三井美奈のレビュー一覧
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第二次世界大戦後の経済復興を支えたイスラム系移民たちの二世が、ホームグロウンテロリスト(Home-Grown Terrorist)として彼らの祖国の脅威となっている。経済成長が陰りを見せ、ヨーロッパの各国では移民たちを祖国に戻そうと思いこれ以上の移民流入を防ごうと思ったがそれは叶わず、その後増え続け今では各国の10~15%がイスラム系移民が占める現状。
戦後に来た移民たちの子供が出生国で市民権を得て現在二世三世としてヨーロッパで生活をし、約2000万人のイスラム系移民が存在している。
フランスは政教分離政策を取っているため、公共の場での宗教色を排除すべく国民の1割を占めるイスラム教女子の公共の場でのスカーフの着用の禁止を始めた。ブルカ禁止法まででき、ベールを被るというのは女性蔑視の象徴であり、女性の自由と尊厳を重視するフランスの考えでは、ブルカは歓迎されないというもの。フランスだけでなくその他のEU諸国でも禁止法が広まっていく。ベール禁止法の背景にはイスラム教徒の信仰表明に対する違和感と嫌悪感があるのではとまとめられている。
国としては国勢調査で宗教を問うことなどは決してしないフランスだが、国民間での格差や差別は蔓延っており、それがシャルリー・エブド風刺の事件に繋がる。首謀者はホーム・グロウン・テロリストであった。
そして今回の2015年11月のパリのテロ。
イスラム嫌いのフランスや北欧の共通点は国の価値観に対する強烈な自意識があることと欧州福祉国家の代表格であること。自国民への自由と平和を強く願うこれらの国々がイスラム嫌いを強めていっている。イスラム教に対しては宗教の違いというレベルではなく、一つの異なるイデオロギーの存在という認識が広がっている。
まだまだ弱いイスラム教徒の政治参加。この政治参加の低さは非イスラムにとっても好ましいものではない。それぞれがコミュニティを築き過激派の温床を増長するにすぎないからだ。
日本は所得が高いのに難民を受け入れない国として名前がアムネスティインターナショナルに挙げられた。これから低下し続けるであろう日本の人口を考えると「移民」という概念を対岸の火事と考えるのは宜しくない。
他の宗教との共存は、常に相手への「敬意」を払うことから始めるべきである。
出だしから知る事実にぞっとする。でもただ恐れるだけでは問題解決はできない。正しい理解・認識から始め、どのような形で平和に異なるイデオロギー・価値観を持つ他者と共存していくことができるのか身の周りの人間関係で考え実践していくことが私達にできることであるなぁと思う。 -
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[殻の内幕]建国から数十年の間に、度重なる戦争と紛争を重ねつつその生存を保ってきたイスラエル。ハリネズミのように身を守りながら、今や中東の大国として国際社会の行方を決める要因ともなっているその国に赴任した著者が、あらゆる角度から国の外郭をなぞり、内奥に迫った一冊です。著者は、読売新聞の記者として国際畑を歩まれてきた三井美奈。
歴史、地理、外交、経済、社会と幅広い分野を網羅していることから、イスラエルを知る上での格好の入門書と言えるのではないでしょうか。特にイスラエル国内の問題のみにとどまらず、その視点が米国やアジアまで及んでいるところに好感が持てました。記者さんならではと言いましょうか、第一人者に対するインタビューの様子もしっかりと収められており、手に取りやすくその上内容も充実している作品ではないでしょうか。
著者の目線が徹底して現実主義の上に成り立っているのもイスラエルの「等身大」の姿を記述する上で役立っているのではないでしょうか。遠い国のこと故、つい中東情勢は感情論に流されやすい場合があるのですが、イスラエルという国はそもそもそういう次元で成り立っていないということは著者の指摘するように頭に留めておいて良い点かと思います。
