あらすじ
第171回芥川賞受賞「バリ山行」に先行する著者デビュー作。第64回群像新人文学賞・優秀作が待望の単行本刊行。
本社からの命令で何としても期日までに倉庫を建てなければならないのに、犬を連れた隣地の男・カメオがたちはだかる。不条理な可笑しみに彩られたデビュー作。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
■はじめに
一気読みだった。140ページという中編の分量もさることながら、何より著者の文体が読み手を離さない。
純文学にありがちな、内面へ内面へと沈み込む心象描写を、あえて前景化させずに、状況・行動・やり取りの積み重ねを通じて葛藤を遺漏なく描く。
キビキビとしてソリッド。冷たくもなく、ハードボイルドにも偏らない、絶妙なバランス感覚が「一気読み」へと導いたと見る。さすがは「オモロイ純文運動」を提唱するだけあります!
■内容&構成
①前半─「お仕事小説」としての顔
物語の前半、正確には1/3余りは建設現場を舞台にした、きわめて現実的な「お仕事小説」として展開。
ここでの主役は隣人クレーマー〈カメオ〉。現場に日常的に侵入してくる“厄介な存在”。連日のクレーム、仔犬同伴での抗議、挙句は作業員のラジオ体操への参加。
相対する現場責任者の主人公は、感情を爆発させたところで、正義を振りかざしたところで、それは相手の思う壺として割り切り、仕事として対処し続ける。
ここで描かれるのは、日々直面する「理不尽」と「やり過ごし」の感覚だ。正面衝突を避け、摩耗しながらも業務を遂行する。
②転換点─偶然の「解放」
そんなクレーマーが、ある日突然、急死。前半の物語は、ここで一度、終わったかのように見える。主人公は〈偶然〉によって、厄介事から解放される。でも、その解放にはカタルシスを伴わない。
むしろ、次なる局面への、静かな助走に過ぎなかったことが、次第に明らかに。
③後半─「人間小説」への変貌
クレーマーの元に残された仔犬を、行きがかり上一旦ペット禁止の自宅マンションで預かることになった主人公。
ここから物語は、「お仕事小説」から、明確に「人間小説」へと舵を切る。
仔犬は成長とともに徐々に獰猛さを帯び、近隣住民もその気配に気づき始める。息をひそめる生活、常に背後を気にする感覚。
ここで描かれる緊張感は、外敵との対峙ではない。自分で引き受けてしまったものから、逃げられなくなる感覚。
前半が「仕事としての対処」なら、後半は「人間としての選択」を突きつけられる。
■感想
物語後半、主人公は振り回され、追い立てられ、いよいよ袋小路へと追い込まれていく。選択肢は狭まり、時間だけが過ぎていく。
著者は、刻々と悪化する状況描写を畳みかけるように描く。「さぁ、どうする?」「GOする!」と現実にはそんな簡単にはいかない。この辺りから、読み手も息苦しさがじわじわと押し寄せる。
そう、前半が〈偶然の解放〉なら、後半は〈意図的な解放〉。ただ、その選択には、正誤の2極論では片付けられないものがあるだけに厄介であり、懊悩する。
■最後に
哀れさと切なさは、近縁にある。
逃げ切れない状況の中で、最善でも最悪でもない選択をしておこうとする人間の弱さ。本作は、その一点を、過剰な説明も感傷もなく、静かに、しかし確実に描き切る。
短い小説の中で、お仕事小説として始まり、気づけば人間小説へと変貌していく。その過程で露わになる人間の弱さと、〈静かな追い詰め方〉が、読後もしつこく胸に残る一冊だった。
