和田純夫のレビュー一覧
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2022年ノーベル物理学賞が、ベルの不等式にまつわる量子力学の実験的検証とその成果に与えられたことは記憶に新しい。
一般に「量子もつれ」と呼ばれる、私たちが日ごろ当然のように理解している物体の存在の仕方を根底から否定するような、微視的空間における存在の振る舞いかたが遂に実験的に示されてしまった。
これは、私たちが日ごろ感じている存在に対する「在る」という認識が根本的に誤りであることを示唆している。少なくとも微視的な(つまりミクロレベルでの)世界では。
しかし、私たちの身体も身の回りのモノもすべては無数の原子の組み合わせから成っている以上、
私たち自身の存在のしかたもまた量子力学と切り離すこと -
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総じて、前半は前期量子論の復習になるように思われた。高校物理だと、普通、一貫校でない限りは、高校3年の2学期頃に行うと思われる、原子分野(大概が前期量子論)であるが、時間がないので大概飛ばしがちであり、難しいテーマであるため体系的に学べないことにより微妙に勉強しづらい分野でもある。古典力学や古典電磁気学のようにあまり時間をかけて履修しないので、こういう本で復習するのもありかと。それにしても、電子の粒子と波の二重性については観測者の出方によって変わるということが信じがたい方もおられると思うが、その解釈については見ていないときは確率的な波として存在し、見ると一つの点に収束し粒子としてふるまうという
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[ 内容 ]
ニュートンが17世紀に著した『プリンキピア』は、運動の法則や万有引力を基に自然界の仕組みを明らかにし、近代科学の出発点となった。
図形を使った幾何学的な手法で力学の様々な疑問を証明したニュートンのアプローチは、現代人が読んでも素晴らしく、その天才ぶりに驚嘆させられることだろう。
科学史上、最も有名な本のひとつである『プリンキピア』の醍醐味を味わう1冊。
[ 目次 ]
第1部 プリンキピアとは(プリンキピア誕生まで 知識に関する時代背景 「世界の体系」への道?プリンキピア第3編前半)
第2部 プリンキピアの諸定理(用語の定義と運動の基本法則 第1編Section1 準備 第1編S -
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本書は、古典力学から量子力学に至るまでの内容を、それらを説明する主役としての数学的視点に立って、全体としては理系専攻の大学学部生に読みこなせるようなレベルで説明されている。ここで、全体としてと言ったのは、前半部分と後半部分で難易度に差があるからである。言うまでもないかもしれないが、近代科学黎明期として位置づけられる古典力学はガリレオガリレイ、ケプラーの時代からである。彼らの仕事は現代では高校生が学ぶ範疇の物理・数学でかなり理解が可能である。一方、最終章で取り上げられている量子力学は、誕生から今尚100年の経過を見ていない。一定の完成をみている古典力学よりも、さらに発展途上にある。この分野は大学
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偉人の書いた有名な著作を、ここまで簡潔にまとめられているのに感嘆しました。ページ数も250ほどと短く、掲載するべきところとしないところの区別がはっきりとしていて、とても好感です。
ところどころ、文が変だったりボールド体が途中で切れてたりしていて不自然なところ(校閲ミス?)はありましたが、そんなことを差し引いても大満足です。ちなみに、解説を読んでも「ん?それ成り立ってるか?反例ある気がするなぁ」となる命題もありました。私の知識不足かもしれません。
以後、内容について。
冒頭にも述べられていたように、慣性と力の作用を2つの力として作図する方法が面白いなと思いました。特にこの作図の仕方は、全編通 -
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多世界解釈派の著者が、コペンハーゲン解釈他の歴史的推移を踏まえて解説。異なる状態が共存するということを乗り越え、各状態がデコヒーレンスが成り立ち干渉しなければ現状の観測データからもっとも説明しやすいとする。
以下Wikipedia
コペンハーゲン解釈といっても差異はあるがノイマンが1932年に行った定式化は、
量子系と観測者(観測装置)を分離する。2つの境界はどこに引いてもいい。
量子系の状態は、観測していないときはシュレディンガー方程式に従う
観測により波動関数が収縮して、1つの測定値が得られる
どの測定値が得られるかは確率的であり、ボルンの規則に従う
多世界解釈
シュレディンガー方程 -
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量子力学の本を読んだり勉強したときに、例えば二重スリットの実験結果を説明するのに、電子の状態は波動関数で表されて確率的な広がりを持っている、というところはまあなんかよく分からないけどそうなのかな、と思えなくはないのですが、ただその波動関数が測定をすることによって一つの状態に収縮する、というところがさっぱり分からなくて、いったい波動関数の収縮ってなんなんだい、と思ってました。この考え方をコペンハーゲン解釈と言うのだということは割と最近知ったのですが、本書はこの、現在量子力学の解釈の標準と言われているコペンハーゲン解釈に対抗する、多世界解釈についての本です。難しい数学は使わずに、分かりやすく多世界
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量子力学の何が不思議で、観測事実は何であるかが ある程度系統立てて説明されていて、一般向け入門書としては良い本だと思う。
コペンハーゲン解釈と多世界解釈のどちらが良いかはさておき、粒子と波の両方の性質を示す実験結果から、辻褄の合う理論体系をつくるのは大変だ!
