あらすじ
第171回芥川賞受賞「バリ山行」に先行する著者デビュー作。第64回群像新人文学賞・優秀作が待望の単行本刊行。
本社からの命令で何としても期日までに倉庫を建てなければならないのに、犬を連れた隣地の男・カメオがたちはだかる。不条理な可笑しみに彩られたデビュー作。
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Posted by ブクログ
めちゃよい。
主人公の気の好さが滲み出ているし、あまりに普通。普通だからこそ、追い詰められた結果、犬を遺棄しようと思ってしまうし、逃げてしまった後になって後悔の念に襲われるんだと思う。
誰にでも起こりうるエピソードだった。
なんやろ、やっぱり理屈であれこれ考えるより、いやそれも大事なんやけど、直感に従うべき瞬間っていうのは人生にいろいろあるよな、と感じた。
大袈裟かもしれないが笑。
自転車仲間の野犬に追われたエピソードから始まり、主人公が会社に命ぜられて用途不明の倉庫を突貫で建てさせられる。その隣地のいちゃもん男・亀男が飼っているブルテリア。突然ぽっくり逝った亀男に代わって、ブルテリアを育て、いつしかカメオと呼ぶようになり、ペット飼育不可のマンションで悩んだ末、山に捨てに行く。倉庫建設の遅延による会社からの理不尽な処分への腹いせもあったのかもしれない。微かな期待をよそに、山に飛び込むカメオ。心のどこかで一緒に暮らす未来を思い描いていた自分に気づき、名前を呼ぶも、もう、戻れない。
そして最後は、自分自身が「カメオ」になる。
Posted by ブクログ
面白くて一気読み!
サラリーマンあるあるのシチュエーション、ノーと言えない性格、突然始まる犬との生活、とにかく色々ストレスの溜まる毎日。主人公に感情移入しながら読んだ。
細やかな心理描写や風景描写が素晴らしい。ラストで主人公のストレスが発散される時、読み手のストレスも発散され、一緒に叫びたくなる。
Posted by ブクログ
松永K三蔵さんの芥川賞の本を以前読んだ時にはお仕事小説を描くのが素晴らしい人だと思っていた。こちらも?と手に取ったらお仕事+ペットもあり、人間の良心に深く訴える部分もありで、これもまた心に残る一冊となった。
ファンタジックな(?)結末だけど小説なら致し方ない。
まだまだこの人の本を読んでみたい、つぎに繰り出すのは何か、楽しみにしたい。
Posted by ブクログ
カメオ、って西洋人の顔のブローチ的なものを想像していたのだがまさかの展開。超ド級のクレーマーの出現、不細工だけどどこか愛嬌のある犬、その間で右往左往することとなる主人公。なかなかどうして面白かった。先日太宰治の『畜犬談』を読んだのだがそのバッドエンド版という感じで、畜犬談を非常に気に入った私としてはかなりツボにはまった。舞台の西宮も土地勘バッチリで楽しめた。そして犬の処遇がどうなるか、ということに密やかにハラハラ。お座敷犬で収まるタイプには思えず、スケールのでかそうな犬なのであの結末でもアリだと思う。
Posted by ブクログ
主人公の決断の是非は別として(普通に違法)、その行動に行き着くまでの描写に無理がないというか、すーっと読み手側に伝わるのがすごいなと思った。なんにせよ読後爽やかな気持ちになれる一冊
読むとタイトル【カメオ】のイントネーションが変わります
Posted by ブクログ
主人公の兄に選ばれなかったカメオと、カメオに選ばれなかった主人公。一人と一匹が同じ様に野山を駆ける。という構図が良い。
正直に言えば、私が「犬を捨てる話」で思い出すのが太宰の畜犬談。あれは別れ際が凄く好きだったため、この二人はどうなるのだろう、と勝手にハードルを上げてしまっていた。さらりと終わる2人の関係性に少し消化不良を覚えてしまった。
カメオの飼い主である亀夫の語られない背景が気になった。
自分を工事現場の人間だと思い込んでいたこと、まともに働いていないこと、以前は陸上自衛隊に所属していた事、それでも犬には良いものを食べさせていたことなどが語られる。本作では悪役でしかなく、因果応報も食らわずに死んだ(死が天誅とも言えるかもしれない)ため、それ以上のことは教えられない。けれどその存在感はあまりに大きく、読み終わった後になんなんだろうアイツ...というノイズとして残った。姉も良い人間とは呼べない。
カメオ
P27
西日がそう 見せるのか 近くで見ると 短い毛先に非が反射して 乳白色の犬は 胴体のうねりに沿って 光沢を帯びているように見えた。
P91
弾かれたピンボールのように 向きを変えながら私の存在を無視し身を震わせながら 全速力で駆け回った。
・ピンボールに例えるのが好き。一瞬で想像ができる。
P92
犬は木の葉が吹き散る草原の中を駆け回った。時折 街灯の明かりに体毛が光り その下の背中の筋肉が透けて見えた。
P141
EVO 3を先頭にチームの皆も追いついてきた。そして私の叫び声を何かの掛け声とでも思ったのか、頂上を通過しながら皆、口々に「カメオォー!」「カメオォー!」と叫んだ。
・主人公の思いの熱とは逆に、周りの反応はシュールで良い。
Posted by ブクログ
工事現場の隣りに住むクレーマーの亀夫、ある日犬を残してポックリ死ぬ。ロードライダーの主人公がやむなく預かってのてんやわんや。ペット不可のマンションでの生活などペットを安易に飼うことについて考えさせられる。この主人公、少し気は弱いけど人はいい。カメオは自由に生きてるのか、野犬は怖いけどカメオが野原山野を駆け回るのは良かった。
Posted by ブクログ
タイトルはそう結びつくのか・・・納得(笑)
芥川賞を受賞したバリ三行と同じ匂いがする。
とことん追い詰める人がいる。
野犬から始まるくだり、きちんと完結している。
人の好さが自身を追い詰める、プチホラーでもある(笑)
次回作の人物像に期待したい。
Posted by ブクログ
まず書き出し、松永K三蔵氏は山歩きだけでなくバイクもこなすのか…これはかなりのレヴェルで乗っているサイクリストしか描けない情景だぞ…と、同じくロードバイクに乗る末端の一人として、その実力にひれ伏すことから始まった。
そして「バリ山行」と同様、私が個人的によく知るエリアが出てくるので、とても馴染み易い。
ラストに至る展開に関しては、この小説を文学作品として成立させるために必要な通過儀礼なのだということは頭では分かるが、バカの付く犬好きとしては理屈を超越して生理的に受け容れ難い…。
また、その文学的な効果についても、高見が憤懣を抱えていく過程があっさりし過ぎているように感じた。
会社員を主人公に据え、仕事を通して苦悩する様を主軸に物語を構築している点は、これまた「バリ山行」と同じく、兼業作家としての立場を巧く活かしているなと思うが、あるいは高見がもっともっと不条理に直面し不遇をかこち、ストレスに押し潰され沈み込んでいく…そんな弓を引き絞る深さがさらにあったとしたら、カメオの解放がもたらすカタルシスはどかんとより大きくなったのではないだろうか?
散歩は基本中の基本だぞ、高見くん。