竹内洋のレビュー一覧
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ネタバレ本書は、戦後日本社会の知識人や大学生を支えた「教養主義」という独特の文化と精神構造が、いかに形成され、そして崩壊していったのかを、社会学・教育史の視点から丹念に描き出した著作である。
竹内は、日本の教養主義を単なる「偉い本の読書」ではなく、「立身出世を志向するエリートが、人格陶冶を通じて、特権的な知的・精神的地位を獲得しようとする規範システム」として捉える。この教養主義は、旧制高校や帝国大学といったエリート教育の場で、「リベラルアーツ」の読破と、それに伴う「精神的な高潔さ」の涵養を求め、若者に強烈な価値観を提供した。
しかし、このシステムは、戦後の民主化と高等教育の大衆化、そして何よりも「 -
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本書は三宅香帆が、推している本なので、読んでみた。とにかく、米津玄師が、「べらぼうに面白い」と2020年に雑誌『SWITCH』に掲載された小特集で言ったことで、話題になった本なのだ。
竹内洋は京都大学の先生だった。私より上の世代である。教養がなぜ必要なのか?ということと、教養主義は、教養と密接に関連しながら、異なる概念だ。そして、教養主義が没落しているという指摘は、時代によって教養主義も変遷する。
本書は、「教養」という言葉に対する一般的な説教じみたイメージを超えた、社会史としての興味深い分析を展開している。従って、単なる主観的な意見や感情に訴えるものではなく、歴史的および社会学的な -
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教育社会学者・竹内洋による、近代日本の「受験生の素顔」と「受験制度の実相」を剔抉した快作。文庫本なので読み易さが売りなのだが、内容は硬派でアカデミック、加えて作中の指摘は芯をついたものばかり。
竹内氏の著作や論考は、大きく分けて三種類ある。①出身地、階層、学歴そして文化資本(byブルデュー)から見た人物プロファイリング②明治から昭和前期における立身出世を目指すロマン溢れる受験物語の素描③左翼・右翼の政治闘争とその人物像の紹介
①に関しては、どの著作で読んだのかは失念したが、「丸山眞男(山の手・正統エリート)vs吉本隆明(下町・傍流エリート)」や「姜尚中(九州のバンカラ高校・左寄りvs鈴木邦男( -
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ネタバレこの本は教養というものを、歴史や小説などを媒体としながら捉えようとしたものだった。たとえば、石原慎太郎や小説「三四郎」では、教養がどのような文化的な立ち位置だったのか。また、教養を身につけている、身につけようとしている人たちの場面背景などを、データをもとに解説している。加えて、岩波書店という出版社がどのように文化装置として、教養主義に対して機能し、アプローチしてきたかを述べていた。そして、後半には教養主義がいかに没落したか、大衆的な文化や教養(キョウヨウ)が今どのように存在し、これからの教養をどのように捉えるかを考察している。
以下は個人的考察である。出版されたのが、2003年であり、高度情報 -
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本書のいうとおり、戦後左翼にとって幻滅しつつあった共産主義に代わる器が丸山眞男だったとすれば、ものすごい影響力を持つ人物だったのだと思う。いま丸山眞男の評論を読んでも深く感じるところがないので、かつての時代の雰囲気を逆に強烈に感じる。
本書では現代からの視点で丸山眞男に対する違和感が数多く語られる。戦争に反対する社会的クラスと積極的に賛成するクラスを、画一的に論拠なく断定したこと。社会運動を煽るものの、サルトルなどとは異なり自身はそれらに参加しないこと。そして学生運動で自身の研究室が破壊され、学生をナチス以下呼ばわりしたこと。荻生徂徠を近代政治のきざしであるかのように牽強付会に論じたこと。日本 -
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戦後の進歩的文化人の代表として、またE.Hカーの「歴史とは何か」の訳者として有名な清水幾太郎。清水の戦時中の評論の本音と建て前の分析や、著者が得意とする所謂文化人の大衆観の解説に読みごたえを感じた。
清水が著名な割に現在ではあまりピックアップされない理由がわかる。戦後思想界をリードする進歩的文化人の顔や、80年代に入って核武装の可能性を説くタカ派の顔など多彩な顔を持っていた。著者は清水をただの変節漢としてみていない。山の手に屈性した感情を持つ下町出身者として。東大教授の道を中途で断たれた挫折者として。それゆえに、大衆との距離感に執着する芸人として自らの立ち位置を規定せざるをえなかった。芸人の行 -
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ネタバレ著者は、ウィスコンシン大学ミルウォーキー校で犯罪学を講じる准教授で、竹内洋教授(教育社会学)の長女。竹内教授は、第6章「アメリカを『鏡』に日本の大学を考える」を執筆している。
日本の大学行政においては、英米(特に米)の大学制度が普遍的で優れていると妄信する傾向がある。しかし、日本の大学には日本の社会・文化に基づく制度が、歴史的背景の中で不完全ながらも構築されてきており、単純に米国の教育制度の「形」を採り入れれば良いというものではない。アメリカの大学の制度から学ぶ場合でも、その長年の経験と精神と現状(裏側)を学ばなければならない。取り分け、日本では欧米と異なり、企業と大学との連携・信頼の欠如が -
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京都大学名誉教授(教育社会学)の竹内洋(1942-)による近代日本における社会装置としての旧制高校論。初出は中央公論社「日本の近代」シリーズの第12巻の同名書(1999年4月)であり、今回はその初の文庫化である。
【構成】
プロローグ 学歴貴族になりそこねた永井荷風
第1章旧制高等学校の誕生
第2章受験の時代と三五校の群像
第3章誰が学歴貴族になったか
第4章学歴貴族文化のせめぎあい
第5章教養の輝きと憂鬱
第6章解体と終焉
エピローグ 延命された大学と教養主義
「吁、宮(みい)さんかうして二人が一処に居るのも今夜ぎりだ。
お前が僕の介抱をしてくれるのも今夜ぎり、僕がお前に物を言ふのも今 -
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ちくま新書の『○○学の名著30』シリーズの社会学担当は、現関西大学文学部教授、京都大学名誉教授の竹内洋。
【構成】
Ⅰ 社会学は面白い…?
1 バーガー『社会学への招待』-人生は一場の戯れにしても
2 コリンズ『脱常識の社会学』-社会学という透視術
3 デュルケーム『自殺論』-社会の発見あるいは社会学の発見
4 ジンメル『社会学』-社会の幾何学
Ⅱ 近代への道筋
5 マルクス/エンゲルス『共産党宣言』-闘争モデルの原型
6 ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』-近代資本主義と宗教
7 エリアス『文明化の過程』-痰壺が消えた
8 ハーバーマス『公共性の構造転 -
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2003年刊行。職場(大学)で日常的にAIとつながっている時代の教育について語り合い、再読しようと。
教養主義とは、「歴史、哲学、文学などの人文系の書籍の読書を中心とした人格主義」であり、「西欧文化志向を精髄」とし、「本堂を旧制高校とすれば、帝大文学部は、その奥の院ともいうべき場」だった。
「読書を中心に人間形成を考えた昔の学生は、いってみれば漢字の「教養」に生きたが、一般常識や一般経験を人間形成の道筋としているいまの学生は、ライトな教養であるがゆえに、片仮名の「キョウヨウ」に生きていることになる(p239)」
いまの学生はライトな教養さえも必要としない「kyouyou」の時代に生きて