竹内洋のレビュー一覧
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「普遍的知識人」としての丸山眞男の思想史的な位置を、戦中から戦後にかけての日本社会における文化資本をめぐる状況の推移のなかで検討しています。
前半は、狂信的な国家主義者として知られる蓑田胸喜について多くのページを割いて考察をおこなっています。また著者は、「亜インテリ」と「本来のインテリ」を区別しようとした丸山の主張に対する批判を展開し、ファシズムを下支えすることになった「亜インテリ」とされる人びとが、教養主義の丸山らとは異なるもうひとつの形態にすぎなかったことを明らかにしています。
そのほか、戦後の社会状況において丸山が「普遍的知識人」としての地位を占めた理由と、その後本格的に日本社会を覆 -
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丸山眞男の時代という書名通り、丸山だけに焦点をしぼらず、丸山が活躍した時代全体に焦点を当てようとするなかなかの力作。
著者は、教養主義の没落などの作品を書いてある社会学者の竹内洋氏であり、ところどころにある社会学的な統計的な裏付けもあって、読んでいて楽しかった。
簡単に要旨をまとまれば、丸山思想の背景や時代の説明に始まり、法学部の政治思想史を教える傍ら、「超国家主義の論理と心理」により、日本独自の視点を指摘して注目されたことや、その影響を描いている。しかし、その後は有名であるがゆえに、様々な批判も受けることになる。当時の教養主義についても、終章で触れている。
丸山思想や時代背景も含めて全 -
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社会学者である竹内洋の著作。社会学の概観を知りたくて読み始めた。
社会学の名著といわれる30作を紹介している。社会学の歴史の変遷もさることながら、ヨーロッパの思想潮流にも触れることができた。19世紀、コントによって始まった社会学はデュルケーム、ウェーバー、ジンメルなどの社会学者により理論化された。そして第二次大戦後にアメリカに渡った社会学は隣接する社会心理学や経済学、人類学などの影響を受け新たな展開を迎えた。その後社会学を総合的に形式化する試みが社会システム理論としてパーソンズによって発表された。社会学の歴史変遷を短いが分かりやすく説明してあり、その他にもメディアやジェンダー、エスノメソドロ -
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社会学の名著30冊について、竹内が解説する。
教育社会学では京都大学系筆頭にあげられるだろう著者が、社会学の名著と呼ばれる本の中で面白いもの、著者が興味を持つものについて挙げ、それぞれ7-10ページほどの紹介をする。
引用は必ず2カ所は入っており、内容が分かりやすくなっている。原著を読んでいなくても、読める内容となっていた。
原著を読んでいれば、うまくまとまっていることに気づき、読んでいなければ本の紹介をしているのだと忘れるほどに興味深い記述がならぶ。後から、名著の紹介だったと気づくだろう。そして、その内容についてあまり覚えていないことに気づく。それが竹内氏の考えだと思ってしまうほどに読み下 -
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ネタバレ[ 内容 ]
戦後の市民による政治参加に圧倒的な支配力を及ぼした丸山眞男。
そのカリスマ的な存在感の背景には、意外なことに、戦前、東大法学部の助手時代に体験した、右翼によるヒステリックな恫喝というトラウマがあった。
本書は、六〇年安保を思想的に指導したものの、六〇年代後半には学生から一斉に背を向けられる栄光と挫折の遍歴をたどり、丸山がその後のアカデミズムとジャーナリズムに与えた影響を検証する。
[ 目次 ]
序章 輝ける知識人
1章 ある日の丸山眞男―帝大粛正学術講演会
2章 戦後啓蒙という大衆戦略
3章 絶妙なポジショニング
4章 大衆インテリの反逆
終章 大学・知識人・ジャーナリズム
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本書には、戦後から現代にかけて学生に対する評価基準が「肩書き重視」へと移行し、雇用の仕組みが安定するにつれて学生の学びの意識が変化してきたという趣旨の内容が記されていました。
学生運動が盛んだった時代のメディアや学習意識、学生生活の様子などが描かれており、現代とはかけ離れた情景が新鮮に映りました。
ただ、自分の学生時代を思い返すと、学びが「効率よく生きるための手段」へと傾倒しているように感じますが、本書からは「教養の正しさ」の定義や、それが何を指すのかが読み取れなかったため、何がどのように「衰退した」のかという具体的なイメージが掴めませんでした。
この点については是非を問いたい。 -
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教養主義の没落と変様、展望と期待が込められた良書である。
従来の日本の大学で支配的だった教養主義は戦前前後1960年代半ばまで、社会の規範となるべく次世代のリーダーになるべく教育を受けてきた。そして、教養主義とは、哲学・歴史・文学などの人文学の読書を通じて人格の完成を目指す態度であり、単なる知識の詰め込みではなく、人格形成や社会改良をも志向するものであった。
だが、時代は高度経済成長期に突入し、日本という国の社会構造が大きく変化を迎えた。教養は広く大衆化し、多くの人が大学へ通えるようになり、従来の詰め込みの知識やエリート意識を高める教養から、コミュニケーションの能力や実践的な教養への応用が期待