Posted by ブクログ
著者、まつながけーさんぞうさんは
ちょっと変わった名前なんですけど
昨年、「バリ山行」で芥川賞を受賞された方で
(↑ 読んでいませんけど)
この本は、デビュー作らしく、
先日、新聞で「面白くて哀しい」と書いてあって
気になったので読んでみました。
主人公、高見は、神戸の物流倉庫に勤務し
新倉庫の建設の管理を任されることになった。
しかし、建設用地の隣地に住む犬連れの男が
何かと工事にクレームをつけてくる。
厄介な男だなと思いつつ、
日々対応に追われていたのだが
ひょんなことから、なぜか、この男の犬を預かることに。。。
そして、一人暮らしの高見は
ペット飼育不可のマンションで犬と過ごすことになる。
この主人公が、また、なんとも言えない「いいやつ」で
ぶつぶつ言いながらも、犬の世話をし
頑張る姿が可愛くて面白い。
そして、想像もしなかった結末に
なんだか感動してしまったのでした。
これ、映画になったらいいのにな。。。
なんて思っちゃいました。
きっと私は泣く(^^;)
Posted by ブクログ
建築現場のクレーマーが、亀夫。その飼い犬がカメオ。話の舞台もごく身近でカメオの様子にもいちいち頷いて、「バリ山行」も一気読みだったが、こちらも一気に読んでしまった。
Posted by ブクログ
「バリ山行」で芥川賞を取った著者のデビュー作。
こちらはバイク、自転車。山が好きなのかな。
そこに、工事現場の隣地のクレーマー「亀夫」さんとその犬が登場、
バイクが趣味の現場監督に絡む。
そしていろいろあって現場監督と犬「カメオ」の生活が始まる、、、
きわめて日常。どこにも空想の世界はない。
でもどこか非日常感が漂う。ドキドキする。引き込まれる。
うまいなあ、この人。これからが楽しみだ。
山以外の作品もでるのだろうか?
Posted by ブクログ
二体のカメオ(人と犬)に振り回され、窮地に追い込まれてゆく高見。意想外にも人のカメオには解放されるのだが…カメオを飼うか、放つか。二択のジレンマに揺れ動く高見の心。天使と悪魔の葛藤がリアル。彼に愚かな選択をさせることで、いかに人間が弱く、保身に走りやすい存在かを強調していた。ブルテリアのカメオ。可愛さ満点だった。
Posted by ブクログ
めちゃよい。
主人公の気の好さが滲み出ているし、あまりに普通。普通だからこそ、追い詰められた結果、犬を遺棄しようと思ってしまうし、逃げてしまった後になって後悔の念に襲われるんだと思う。
誰にでも起こりうるエピソードだった。
なんやろ、やっぱり理屈であれこれ考えるより、いやそれも大事なんやけど、直感に従うべき瞬間っていうのは人生にいろいろあるよな、と感じた。
大袈裟かもしれないが笑。
自転車仲間の野犬に追われたエピソードから始まり、主人公が会社に命ぜられて用途不明の倉庫を突貫で建てさせられる。その隣地のいちゃもん男・亀男が飼っているブルテリア。突然ぽっくり逝った亀男に代わって、ブルテリアを育て、いつしかカメオと呼ぶようになり、ペット飼育不可のマンションで悩んだ末、山に捨てに行く。倉庫建設の遅延による会社からの理不尽な処分への腹いせもあったのかもしれない。微かな期待をよそに、山に飛び込むカメオ。心のどこかで一緒に暮らす未来を思い描いていた自分に気づき、名前を呼ぶも、もう、戻れない。
そして最後は、自分自身が「カメオ」になる。
Posted by ブクログ
面白くて一気読み!
