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Posted by ブクログ
いやあ、面白かった。
芥川賞「バリ三行」に続き、松永K三蔵さんのデビュー作。
ある時、急にある建築現場の進捗管理をすることになったロードバイクが趣味の主人公。
しかしその建築現場の隣には厄介なクレーマーがいた。
その名も亀夫。
やんなるほど厄介だが、その男の傍にはただただおとなしく毎日を過ごしている見た目の変わった犬がいた…。
そしてある時ひょんなことから、主人公はその犬の面倒を数日見ることになる。
仕事のストレスは毎日のように振りかかり、住んでいる家はペット飼育禁止のマンション…
バリ三行と同じく読みやすくテンポよくすいすい読めた。
最後主人公と犬はどうなるのか
犬になんだか自分の思いを託しているようにも見えるし、最終盤の主人公の逡巡は、必死に何か言い訳を探しているようで、犬のことについてなのか、自分自身についてなのかわからなくなってくる。
自分で決めたことの責任の負いたくなさ
それを犬に賭けるあたりが、この主人公らしさでもあるが、人生のある時そうしたくなる瞬間もあるよなあと、なんだかおもしろかった。
でもわかるなあとも思う。
あっちいったりこっちいったりウロウロうろうろ。
考え疲れてええいって感じ。そこら辺が普遍的なテーマに感じておもしろかった。
犬との関係を通して、こういうことを書き切るのはすごいなと思った。
そして同時に沸き起こる犬への期待
「本来の自分の種が持ち得る力」への期待
「私は私の危うい幻想を捨てきれなかった」
犬への期待は実は主人公、自分自身への期待のようにも感じたし、まさにその自分とは、この作者自身のようにも感じた。会社員の傍ら挑戦したデビュー作。小説家としてやっていけるかの不安と期待。
そういうのが読んでるこっちも自分事のようにも感じてきて、自分への期待も込めて
カメオーーー!!と叫びたくなる読後でした
疾走感もよかった♪
またいつかもう一回読みたい
カメオー!
追記◇
なんか子育てみたいだな
可能性にかけて、それがうまくいかない不安もあるけれど、何がいいかもわからない。よくよくこの可能性も見極めて、その子に判断を任せる。任せたあとは行けーと。
この主人公はいい飼い主だったと思う。
Posted by ブクログ
■はじめに
一気読みだった。140ページという中編の分量もさることながら、何より著者の文体が読み手を離さない。
純文学にありがちな、内面へ内面へと沈み込む心象描写を、あえて前景化させずに、状況・行動・やり取りの積み重ねを通じて葛藤を遺漏なく描く。
キビキビとしてソリッド。冷たくもなく、ハードボイルドにも偏らない、絶妙なバランス感覚が「一気読み」へと導いたと見る。さすがは「オモロイ純文運動」を提唱するだけあります!
■内容&構成
①前半─「お仕事小説」としての顔
物語の前半、正確には1/3余りは建設現場を舞台にした、きわめて現実的な「お仕事小説」として展開。
ここでの主役は隣人クレーマー〈カメオ〉。現場に日常的に侵入してくる“厄介な存在”。連日のクレーム、仔犬同伴での抗議、挙句は作業員のラジオ体操への参加。
相対する現場責任者の主人公は、感情を爆発させたところで、正義を振りかざしたところで、それは相手の思う壺として割り切り、仕事として対処し続ける。
ここで描かれるのは、日々直面する「理不尽」と「やり過ごし」の感覚だ。正面衝突を避け、摩耗しながらも業務を遂行する。
②転換点─偶然の「解放」
そんなクレーマーが、ある日突然、急死。前半の物語は、ここで一度、終わったかのように見える。主人公は〈偶然〉によって、厄介事から解放される。でも、その解放にはカタルシスを伴わない。
むしろ、次なる局面への、静かな助走に過ぎなかったことが、次第に明らかに。
③後半─「人間小説」への変貌
クレーマーの元に残された仔犬を、行きがかり上一旦ペット禁止の自宅マンションで預かることになった主人公。
ここから物語は、「お仕事小説」から、明確に「人間小説」へと舵を切る。
仔犬は成長とともに徐々に獰猛さを帯び、近隣住民もその気配に気づき始める。息をひそめる生活、常に背後を気にする感覚。
ここで描かれる緊張感は、外敵との対峙ではない。自分で引き受けてしまったものから、逃げられなくなる感覚。
前半が「仕事としての対処」なら、後半は「人間としての選択」を突きつけられる。
■感想
物語後半、主人公は振り回され、追い立てられ、いよいよ袋小路へと追い込まれていく。選択肢は狭まり、時間だけが過ぎていく。
著者は、刻々と悪化する状況描写を畳みかけるように描く。「さぁ、どうする?」「GOする!」と現実にはそんな簡単にはいかない。この辺りから、読み手も息苦しさがじわじわと押し寄せる。
そう、前半が〈偶然の解放〉なら、後半は〈意図的な解放〉。ただ、その選択には、正誤の2極論では片付けられないものがあるだけに厄介であり、懊悩する。
■最後に
哀れさと切なさは、近縁にある。
逃げ切れない状況の中で、最善でも最悪でもない選択をしておこうとする人間の弱さ。本作は、その一点を、過剰な説明も感傷もなく、静かに、しかし確実に描き切る。
短い小説の中で、お仕事小説として始まり、気づけば人間小説へと変貌していく。その過程で露わになる人間の弱さと、〈静かな追い詰め方〉が、読後もしつこく胸に残る一冊だった。
Posted by ブクログ
著者、まつながけーさんぞうさんは
ちょっと変わった名前なんですけど
昨年、「バリ山行」で芥川賞を受賞された方で
(↑ 読んでいませんけど)
この本は、デビュー作らしく、
先日、新聞で「面白くて哀しい」と書いてあって
気になったので読んでみました。
主人公、高見は、神戸の物流倉庫に勤務し
新倉庫の建設の管理を任されることになった。
しかし、建設用地の隣地に住む犬連れの男が
何かと工事にクレームをつけてくる。
厄介な男だなと思いつつ、
日々対応に追われていたのだが
ひょんなことから、なぜか、この男の犬を預かることに。。。
そして、一人暮らしの高見は
ペット飼育不可のマンションで犬と過ごすことになる。
この主人公が、また、なんとも言えない「いいやつ」で
ぶつぶつ言いながらも、犬の世話をし
頑張る姿が可愛くて面白い。
そして、想像もしなかった結末に
なんだか感動してしまったのでした。
これ、映画になったらいいのにな。。。
なんて思っちゃいました。
きっと私は泣く(^^;)
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