〜今は豊かに暮らしていても、いつ何が起きるか分からない。この危機感は、迫害と差別を受けてきた民族の本能である。〜
ホロコースト博物館に足を運ぶとそのことを痛切に感じます☆5つ -
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過激派テロの戦闘員になる西欧人の特徴。定職がない。イスラム教に帰依する前は、麻薬や窃盗などの軽犯罪に手を染めた不良。自由よりも、導いてくれる確かな存在を求めている。p.40
仏の情報当局はイスラム過激派が集まるロンドンを「ロンドニスタン」と皮肉った。ロンドンのイスラム過激派の二大拠点。フィンスベリー・モスク。イースト・ロンドン・モスク。p.56
イスラム過激派の考え方。アメリカ政府だけでなく、一般のアメリカ人も攻撃せよ。アメリカ人は投票を通じて政府と一体になっている。納税を通じて戦争に金を出している。女性や子供が犠牲になってもよい、それは海水の一滴のようなものだ。p.58
仏サルコジ大統領。ブルカは宗教問題ではなく、女性の自由と尊厳の問題。宗教のシンボルというより、卑屈と蔑視の象徴。フランスでは歓迎されない。p.91
パリ大モスクのダリル・ブカクール導師。フランスにはイスラム系が500万人いる。ブルカを着けているのはその内300人くらい。国家が大騒ぎするのはいかがなものか。p.92
サンドニー(Saint Denis)。パリの北隣の都市。郊外(バンリュー)には移民が集まる貧困地域がある。公営住宅が立ち並ぶ。フランスで最も犯罪率が高い。p.103
マルセイユ。アルジェリアから戦争を逃れてやってきた移民が多く住む。麻薬・窃盗など犯罪多発地域。p.115
フランスではイスラム教徒であること見せつけない移民2世だけが歓迎される。p.117
諷刺は権力者に向けられれば、体制批判になるが、社会で苦しんでいる人に向けられれば、相手を不快にさせ偏見を煽ってしまう。週刊誌シャルリ・エブドはイスラム教徒のクアチ兄弟により襲撃され、漫画家ら12人が射殺された。p.128
マリーヌ・ルペン。イスラム教徒は学校で豚肉メニューの給食を拒否したり、授業中に祈りの時間を求めたり、イスラムはフランスの国是である世俗主義に合わない。マリーヌは集会からスキンヘッドのネオナチを締め出し、選挙では女性や若者を積極的に起用した。p.169
英のイスラム原理主義者。民主主義は神の法を犯す。イスラム法だけが英にとって唯一の道。p.191 -
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イスラエルという国の基本的な考え方が良く分かる本。常に迫害を受けてきた歴史から、自分の身は自分の身で守る、やられる前にやるという意識が徹底している。平和ボケした日本とは考え方が根本的に違う。
・全国民の2%以下しかユダヤ人がいないアメリカが、あれほどまでにイスラエルを支持する理由。米国内ユダヤ人に富裕層が多いのも一つだが、政治的な力(対立する候補を徹底的に追い込んで落選させる力)を持つAIPACというロビー団体の存在も大きい。
・ユダヤ教の嘆きの壁(ユダヤ支配のソロモン王の時に建設されたエルサレム神殿が、バビロニア帝国とローマ帝国により破壊された跡)、イスラム教の岩のドーム(ムハンマドが昇天した地)、キリスト教の聖墳墓教会(キリストが十字架にかけられた跡地)、3つの宗教の聖地があるエルサレム。 -
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異なる宗教は共存できるのか(イスラム教と、キリスト教)
イスラム抜きに、今の欧州は理解できない
20世紀は、ユダヤ教と、キリスト教、21世紀に入っては、イスラム教の影響も、3大一神教が
中東を発信源として、欧州を揺さぶっている
キーワードは、テロ、移民、文化の衝突、融合しない宗教、移民受け入れに伴う社会福祉費用の増大だ。
気になったのは、以下です。
・建国を宣言したイスラム国は人工増強策に女性を必要とした。男性戦闘員と結婚させ、次世代テロリストを産ませるためだ
