小池水音のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
新潮新人賞受賞作『わからないままで』を収録したデビュー作。
表題作の『息』は、大人になって頻繁に再発するようになった喘息の症状に苦しめられる女性の話。幼少時に同じく喘息を患っており、一年前に亡くなってしまった弟の春彦をめぐり、父親と母親、主治医の娘であり春彦の恋人でもあった女性とも関わりながら、息苦しい中で少しずつ彼の死を受け入れていく。緊張と緩和を行き来しながら、いずれ訪れると信じたい家族の再生の手前のような静けさを感じさせる作品です。
普段はとくに意識することもなく繰り返している“呼吸”という動作が、実はとても豊かで、神聖なものに思えた。春彦はずっと苦しいまま死んでしまったのだろうか。
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Posted by ブクログ
一息一息の呼吸が文字を追うごとに感じて、登場人物たちのリアルな息が伝わって感じました。
二つの物語が収録さてれいる本作ですが、共通しているのが、死に向かっていく人間たちの心情、憂いさがダイレクトに表現されているところで、表題作の「息」は、喘息に悩む姉弟が、日々の生活で、感じる息苦しさを色濃く表現していて、私自身も小児喘息に罹っていた経験があるので、共感する部分も数多くありました。もう一つの「わからないままで」は、両親が離婚し、母と共に生きた男性の物語で、母に末期の腫瘍が見つかり、母との最期の日々を描いた物語で、死に近づくにつれ感じる寂しさなどが、母から感じてきて、別れた夫や息子に対する想いなど