・波の収縮:コペンハーゲン解釈では、人が見たら(認識したら)波の性質はその時点で消える
・エンタングルメント:一つのミクロな粒子が二つに崩壊すると、二つの粒子は必ず反対方向に飛び出す。片方の粒子の方向を観測すれば、もう片方の粒子の方向も判明する。
・デコヒーレンス:多世界解釈では、観測後も波は収縮せず、あらゆる状態は共存する。しかし観測し -
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多世界解釈でデコヒーレンスが発生する時に、コペンハーゲン解釈での波の収縮が起きると考えれば、どちらも同じだと思ったが、デコヒーレンスは、干渉がなくなるだけで、どちらかを選択するわけではないので、波束は必ずしも収束しないらしい。とはいえ、どちらの経路を通ったかは決まる。多世界解釈が解釈者の立場で世界を見、コペンハーゲン解釈は、観測者の立場で世界を見ているのだから、解釈に違いがあって当然で、どちらも正しいと思った。
シュレディンガーの猫問題は、核分裂が検出機で検出された直後に、猫の生死が確定(デコヒーレンスまたは波の収縮)するのであって、人間の認識とは関係ない。
Qビズムについては、よくわから -
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量子力学は一般常識では理解困難な現象を取り扱うが、その解釈の仕方に人間の認識に伴って波の収縮が起こったという実証主義的なコペンハーゲン解釈と、観測者としての人間の存在など関係なく観測機器も含めた宇宙全体が量子力学の対象であるとする実存主義的な多世界解釈があるという。
本書の著者は後者の立場だが、理論の中核に認識したかしないかという人間の主観を位置づける前者よりも、シュレジンガー方程式という中核定理を以って全てを説明しようとする後者の方が純粋理論的に真摯で自然だとする著者に共感する。
量子コンピュータや量子通信の元となる量子もつれとの親和性も高い後者にいずれは収斂しそうにも思うが、キリスト教 -
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決して易しい内容ではないが、量子力学について丁寧に解説されており、量子力学自体の入門書としても分かりやすい。
量子の振る舞いは、ニュートン力学が通用するマクロの世界の住人である人間には中々理解しにくいが、その不思議な現象はコペンハーゲン解釈と言われる説明が一般的で、他の量子力学の入門書でもこの説明がメインになっている。これに対し、著者は多世界解釈と呼ばれる別の解釈を採用しており、こちらの方が無理がないのだと主張する。たしかに、場面によってはコペンハーゲン解釈より良いようにも思われるが、世界が分岐するという考え方は、あたかも無限のパラレルワールドが現れるSF小説のようで、こちらも直観的には納得し -
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量子力学の副読本
標準的な量子力学の教科書を初めて読むときに様々な疑問が湧き出てくるのは自然なことだ。しかし多くの標準的な量子力学の教科書では計算の仕方については詳しく書かれているが、多くの学生良く分からないと疑問に思う概念的な事柄について詳しく説明されていないことが多い。
そのキャップを埋めるのがこの本である。故に量子力学を初めて学ぶ学生が教科書と共に読む本としてお勧め。