・結婚できる歳を9歳としたのは、ムハマンドの妻アイシャが、6歳の時に嫁ぎ、9歳で性交したとの聖典の記述に由っている
・中東にわたり、テロ組織の戦闘員になる西欧人には、いくつかの特徴がある。定職がない。麻薬やかっぱらいなどの軽犯罪に手をそめた不良だったなど
・盗聴や通信傍受で多量データを収集しても、そこから必要な情報を引き出す能力がないと意味がない。本当に必要な情報をよりすぐり、テロリストを結ぶ線をどう見つけるか、分析力が必要だ
・聖戦や抵抗運動を志すイスラム教徒は自国やあらゆる場所で、米国に対する戦いに参加することができる。
・欧米人なら、雑踏にまぎれやすい。テロ犯罪歴がない小者なら、捜査当局にマークされることもない。目立たないように、細胞はできるだけ少人数がよい。
・テロリストの出現は英国政府を震撼させた。270万人のイスラム教徒がいる、多くは、移民2世、3世だ。
・イスラム教徒たちが西欧にやってきたとき、彼らは希望に満ちていた。西欧は第2次大戦後の経済復興期にあたり、産業を支える労働力として、南西アジアや北アフリカからくるイスラム教徒たちは歓迎された
・西欧で生まれた移民の子たちは、出生国で市民権を獲得した。現在は、2世、3世だ。
・イスラム教徒はいまだに、フランスでよそ者扱いです。我々は人種差別撤廃に努めている、という人たちも、イスラム教徒が信仰を実践することを嫌うのです
・西欧ではイスラムとの関係で2つの異なったアプローチがある
①同化主義:フランスやドイツのように、同化、をもとめ、移民たちに自国の価値を植え付けようとする考え
②多文化主義:英国のように、さまざまな民族集団が独自の宗教、習慣を維持しながら、併存を目指す考え
・シャルリ:漫画をつかったイスラムへの風刺
仏誌 リベラシオン、ルモンドは、ムハマンドの風刺画をそろって新聞に掲載した
米国は掲載に慎重、ニューヨークタイムス、AP通信、CNNらも報道を見送った
日本も、読売、朝日、毎日などの主要全国紙も掲載を見送った
・ドイツの積極的な移民受け入れ政策:メルケルの方針には、人道的配慮以外に、人口減少への危機感という思惑もあった
・中東からドイツへ向かう移民の群れが、その通過国に大きな影響を与えてきた
・欧州では、難民を受け入れるべきとの声と、イスラム人口急増、移民の流入を不安視する声があがっている
・まったく異なる文明の国から、ものすごい数の移民が波のように押し寄せている。その習慣や伝統は、我々とはまったく折り合わないものだ
・かわる北欧の寛容、国民と同化する移民は歓迎するが、イスラム教徒は国民が培ってきた価値観に溶け込まず、福祉を食い物にしているだけだと告発した
・イスラム嫌い政党が伸長するフランスや北欧には共通点がある。それは、福祉国家の代表格である上に、国の価値観に対する強烈な自意識をもっていることだ
・移民嫌悪の根っこは、経済や、福祉の負担だけではない。価値観の違いが大きい
・各国政府は一方で、イスラム教徒の若者にアピールするあめに、若くて有能な政治家を要職に起用する努力をしている
・日本が移民受け入れに消極的なのは、よく知られている。外国人が来れば、賃金が下がる、得をするのは大企業だけ。治安悪化をまねく、日本に多民族主義は合わない
目次
はじめに
1 過激派志願の若者たち
2 ホームグロウン・テロリスト
3 共存の葛藤
4 立ちはだかる壁
5 シャルリー・エブド事件の衝撃
6 イスラムと欧州政治
ISBN:9784106106491
出版社:新潮社
判型:新書
ページ数:208ページ
定価:720円(本体)
発売日:2015年12月20日 -
Posted by ブクログ
東京裁判、判事の中で最年少、オランダのレーリンク、遠い東洋の国で多数派判決と国からの圧力に悩みつつ独自意見を提出する。一人の法学者の日記から見たもうひとつの東京裁判。
東京裁判の管轄権に異議を唱え、文官の5被告の無罪を主張する独自意見を提出したオランダ人判事の日記。妻との確執、単身での来日、次第に日本の文化に魅力を感じていく。連合国でも英米法と大陸法の考えの違いからの意見の相違。パルとの友情などが情緒豊かに丹念に描かれている。