サラリーマンあるあるのシチュエーション、ノーと言えない性格、突然始まる犬との生活、とにかく色々ストレスの溜まる毎日。主人公に感情移入しながら読んだ。
細やかな心理描写や風景描写が素晴らしい。ラストで主人公のストレスが発散される時、読み手のストレスも発散され、一緒に叫びたくなる。
Posted by ブクログ
松永K三蔵さんの芥川賞の本を以前読んだ時にはお仕事小説を描くのが素晴らしい人だと思っていた。こちらも?と手に取ったらお仕事+ペットもあり、人間の良心に深く訴える部分もありで、これもまた心に残る一冊となった。
ファンタジックな(?)結末だけど小説なら致し方ない。
まだまだこの人の本を読んでみたい、つぎに繰り出すのは何か、楽しみにしたい。
Posted by ブクログ
『バリ山行』を気に入った母にプレゼントするために買った。プレゼントの前に読む。
『バリ山行』と同様の読み応えに久々に浸れた。決定的な破滅でもなく、確実な安心感でもない、でも何か吹っ切れたような読後感が同じだ。これは、母も気に入るだろう。そもそも、出てくる地名がいちいちその辺の、よく行く、よく目にする地名だからより身近に思えるのがさらに良い。
タイトルの『カメオ』。あの大理石でできたcameo、装飾品の女性の横顔的な、ペンダントトップのような、それを想起させるのに犬の絵が表紙ってどう言うことだろうかと思いながら読み始めたが。cameoとは全く関係なかった。
Posted by ブクログ
よく知る土地の名前が出てきて、その土地の空気感とか匂いもちょっとだけ想像してしまう。そして、私もむかしむかし建設業に関わったことがあるので、とってもよくわかる話。
Posted by ブクログ
犬を連れた偏屈な男に、工事の妨害をされている会社の担当者が主人公。
タイトルの「カメオ」とは、そもそもは妨害し続ける男の名前だが、一気に流れの変わる後半には犬の名前になる。
引きこもり気味のクレーマーである中年男の言動も、その姉の振る舞いも、主人公の上司の仕打ちも、主人公のいい加減な不器用さも、すべてが無責任で理不尽だが、どこか可笑しさがにじむ。
唯一魅力的なのは逞しい犬の存在で、主人公がどういう選択をするのかが気になって、一気に読み切った。
芥川賞受賞作『バリ山行』同様、疾走感のあるユニークな作品だった。
Posted by ブクログ
カメオ、って西洋人の顔のブローチ的なものを想像していたのだがまさかの展開。超ド級のクレーマーの出現、不細工だけどどこか愛嬌のある犬、その間で右往左往することとなる主人公。なかなかどうして面白かった。先日太宰治の『畜犬談』を読んだのだがそのバッドエンド版という感じで、畜犬談を非常に気に入った私としてはかなりツボにはまった。舞台の西宮も土地勘バッチリで楽しめた。そして犬の処遇がどうなるか、ということに密やかにハラハラ。お座敷犬で収まるタイプには思えず、スケールのでかそうな犬なのであの結末でもアリだと思う。
Posted by ブクログ
物流倉庫に勤める主人公が、工期厳守の倉庫建築工事の担当となったが、犬を連れた隣地の迷惑な男がたちはだかり、さらにその連れていた犬と深く関わることになっていくというストーリー。
純文学の範疇に入ると思うが、読ませる文章で面白く、良い読後感だった。クレーマーの男の描写も実にリアリティがあった。諸々の軛からの解放というのが一つのテーマなのかなと感じた。
Posted by ブクログ
『バリ山行』で芥川賞を受賞した松永K三蔵さんの「不条理な可笑しみに彩られたデビュー作」
確かにね。主人公が建築指揮している倉庫の隣家のクレーマー男も、主人公に押し付けられた犬が本性を出してくる様子も、主人公を取り巻くあれこれが全部なんか不条理。でも不気味さではなく、それらに戸惑いつつ苦労している主人公はどこか滑稽です。
ちょっと理不尽な小さな会社や、妙に職人気質な脇役。さらに主人公がきつい運動で自分の存在感を確認しようとする事など、『バリ山行』との類似点も多い。
まだ、小説はこの2作だけの様です。まあ、じっくり面白い小説を書いていただければ。。
ちなみに松永K三蔵さんのHPに以下の様な文章が有りました。ナルホドネ!
【オモロイ純文運動】
純文学はおもしろい。
純文学はひらかれていて、オモロイのだということを世間にわかってもらう文学運動。
運動と言ってもその活動は、ただ書くだけ。
オモロイ純文を。
Posted by ブクログ
テンポが良くて、凄く面白かった!
第171回芥川賞受賞「バリ山行」に先行する著者デビュ一作。第64回群像新人文学賞・優秀作
「バリ山行」と同じように自然、心理描写が細やか。展開にハラハラして引き込まれた。
個人的には最後、主人公の決断には⁇驚いたけれど、、、
終始面白くて読めて良かった!
Posted by ブクログ
「カメオ」は読む前と24頁あたりで頭の中で発音が変換した・・・。
これは狙いか?
