松永K三蔵のレビュー一覧
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『バリ山行』で芥川賞を受賞した松永K三蔵さんの「不条理な可笑しみに彩られたデビュー作」
確かにね。主人公が建築指揮している倉庫の隣家のクレーマー男も、主人公に押し付けられた犬が本性を出してくる様子も、主人公を取り巻くあれこれが全部なんか不条理。でも不気味さではなく、それらに戸惑いつつ苦労している主人公はどこか滑稽です。
ちょっと理不尽な小さな会社や、妙に職人気質な脇役。さらに主人公がきつい運動で自分の存在感を確認しようとする事など、『バリ山行』との類似点も多い。
まだ、小説はこの2作だけの様です。まあ、じっくり面白い小説を書いていただければ。。
ちなみに松永K三蔵さんのHPに以下の様な文章が有りました。ナルホドネ!
【オモロイ純文運動】
純文学はおもしろい。
純文学はひらかれていて、オモロイのだということを世間にわかってもらう文学運動。
運動と言ってもその活動は、ただ書くだけ。
オモロイ純文を。 -
Posted by ブクログ
ストーリー的な展開や面白さはないが、リアルに仕事と登山を描いた小説だった。
特に、最近の登山ブームにより失われたものそして登山をする私も自ら感じている虚しさを明確にして描くのではなく、ただありのままを描いていたのがすごく刺さった。登山客の著しい増加によりどこか観光地化され、喧騒な登山、紙の地図で自分でルートを考えながら歩かなくてもアプリや整備された登山道を歩いていれば頂上に着いてしまう登山、もはやブランド品とも言えるほど高額でオーバースペックなウェアに身を包みそれらを身につけて所有することを楽しむための口実としての登山、写真を撮って誰かに共有するための登山。登山の楽しみ方は人それぞれで別にとやかくいう必要はないが、登山とは何か?その本質を考えた時に想像するものとはかけ離れたものになっている登山について描かれていた。そういった意味で静かに自分で考えながらサバイバル的に行う登山はバリエーションルートでしか味わえないのかもしれない。
私は登山道に限りかなり難所も行ったが、結局どこの難所もちょうど良いところに窪みや持ち手があり、ルートを外れないようにただ謎るだけである。もちろん命の危険は伴うが2,3年登っているとなんとなく味がしなくなってしまった。私が味がする登山を行うにはバリに行くしかないのかもしれない。そう考えてしまう話でもあった。バリをする気はないんですけど、、 -
Posted by ブクログ
2024年に芥川賞に選ばれたということで、
初めてこういった受賞作を読んでみた。
バリ山——聞いたことのない単語だが、舗装されていない危険な登山ルートのことをバリエーションルートというらしい。
建築会社で働く主人公と、そこで働く人たち、ちょっと変わった先輩でバリ山ばっかり登っている妻鹿さんの話。
関西に住む私にとっては馴染みのある地名がたくさんでて嬉しかった。
山の話って読んだことなかったし、登山の楽しさや危険さなどの描写がうまく、面白かった。
妻鹿さんと、バリ山との出会い。最後はちょっと切ないけど繋がりが見つけられてよかった。
文章表現としては純文学に分類される小説なので、
常用漢字ではない難しい漢字や表現が多く、”文学”が好きな人じゃないとちょっと読みにくいかも。
例えば「葉叢がドーム状に〜」とか言われてネット検索せずに状況想像できます??葉叢(はむら)って読むらしいですが。
難しい漢字が出るたびに調べるのも面倒でそういう表現は雰囲気で読み飛ばしてしまった。その辺がイメージしやすいともっと物語に入り込めるんだろうな。
他の人の感想を読んでないので、私の国語力が極端に乏しく、世間一般の評価ではないのかもしれないけど。
芥川賞より私は本屋大賞やメフィスト賞のほうが読みやすくて合っているようだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ主人公の兄に選ばれなかったカメオと、カメオに選ばれなかった主人公。一人と一匹が同じ様に野山を駆ける。という構図が良い。
正直に言えば、私が「犬を捨てる話」で思い出すのが太宰の畜犬談。あれは別れ際が凄く好きだったため、この二人はどうなるのだろう、と勝手にハードルを上げてしまっていた。さらりと終わる2人の関係性に少し消化不良を覚えてしまった。
カメオの飼い主である亀夫の語られない背景が気になった。
自分を工事現場の人間だと思い込んでいたこと、まともに働いていないこと、以前は陸上自衛隊に所属していた事、それでも犬には良いものを食べさせていたことなどが語られる。本作では悪役でしかなく、因果応報も食らわずに死んだ(死が天誅とも言えるかもしれない)ため、それ以上のことは教えられない。けれどその存在感はあまりに大きく、読み終わった後になんなんだろうアイツ...というノイズとして残った。姉も良い人間とは呼べない。
カメオ
P27
西日がそう 見せるのか 近くで見ると 短い毛先に非が反射して 乳白色の犬は 胴体のうねりに沿って 光沢を帯びているように見えた。
P91
弾かれたピンボールのように 向きを変えながら私の存在を無視し身を震わせながら 全速力で駆け回った。
・ピンボールに例えるのが好き。一瞬で想像ができる。
P92
犬は木の葉が吹き散る草原の中を駆け回った。時折 街灯の明かりに体毛が光り その下の背中の筋肉が透けて見えた。
P141
EVO 3を先頭にチームの皆も追いついてきた。そして私の叫び声を何かの掛け声とでも思ったのか、頂上を通過しながら皆、口々に「カメオォー!」「カメオォー!」と叫んだ。
・主人公の思いの熱とは逆に、周りの反応はシュールで良い。