福間恵のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
戦争の中の灰色の日々に形が、色が、声がついていくようだった。
あくまで「日記」なので、何か一つの出来事を追っていく事はない。全ては点々とした出来事の集積である。
その中に見え隠れするウクライナへの想い、そしてプーチンへの怒り。国際社会がこの戦争を見ようと彼らからするとある日突然、大国によって押し付けられた戦争でしかない。
戦争の中でも日常はある。そこに突然ミサイルが飛来したり、誰かがいなくなったりするだけで。読後、ニュースの向こう側で不敵な笑みを浮かべるあの男に向かって毒づいてやりたくなった。一国の権力を握って隣国の人々を殺すのはさぞ幸せでしょうね、と。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ世界が震撼したウクライナへのロシアの侵攻。
その直前である2021年12月29日から、侵攻を挟んで、2022年7月11日までのウクライナ人の日記。
日記、とは言うものの、書いたのはウクライナの高名な作家でもあり、そこは私的なものばかりではなく、ウクライナという国の歴史、人種や言語や文化の解説、世界の動向、ロシアとの関係などなど、世界の読み手を意識して書かれたものでもあり、そういう意味からも、ウクライナという国と「今」を理解しやすい。
そもそも、今回の侵攻が起こるまで、ウクライナという国がどういう国なのか、どういう歴史を持ち、どんな人種であるのか、など、ほとんど知識はなかった。
ヨーロッパから -
Posted by ブクログ
ネタバレウクライナ侵攻について特集した番組の中で本書と著者が紹介されているのを見て手に取り。
装丁は美しいですが手に取るのに覚悟のいる一冊でした。
簡単な地図がついてますがロシア・ウクライナの地理も歴史も文化も全く知らないので最初は中々とっつきづらかったのですが読み進むうちにウクライナ人の矜持のようなものをそこここに感じられるようになったと思います。
侵攻の残虐さや非道さは日本の報道でも(ものすごくきっと限定的でしょうが)見ることがありますが、そこに現実に生きている人の生活の様子(住居や故郷からの退去、食料や日用品の調達、医療に状況など)や思いはそこからはわからないです。そういうものの一部を本書によ -
Posted by ブクログ
ネタバレ映画で洋画のホラーと、日本のホラーって怖さのベクトルが違うとわたしは思っています。
今回初めて海外のホラー小説を読んだのですが、映画と同じように本もやっぱり違うか…!と少し驚きました。
例えば流行りのモキュメンタリーホラーのようにギャーーーーーと叫びたくなるような、心臓がバクバクするような怖さではない。
淡々と日常に潜む怖さ。薄気味悪く、正体が掴めない。精神的に追い詰められるようなそんな不気味さがありました。
個人的に好きなのは「人魚」でした。
怖さだけではない。なぜか切なさや儚さも感じさせられる物語だと思いました。人魚といえば泡となって消える…。この話が好きだと思う人は多い気がします。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ権力者は歴史を仕立て上げる。それに対して私的な日記は真実をとどめうる。ウクライナ侵攻の2ヶ月前から、侵攻後5ヶ月の記録。侵攻直後の混乱と緊迫感から、少しずつ緊張が緩んでいって戦争に慣れていき、キーウに戻る人も増えていくウクライナの様子が内側から描かれている。
ロシア語話者であった著者クルコフは、ロシア語が支配の言葉でないことを示すために小説はロシア語で書くスタンスをとっていたが、侵略以降はウクライナ語をメイン言語にせざるを得なかった。ロシア語話者は普通の4倍の愛国心を見せないとウクライナでは認められない。ロシア文化やロシア語を敵のものとして排斥する動きはウクライナだけでなくて、残念ながら日本に