松永K三蔵のレビュー一覧
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自身も建築に身を置きながら山にも登る人間として、これほど五感に迫り、共感で胸が熱くなった。
道なき道を行く「バリ山行」に憑りつかれた職場の先輩・妻鹿(メガ)さん。周囲からは変人扱いされているが、他人の目に縛られず、自分の思う道をただ突き進む不器用な生き様に強烈に惹かれた。仕事においても経験に裏打ちされた絶対的な安心感があり、「自分もこういう人になりたい」と強い憧れを抱いてしまう。
作中、妻鹿さんの「あれは本物だったでしょ?本物の危機、あれだよ」という言葉が深く刺さった。私自身もかつて山で滑落しかけ、「あ、落ちたら死ぬんだな」と生の輪郭に触れた経験がある。だからこそ、理屈ではなく「深く眠るよ -
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登山は人生みたいなものだなと改めて思った
山頂に到達するためにはいろんなルートがあり、そこには人が整備してくれた。歩きやすい道誰も入っていない獣道、目的を変えれば山頂というものがゴールではなく、ただ、歩くことがゴールにもなる。
しんどいルート歩けばその分だけ。もちろん疲労度は高い。でも、その後に人が整備してくれた。道歩けば何の変哲もなく、すごく歩きやすい。
登山に行ってからといって現実のことを忘れるわけではない。むしろふと考える瞬間にわんわを知らせてくる。でも自然の中で自然を目の前にのことを思っても本当の危機だったりとか、不安には比べて。自分の現実の世界で起きている不安は小さく思える。
改 -
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いやあ、面白かった。
芥川賞「バリ三行」に続き、松永K三蔵さんのデビュー作。
ある時、急にある建築現場の進捗管理をすることになったロードバイクが趣味の主人公。
しかしその建築現場の隣には厄介なクレーマーがいた。
その名も亀夫。
やんなるほど厄介だが、その男の傍にはただただおとなしく毎日を過ごしている見た目の変わった犬がいた…。
そしてある時ひょんなことから、主人公はその犬の面倒を数日見ることになる。
仕事のストレスは毎日のように振りかかり、住んでいる家はペット飼育禁止のマンション…
バリ三行と同じく読みやすくテンポよくすいすい読めた。
最後主人公と犬はどうなるのか
犬になんだか自分の -
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前職の内装リフォーム会社をリストラされ、建装会社に転職して二年。波多は同僚からの誘いで六甲山登山に参加する。社内登山グループは登山部となり、親睦を深める為の活動を続けることに。そんな中、職人気質が故に会社で孤立している妻鹿があえて登山路を外れる「バリ山行」をしていると知るーーー
本書の帯に書かれた「オモロイ純文運動」という文言に、勝手に期待してハードルを上げていたのだけど、悠々と超えてきた。凄い面白かった。
いわゆるお仕事小説と言われる小説は、社会人である主人公が会社の危機や変化への対応に苦労する様が描かれ、それでもなお日々懸命に働き、生きる事の大切さや、家庭を守る人々の心情が描かれる。本作 -
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芥川賞ではあるが、読みやすく面白かった。
一気読み。
社員50人ほどの建物修繕会社。ほそぼそと元請けとして頑張るか、大手の下請けになるか…
会社の行く末を案じ落ち着きのなくなる社員が増える中、ひとり恬淡に仕事をする妻鹿さん。
【恬】 てん
意味: 心が落ち着いている、やすらか
【恬淡(てんたん)】: 物事に執着せず、あっさりしている様子
そんな妻鹿さんは週末ひとり山に入る。
普通の登山道ではない、道なき道をゆくバリルート
安全性を考えたら、倫理性を考えたらおそらくアウトだ。
でも、バリルートをゆく妻鹿さんは恬淡とはちょっと違う。
自分の足音・呼吸と、山の音意外何も無くなる無の -
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■はじめに
一気読みだった。140ページという中編の分量もさることながら、何より著者の文体が読み手を離さない。
純文学にありがちな、内面へ内面へと沈み込む心象描写を、あえて前景化させずに、状況・行動・やり取りの積み重ねを通じて葛藤を遺漏なく描く。
キビキビとしてソリッド。冷たくもなく、ハードボイルドにも偏らない、絶妙なバランス感覚が「一気読み」へと導いたと見る。さすがは「オモロイ純文運動」を提唱するだけあります!
■内容&構成
①前半─「お仕事小説」としての顔
物語の前半、正確には1/3余りは建設現場を舞台にした、きわめて現実的な「お仕事小説」として展開。
ここでの主役は隣人クレーマー -
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ネタバレめちゃよい。
主人公の気の好さが滲み出ているし、あまりに普通。普通だからこそ、追い詰められた結果、犬を遺棄しようと思ってしまうし、逃げてしまった後になって後悔の念に襲われるんだと思う。
誰にでも起こりうるエピソードだった。
なんやろ、やっぱり理屈であれこれ考えるより、いやそれも大事なんやけど、直感に従うべき瞬間っていうのは人生にいろいろあるよな、と感じた。
大袈裟かもしれないが笑。
自転車仲間の野犬に追われたエピソードから始まり、主人公が会社に命ぜられて用途不明の倉庫を突貫で建てさせられる。その隣地のいちゃもん男・亀男が飼っているブルテリア。突然ぽっくり逝った亀男に代わって、ブルテリアを育て -
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・面白かった〜。
・物語内で出会う人(物事)に関わる事で、物語の入り口と出口で登場人物が変化している(成長している)、振り返ってみると、そうした物語の定型に思いっきりなっていて、読む前からすると意外な程、王道な、清々しい気持ちになった。結構ストレートに面白い小説だと思った。
・話途中のいわゆる「バリ」登山のシーンは圧巻で、主人公の心情も相まって自分も一緒に登っている気に(しんどい)。
・エベレストの様な高名な山でなく、そこらの住宅街が近くにある様な山で、こんな事が行われるんだ、という驚き。めちゃ見慣れた世界の知らない側面、それを垣間見た様な背徳感と喜び、みたいな。 -
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波多は転職して今のそこそこ大手の会社に入り、妻娘と社宅で暮らしているが、自分の生来の付き合いの悪さを反省するところもあり、会社の登山サークルに参加するようになっていく。登山の楽しさをわかり始めた頃、会社でやや浮いた感のある妻鹿さんが登山をやっていることを知る。しかも妻鹿さんの登山はバリという登山道じゃない道を行くスタイル。波多は妻鹿さんの生き方(仕事の仕方)にも山登りのスタイルにも反発しながらも引かれるところがあり、そこが描かれていく。
バリ山行の描写などは楽しく読めたものの、主人公の心持ちが今一つ乗れない(共感できない)タイプで入り込めなかった。そもそも家事育児を奥さんに頼りすぎでイラッとす