松永K三蔵のレビュー一覧
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『バリ山行』を気に入った母にプレゼントするために買った。プレゼントの前に読む。
『バリ山行』と同様の読み応えに久々に浸れた。決定的な破滅でもなく、確実な安心感でもない、でも何か吹っ切れたような読後感が同じだ。これは、母も気に入るだろう。そもそも、出てくる地名がいちいちその辺の、よく行く、よく目にする地名だからより身近に思えるのがさらに良い。
タイトルの『カメオ』。あの大理石でできたcameo、装飾品の女性の横顔的な、ペンダントトップのような、それを想起させるのに犬の絵が表紙ってどう言うことだろうかと思いながら読み始めたが。cameoとは全く関係なかった。 -
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『バリ山行』で芥川賞を受賞した松永K三蔵さんの「不条理な可笑しみに彩られたデビュー作」
確かにね。主人公が建築指揮している倉庫の隣家のクレーマー男も、主人公に押し付けられた犬が本性を出してくる様子も、主人公を取り巻くあれこれが全部なんか不条理。でも不気味さではなく、それらに戸惑いつつ苦労している主人公はどこか滑稽です。
ちょっと理不尽な小さな会社や、妙に職人気質な脇役。さらに主人公がきつい運動で自分の存在感を確認しようとする事など、『バリ山行』との類似点も多い。
まだ、小説はこの2作だけの様です。まあ、じっくり面白い小説を書いていただければ。。
ちなみに松永K三蔵さんのHPに以下の様な文章が有 -
Posted by ブクログ
バリエーションルートの内容が、かなりリアル。顔に絡みつく蔦、落ち葉に足がめり込む感触、崖にへばりつく恐怖などを今、この瞬間、体験しているようだった。バリをやっていなくても、ある程度低山を登ったことがある人なら共感できると思う。
また、すべてを忘れるために山へ来ているのに、いつの間にか仕事の不安が頭から離れないところも、「ある、ある!」と頷いてしまった。
芥川賞の割には読みやすいし、登山経験がない人でもサラリーマン経験者ならば、興味深く読めるはず。
ただし、時間を忘れて没頭するほどドキドキもワクワクもなかった。また、読めない漢字が多い。なので満点にはならなかった。 -
Posted by ブクログ
法律とか、社会規範とか、社内規定とか、明文化されたルールから取り溢れた問題への対応を間違えて、どんどん出口が塞がれていく話。
設定されているルール無視で怒鳴り込んでくるクレーマーや言葉の通じない奴がノルマの障壁になっているときに、ルール通りに進めていると締め切りに間に合わないので、ルールからは少し逸脱するがその方がコストがかからずに解決できる、っていう方法があると、現場としてはそれを選ばざるを得ないときがある。
とても小さな嘘を吐いてしまうようなものだ。
でもその嘘と現実の整合性を保つために立ち回っていると、さらに厄介ごとがまとわりついてきて、仕事のためについた嘘に気がついたら自分の私生活が -
Posted by ブクログ
ネタバレ会社組織の中で誰とも連まず、黙々と仕事をする妻鹿は、山歩きもコースを外れて道なき道を進む「バリ」を好む。
どうしてそんな危険な登山を好むのか。私にはわからず、妻鹿が得体の知れない人物のように思えたが、終盤、そんな見方が逆転した。
仕事も山も、周囲に決められるよりも自分で決める。自分の信念の下に生きる方がスッキリする。
潔いし、カッコいい。どんな条件でも生きて帰って来るバリ山行ができる妻鹿なんだから、生活もどうにかなるでしょ、と思うのはあまりにも楽感的過ぎるかしら。
そしてしがらみだらけの羽多はどうするのかなぁ。バリの面白さに気づいたようだが…。
含みを持たせる終わり方だった。