前作もそうだったけど、今作も「何でこんなに面白いんだろう?」と思いながらも一気読みしてしまった。
作者との相性ってあるのかな。
主人公と私は何1つ共通点はないけど、共感できてしまう。特に劇的な盛り上がりがある訳でもないが、ずっとハラハラドキドキだ。
リアルな人生ってハッピーエンドもバッドエンドもない。平凡だけど面白い。それを体感させてくれる作品だと思う。
Posted by ブクログ
法律とか、社会規範とか、社内規定とか、明文化されたルールから取り溢れた問題への対応を間違えて、どんどん出口が塞がれていく話。
設定されているルール無視で怒鳴り込んでくるクレーマーや言葉の通じない奴がノルマの障壁になっているときに、ルール通りに進めていると締め切りに間に合わないので、ルールからは少し逸脱するがその方がコストがかからずに解決できる、っていう方法があると、現場としてはそれを選ばざるを得ないときがある。
とても小さな嘘を吐いてしまうようなものだ。
でもその嘘と現実の整合性を保つために立ち回っていると、さらに厄介ごとがまとわりついてきて、仕事のためについた嘘に気がついたら自分の私生活が蝕まれていく。
そして主人公は厄介ごとのひとつである犬を厄介に感じながらどうしても愛着を持ってしまう。
最後に仲間内でアダ名のなかった主人公が呼ばれたアダ名はちょっとしたホラーだった。
Posted by ブクログ
主人公の決断の是非は別として(普通に違法)、その行動に行き着くまでの描写に無理がないというか、すーっと読み手側に伝わるのがすごいなと思った。なんにせよ読後爽やかな気持ちになれる一冊
読むとタイトル【カメオ】のイントネーションが変わります
Posted by ブクログ
亀夫やバリ山行の妻鹿さんのような、社会の中でバランスをとるのは難しいだろうなというような人たちが物語のど真ん中にどーんといて、その比率が新鮮なのかなと思う。
Posted by ブクログ
主人公の兄に選ばれなかったカメオと、カメオに選ばれなかった主人公。一人と一匹が同じ様に野山を駆ける。という構図が良い。
正直に言えば、私が「犬を捨てる話」で思い出すのが太宰の畜犬談。あれは別れ際が凄く好きだったため、この二人はどうなるのだろう、と勝手にハードルを上げてしまっていた。さらりと終わる2人の関係性に少し消化不良を覚えてしまった。
カメオの飼い主である亀夫の語られない背景が気になった。
自分を工事現場の人間だと思い込んでいたこと、まともに働いていないこと、以前は陸上自衛隊に所属していた事、それでも犬には良いものを食べさせていたことなどが語られる。本作では悪役でしかなく、因果応報も食らわずに死んだ(死が天誅とも言えるかもしれない)ため、それ以上のことは教えられない。けれどその存在感はあまりに大きく、読み終わった後になんなんだろうアイツ...というノイズとして残った。姉も良い人間とは呼べない。
カメオ
P27
西日がそう 見せるのか 近くで見ると 短い毛先に非が反射して 乳白色の犬は 胴体のうねりに沿って 光沢を帯びているように見えた。
P91
弾かれたピンボールのように 向きを変えながら私の存在を無視し身を震わせながら 全速力で駆け回った。
・ピンボールに例えるのが好き。一瞬で想像ができる。
P92
犬は木の葉が吹き散る草原の中を駆け回った。時折 街灯の明かりに体毛が光り その下の背中の筋肉が透けて見えた。
P141
EVO 3を先頭にチームの皆も追いついてきた。そして私の叫び声を何かの掛け声とでも思ったのか、頂上を通過しながら皆、口々に「カメオォー!」「カメオォー!」と叫んだ。
・主人公の思いの熱とは逆に、周りの反応はシュールで良い。
Posted by ブクログ
バリ山行が面白かったので
愛犬家のひとが読んだら眉をひそめる内容ですが、面白かった
犬を飼いはじめて1年くらい、いろいろな発見があり、ペットがはやってる訳がおぼろげに分かった気になります
作者の書きたいものが次作と地続きなのが感じられてさらによかった
