佐藤信之のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
東京圏と大阪圏の鉄道の話。鉄道について、その究極の輸送力を発揮すべき通勤時の鉄道輸送力の推移をはじめ、人口動態や自動車など他の交通手段との比較等、深い科学的研究・分析がなされている。路線延伸や車両開発の歴史にも詳しい。今後将来に向けての問題点、解決案、展望等も参考になった。
「東京の西側郊外に開発された田園都市は、最初は分譲地の販売は不調であったが、関東大震災の後は、日本橋あたりの裕福な商家の人たちが競って購入するようになり、住まいは山手、職場は都心と職住分離したことで、毎日通勤する人々が生まれるようになった」p6
「通勤定期旅客が通勤によって失われた付加価値の1年間の総額は、6兆7000億 -
Posted by ブクログ
我田引鉄と揶揄されるように鉄道は政治と結びつきやすい。そんな両者の歴史と近年の現況を概観した一冊。
政治家が地元に鉄道を引くのは明治から昭和にかけての定番。都市伝説も含め多くの逸話がある。
しかし、前提となる「鉄道=地域の発展」という発想が近年は崩れているという。長崎新幹線の通る佐賀県、中央リニア新幹線の通る静岡県から見ればタダの迷惑施設となっている。一方では富山県内や宇都宮市のLRT整備のような新たな公共交通のカタチも見え始めている。
本書はそんな政治と鉄道の関係を明治から現代まで概観した一冊。国と地方の関係の変化や小選挙区制制などによる政治家の小物化(ビジョン提示から御用聞き、大衆迎 -
Posted by ブクログ
大学講師が、鉄道会社について書いた本。たぶん鉄道マニアであろう著者が、鉄道を経営する会社に焦点を当て、鉄道事業、観光事業、地域開発、小売り事業などの切り口からその経営について分析している。データが豊富で歴史的考察も深く学術的によくまとめられていると思う。東京地下鉄をはじめとする首都圏交通網の開発経緯も詳しく書かれており、とても興味深く読んだ。写真もいい。
「JR東日本:新幹線の路線1134.7km(15.1%)収入4920億円(29.3%)。首都圏在来線2536.2km(33.8%)収入1兆1170億円(66.4%)。残りの在来線3841.7km(51.1%)収入723億円(4.3%)。JR -
Posted by ブクログ
中央リニアの静岡工区、西九州新幹線の佐賀県内のフル規格化。
これらの計画がなぜ頓挫しているのかを、第一部で解説する。
その後、第二部で明治から現在に至るまでの鉄道と政治の関わりをダイジェストでまとめる。
第三部で、成功している事例(万葉線、富山ライトレール、福井鉄道)と、これからのLRT計画(宇都宮LRT)、そして災害復興についてが書かれている。
内容としては、第一部だけが読む価値アリ。
あぁ、道理で工事が進まないのね、ということが分かる。
第二部での新しい発見は、明治期では軌道化が道路整備の代替手段だったということを知った。
当時の道路は舗装はおろか土の道で、雨のあと -
Posted by ブクログ
■JR北海道が苦境にあることは周知の事実。その背景がなんだったのか知りたかった。
■国鉄民営化後、数多の誤算が続いたことは分かったが、国も北海道庁もJR北海道も他に何かできることがあったように感じる。
■先を見通した経営というより、列車の改良やダイヤ改正、特急のやりくりばかりなど小手先なことばかり書いてある。本当にこんなことばかりだったのか。
■北海道はその歴史的な成り立ちとして、国に頼りがちなところがあるが、ロシアと国境を接していること、食糧基地としての可能性など、一民間企業としての考え方には収まらない発想が必要な国家戦略的な企業だと感じているがどうだろうか。 -
Posted by ブクログ
時は明治時代まで遡る。イギリスから鉄道を導入する際、1067mmの狭軌か1435mmの標準軌にするのか。
この時の判断が、今も日本の鉄道に色濃く影を落としている。
明治時代の広軌変更計画から満鉄あじあ号、そして戦後を経て新幹線が始まった。
日本がなぜ鉄道分野において世界で競争力があるのか。それはモータリゼーション到来が予想される中、イギリスアメリカは鉄道に見切りをつけたのに対し、日本は新幹線を推し進める意思を持った人たちがいたからだ。
東海道新幹線、山陽新幹線は在来線の輸送密度が限界に達し、輸送の抜本的な増設が必要だったのに対し、東北・上越は需要ではなく政治により造られたとい