松永K三蔵のレビュー一覧
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ネタバレ「バリ」の意味は「すごい」とか「めっちゃ」だと思っていましたw。
六甲山が舞台でこの近辺に住んでいるので、知った地名がいくつも出てきました。私は車で行く派ですが…(六甲高山植物園とか)。
妻鹿さんとの「バリ」の描写は気が付けばのめりこんでいました。六甲山にはロープウェーもありますが、その下に見える景色は結構危険だったんですね。
「バリ」に同行した主人公は妻鹿さんにあたってしまうのですが、その後「バリ」に目覚め、妻鹿さんの気持ちが少しわかるようになる。妻鹿さんとはもう何もないのかと思われたその最後に、かすかな繋がりが提示され、すこしほっこりしました。 -
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多くの読者が言ってるように“芥川賞なのに読みやすい“ということ。確かにそうでした。それはとても大切なこと。
会社勤めを経験している人ならなおさらここに出てくる会社への不安、心配、人員整理、などに翻弄される気持ちがよくわかると思います。
芥川賞は純文学の中で、今まで誰も書かなかった分野を開拓した小説に与える賞だと思いますので、この小説は山岳小説と仕事小説の融合という点で新しいフェーズを感じます。
バリ山行とは、正規の登山道を外れて道なき道を行く「バリエーションルート」を指します。主人公がバリ山行しながら、仕事や人との関わりの本質を浮き彫りにしていきます。
やや難読漢字が多く、せっかく良いペースで読んでいても、都度AIに描画して尋ねなければならないのが難点でした(でもこれは私だけかもしれないので気になさらないでください 笑 )
2024年上半期 芥川賞受賞作
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第171回芥川賞受賞作。
中小企業ならではの微妙なパワーバランス、業績悪化への不安、そして良くも悪くも「まぁ、会社とはこんなもの」という諦めに似たリアルな空気感。この息苦しい社内で、ひとり浮いている妻鹿のとっぴな行動が、物語の軸となっていく。
ちなみに、作中に出てくる関西弁の「自分」は、一人称ではなく「あなた」という意味。関西地方以外の方が読むときは、この言葉のニュアンスに注目すると、より登場人物たちの距離感がリアルに伝わってくるはずだ。
作中で突きつけられる、「本物の危機は山じゃないですよ。街ですよ! 生活ですよ。」というセリフが胸に刺さる。
道なき道を行く「バリ山行」は、現実の登山としては遭難の危険もあり、他人に迷惑をかけかねない行為である。普通なら「ダメでしょ」と一蹴したくなるところだが、妻鹿の行動は単なる無責任な現実逃避とは切り捨てられない。
むしろ、あの生きにくい地上の空気から抜け出して、バリ山行をひとりで「楽しむ」ことでしか、彼は自分が本当に生きているという実感を得られなかったのかもしれない、と感じる。
それを証明するかのように、ひとたび山中に足を踏み入れた時の、妻鹿のなんと生き生きしていることか。
街での死んだような佇まいからのギャップ、五感を研ぎ澄ませて道なき道を突き進む圧倒的な熱量。
そして、この小説の本当の深みは、最初はそんな妻鹿を冷ややかに見ていたはずの主人公の波多もまた、彼が山で見せるその強烈な「生きた心地」に、いつしか抗えずに魅せられてしまう点にある。
システムから逃れて自分の命の主導権を奪い返す瞬間に、どうしても引き込まれてしまう。人間の切実な欲求を描いた、深く印象に残る一冊である。 -
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倉庫の施設保全担当である高見のもとに、本社から新たな倉庫の建設を命じられた。必ず期日に間に合わせなければならない高見の前に、不恰好な白い犬を連れた近所の男:カメオが立ちはだかる。彼のクレームはヒートアップし、現場に座り込み始める。犬を隣に座らせて———
ただただ面白かった。
人間のカメオの死によって、犬を預かることになった高見。彼の義理堅さには脱帽する。押し付けられた犬を、そうするしか無いものの、ペット禁止の自宅へと連れ帰り、その日のうちに数々のペット用品を購入する(餌とかお皿とかだけでなく、おもちゃとかも! )。そんな優しい彼は、犬を無意識のうちにカメオと呼び、なんだか愛着が湧いてきてしまっているのが面白い。心の中で不恰好だとは思いつつも、しばらくの間一緒に暮らしている不思議な日常は、見ていて楽しかった。 -
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『バリ山行』を気に入った母にプレゼントするために買った。プレゼントの前に読む。
『バリ山行』と同様の読み応えに久々に浸れた。決定的な破滅でもなく、確実な安心感でもない、でも何か吹っ切れたような読後感が同じだ。これは、母も気に入るだろう。そもそも、出てくる地名がいちいちその辺の、よく行く、よく目にする地名だからより身近に思えるのがさらに良い。
タイトルの『カメオ』。あの大理石でできたcameo、装飾品の女性の横顔的な、ペンダントトップのような、それを想起させるのに犬の絵が表紙ってどう言うことだろうかと思いながら読み始めたが。cameoとは全く関係なかった。