読みやすい作品だった。
文体がストレート、話の展開も分かりやすい。
なにより、我々もできる里山的な地元の低山の登山が入り口。ごく普通のサラリーマンが、会社の登山サークルに誘われ、山行を始める。
そこで出会う職場の妻鹿さん。アラフォーの一匹狼は、サークルのメンバーとは違うルートで山を登る。タイトルの「バリ」が、バリエーションルートのことで、所謂、一般の登山道とは異なるルートを意味する。
ストーリーの建付けも分かりやすく、職場(建築会社)が経営危機を迎え、低価ながらも安定した収益はある大手ゼネコンの下請けに甘んじる道をとるか、小口の商売を飛び込みで獲ってくる地道な直営業の道をとるか、その選択を迫られる。
新社長の方針で、安定の道を選ぶ会社ではあるが、一匹狼の妻鹿さんは、当然、営業スタイルでも独自のスタイルを貫く。
妻鹿さんに弟子入りする主人公は、その妻鹿さんのバリ山行のスタイル、その背中から、何を学ぶか? という分かりやすい構成だった。
サラリーマン作家だという著者。詳細な社内描写は、自分でも経験のある業界だろうと想像する。
なんなら、バリ山行も経験している? 少なくとも、山登りもやっているのだろうなと思わせる、精緻な筆致だった。
本作は、なにより妻鹿さんが魅力的で良い。
会社方針と相容れず、職場を去ることになり、行方知れずとなるが、バリ山行は続けている形跡を主人公は最後に目にする。その結び方も好感がもてる。
体験を基にして、想像で書いてないゆえのストレートさなのか、これがこの著者の持ち味、文体なのかはこの一作では判別はつかない。
また、次作に期待してみよう。
文体はストレートなのに、漢字の使い方に妙な、こだわりを感じる(見慣れぬ漢字を当てる)のは、ちょっと、ひっかかったところ。これもクセなのか?
このあたりも、また次回作で、検証してみよう。