Posted by ブクログ
人のイイお人好しの男と………………
飼い主に雑に扱われてきた犬………………
可笑しくも切なくもあり………………
感想は 『行け!行け!カメオ!!』 だな(^^)
Posted by ブクログ
バリ山行きが面白かったので。工事に立ちはだかるカメオと犬。妨害に辟易していたがカメオは突然死。残された犬の処遇にてんてこ舞いする高見。ペット禁止の部屋で息を潜める2人暮らしをするが、、ドタバタぶりがなんとも面白い。選択肢はなかったのか、最後のやり方には納得が行かないし、エゴ過ぎる高見にも残念。
Posted by ブクログ
工事現場の隣りに住むクレーマーの亀夫、ある日犬を残してポックリ死ぬ。ロードライダーの主人公がやむなく預かってのてんやわんや。ペット不可のマンションでの生活などペットを安易に飼うことについて考えさせられる。この主人公、少し気は弱いけど人はいい。カメオは自由に生きてるのか、野犬は怖いけどカメオが野原山野を駆け回るのは良かった。
Posted by ブクログ
タイトルはそう結びつくのか・・・納得(笑)
芥川賞を受賞したバリ三行と同じ匂いがする。
とことん追い詰める人がいる。
野犬から始まるくだり、きちんと完結している。
人の好さが自身を追い詰める、プチホラーでもある(笑)
次回作の人物像に期待したい。
Posted by ブクログ
犬との距離感を楽しめる本
兵庫を舞台にしている小説で地名などスッとイメージできました。
また、工事現場の近隣方々との距離感など、普段では想像できない業界の雰囲気を味わえる感じがリアルでよかった。
ただし、メインは主人公と犬との少しずつ縮まる距離感がほっこりして楽しめます。
そして、最後の主人公と犬との出来後がどうなるのか・・・
気になってページを捲る手が止まりません。
本書はページ数が多くないのでさらっと読めるのも魅力でした。
犬好きにはこの距離感が面白くていいと思います。
Posted by ブクログ
読みながら、高齢者(飼い主)が犬より先に亡くなった場合、ほんとどうなるんだろうって悲しくなった。
主人公は、突然に科された「犬」をどうするか真摯に真面目に不器用ながら自己解決しようと努める姿に共感を覚えた。
Posted by ブクログ
『第171回芥川賞受賞「バリ山行」に先行する著者デビュー作。第64回群像新人文学賞・優秀作が待望の単行本刊行。』
かかりつけの整形外科医院で
「あっ、バリ山行の人や」
とお借りしてくる。
何しに行ってるのか?私
『不条理な可笑しみに彩られた』とあるが
うーん、
なんかグルグル回ってて
犬カメオが切なくって
人って勝手だなあ
カメオに共感してしまって……
前作は山登り、今回はロード
タフだなあ
≪ ペーソスに 満ちすぎてるよ 犬文学 ≫
Posted by ブクログ
まず書き出し、松永K三蔵氏は山歩きだけでなくバイクもこなすのか…これはかなりのレヴェルで乗っているサイクリストしか描けない情景だぞ…と、同じくロードバイクに乗る末端の一人として、その実力にひれ伏すことから始まった。
そして「バリ山行」と同様、私が個人的によく知るエリアが出てくるので、とても馴染み易い。
ラストに至る展開に関しては、この小説を文学作品として成立させるために必要な通過儀礼なのだということは頭では分かるが、バカの付く犬好きとしては理屈を超越して生理的に受け容れ難い…。
また、その文学的な効果についても、高見が憤懣を抱えていく過程があっさりし過ぎているように感じた。
会社員を主人公に据え、仕事を通して苦悩する様を主軸に物語を構築している点は、これまた「バリ山行」と同じく、兼業作家としての立場を巧く活かしているなと思うが、あるいは高見がもっともっと不条理に直面し不遇をかこち、ストレスに押し潰され沈み込んでいく…そんな弓を引き絞る深さがさらにあったとしたら、カメオの解放がもたらすカタルシスはどかんとより大きくなったのではないだろうか?
散歩は基本中の基本だぞ、高見くん。