国際法と戦犯裁判の位置付け、母国からの圧力などに奮闘する様子が伝わってくる。
今さら東京裁判史観を否定するつもりはないが、事後の世界平和を願って真摯に活動した法律家がいたことは、どこか救いがある。
温かい気持ちになれた一冊でした。 -
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イスラエルについて引き続き学んでいる。
読んだ順番が良かった。
実際にイスラエルに行き→西加奈子『i』→遠藤周作『死海のほとり』→山井教雄『まんが パレスチナ問題』、で、本書。
土地勘、興味、キリスト教について、パレスチナ問題の概要を知った上で、イスラエルについて政治ふくめてどっぷり知る。
やっとすんなり読めるようになったのは、この読んだ順によるものと思う。無知すぎて。
アメリカ社会・政治(ロビー活動含め)とイスラエルの関係。イスラエル人の今、などなど。
恐ろしい気持ちになりつつ。勝手だな、アメリカ、イギリス、、、と思いつつ。
それでもやっぱりまるっと「イスラエル」とか「アメリカ」とか「パレスチナ」とか「ユダヤ人」とか括って語ったり考えたりすることは慎みたい、と思う。
括って考えたりすると、まとめて簡略的に語り、短絡的に考え、悪い方向に向かいやすい。
その括りの中にいろんな人がいて、個別に交流すれば、ただの優しい、面白い隣人で、、、と言うことを、忘れずにおきたい。
何事も括っちゃダメだ。
と、改めて思う。 -
Posted by ブクログ
2010年刊行。著者は読売新聞でエルサレム支局長を務めた記者。
イスラエル=なんとなくブッ飛んでる国くらいの個人的認識だったが、そんな定性的な感覚ではなく、多くの取材を通してこの国のリアルを描く。ユダヤ人票にコントロールされる米国議員、核開発・武器購入に伴う国際社会との駆け引き、ユダヤvsパレスチナ…読者を引き込む構成。
著者はイスラエルのことを「自分たちの国はら自分たちで守るしかない」、「ハリネズミのように身構える国」と書く。イスラエル独自の危機管理手法はユダヤ人迫害の歴史から形成されてきた。今世界で蔓延っている保護主義の先例とも言える。 -
Posted by ブクログ
先に読んだ「言葉と爆弾」とともに、日経新聞で紹介されていた。日本ではその深刻さがよくわからなかったが、本書を読んでいずれ日本でも向き合わなくてはならない問題なのだろうということがよく理解できた。
「イスラム女性を研究するスイス・フリブール大の助手ジェラルディーヌ・カシュトに疑問をぶつけてみた。すると、『女性の多くは抑圧された人たちへの共感が強い。矛盾に満ちた社会に嫌悪感を抱き、正義の社会を作りたいと思っている。それで、『別のすばらしい世界がある』という過激派の訴えに引き寄せられてしまうのです』という答えが返ってきた。」
「欧米生まれの過激派が、シリアやイラクでテロ活動に加わった後、祖国に舞い戻ってくると、彼らは地雷のような脅威となる。アラブ人テロリストと異なり、母国のパスポートを使って、人目を引かずに動き回ることができるからだ。土地勘に優れ、人脈も築きやすい。」
「…『ハイブリッド』と呼ぶホームグロウン・テロリストは、そこから派生した。
彼らは中東への渡航経験すらないのに、モスクの説教、あるいはインターネットやソーシャルメディアの情報を通じて過激思想に共鳴し、自らテロリストになる。あるいは、自ら中東に出かけて行って、訓練を受ける。自分で狙いを定め、自力で武器を集めてテロを実行する。これといった前科がない上、小集団か、時には単独行動する一匹オオカミも多い。中東のテロ組織との関係が見えにくく、情報当局が危険性を把握するのが極めて難しい。」
「ムハンマド風刺画をめぐる欧米の感覚の違いは、宗教に対する熱さの違いかもしれない。
英国では毎週教会に通う人の割合はせいぜい一割、フランスでは5%にすぎない。これに対して、米国では国民の4割が毎週、教会やシナゴーグなど礼拝所に通う。米国では宗教は国民それぞれの価値観に根差し、社会や政治に影響力を持つ。」