在住のすべてのオーストラリア人に日本から逃げ出せと勧告した(p23)
・欧米人の感覚では、どんな事態に遭遇しても「我々は事態を掌握している」とウソをつき通せる人間を指導者の器として信頼するが、日本人は、あわてうろたえている説明こそ、「ウソをついていない」と思って信頼する(p26)
・ナメラレ甘く見られ、バカにされるポジションは、戦術的にはいろいろ不愉快、うっとうしいことが多いが、戦略的には非常においしい、やるべきことをできる範囲でやっていれば、それが鮮やかな奇襲攻撃に見えるので(p28)
・世界中どこでも支配階級は、大衆と違う言葉を使って知的能力を独占しようとする(p32)
・日本の大衆の豊かさは、江戸時代から欧州では王侯貴族にしか許されない特権的楽しみ(物見遊山、それで身を立てるつもりのない芸ごと・習い事に金をかける習慣)を持っていた(p34)
・欧米エリートの知日派は恐怖の第三段階に入っている、彼らは認めようとしないが、金融バブルで膨らませた張りぼて欧州経済より、日本経済の方が健全であることを理解している、知的エリートが無能で無策、無力な方が豊かで平等性の高い社会を築けることが本国の大衆に分かったら大変なことになる(p39)
・古来より大規模な遭遇戦の帰趨を決してきたのは、戦力の大小ではなく、逃亡兵の多寡で決まった、戦力は大きくても逃亡兵の多い軍は負けてきた(p44)
・アメリカは上位20%が1980年代から28年近くも経済成長による所得を独占してきた、下から80%はマイナス続きであった(p50)
・紀元1600年以降に限っても、日本列島では1世紀に1~2回の割合で、1万人以上の人命が失われる地震や津波が起きている(p54)
・日本の農業は、ひんぱんに雑草を除去しなければ満足な収穫が得られないが、その反面、よそよりもまめに草取りをすれば、同じ気象条件でも同じ種をまいても収穫量で差をつけることができた(p57)
・日本の海岸線の長さは、インドネシア、ロシアに次ぐ、世界第三位(p60)
・関東大震災後に整然たる碁盤の目に仕切った道路網が江東区内でできたが、いまだに自然発生的な盛り場が育ちにくくなっているという弊害がある、都市密度が低すぎてスカスカの街並みばかりになった(p69)
・緊急時に非難しやすいことを重視した街並みとは、伝統が生き続けにぎわいの絶えない街とは正反対にある(p70)
・日本の天然ガスの利用技術(パイプラインでなく超低温で液化して、超低温のまま特殊保冷装置をもった大型タンカーで運ぶ技術)や重質油の利用技術は世界の先端である(p75)
・大震災後に光明を見出すことができる発展として、1)石炭・重油・天然ガスを燃料とする火力発電所の新増設が解禁、2)地熱、潮流、海水温度差発電の検討、3)超電導の実用化、がある(p76)
・横幅の広い人口ピラミッドになるのは乳幼児期で間引かれ、少年期、青年期、壮年期で間引かれて、天寿を全うできない人が増えるから(p85)
・日本の失業率は、全体(5.1%)や若年層(9.3%)と欧州や米国と比べてかなり低い(p86)
・スウェーデンでは毎年の所得は国が税金や社会保険料をたっぷりと取り立てて再配分することで同水準になるように調整されている、昔から資産を蓄積してきた家系では相変わらず金持ち、貧乏な家で生まれて最終的に高給取りになった人は不幸なはず(p97)
・日本の租税負担率:23%、社会保障負担率:17%であり、合計で40%程度であり、はるかに均整のとれた配分、欧州は軒並み50%以上(p100)
・現在の日本は省エネ技術が進んだこともあるが、今どきの147ドル(1バレル)は、1970年当時の40ドルほど高くない(p108)
・日本の輸出依存度は15%程度で小さいが、貿易収支は中国に次いで2位、これは製品価格自体は小さくても高い付加価値が詰まっているので、黒字には大いに貢献する輸出品目が非常に大ことを意味する(p111)
・経済損失とは、特定の瞬間に数えた資産(ストック)がどう変化したかということ、生産とか所得はフローの概念で一定時間にどれだけ作ったか使ったかという概念で両者を混同すべきでない、つまり経済損失が即GDP減少につながるわけでない(p116)
・日本経済の粗貯蓄率は27%(1998~2008の平均値)で、先進国では一番高い、個人家計から預貯金として銀行が集める資金量は少なくなっても、民間企業は自己資金で投資継続が可能(p121)
・東アジアで輸出主導の高成長が続いている諸国は、ほとんど例外なく、対世界の貿易黒字が伸びるほど、対日貿易赤字も増えている、中国インドネシアは数年前までは例外であったが最近は変わった(p147)
・大阪万博の来場者数:6421万人という記録は上海万博に抜かれたが、国民人口比:0.5は抜かれないだろう(p174)
・東ローマ帝国が西ローマ帝国崩壊後に1100年以上も存続した最大の理由は、西ローマでは貨幣改鋳が進んで悪性インフレが頻発したのに対して、末期に至るまでは東ローマ帝国ではほとんど改悪がなかった(p183)
2011/7/25作成