あらすじ
喘息の一息一息の、生と死のあわいのような苦しさ。その時間をともに生きた幼い日の姉と弟。弟が若くして死を選んだあと、姉は、父と母は、どう生きたか。喪失を抱えた家族の再生を、息を繋ぐようにして描きだす、各紙文芸時評絶賛の胸を打つ長篇小説。新潮新人賞受賞作「わからないままで」を併録。注目の新人、初めての本。
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Posted by ブクログ
息。普段意識してることもない行為が、苦しみをもたらしたとき、それが命を繋ぐ営みなのだとはっきりさせられる。
主人公の喘息による苦しみが、普段している行為だからこそはっきりとしたイメージというより体験に近いものを持って迫ってくる。読んでいる途中で、自分の息に耳を澄ませ確かめる。私の息は普段よりも荒くなっていた。
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内容事態は、よくありそうな暗い話ですが、文章が綺麗で読んでなぜかゆったり落ち着いた気分になる。最後の海のシーンは、主人公が気持ちを弟とすり合わせてるかのような表現や情景が美しかった
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読みながら何度も死んだ父のことを思い出した。思い出を喚起する小説に出会うことがある。隠れていた過去や出来事の側面が、小説のすぐれた描写に触発されて、まざまざと蘇るような小説が。
これははまさしくそういった小説だった。
二作品が収録されているが、二つともに共通するのは喘息、きょうだいの死、風来坊の父、である。
おそらく自身の体験なのだろうと思う。
次の作品ではこの二つのモチーフから飛び出したものを読んでみたい。
この人は芥川賞を獲ると思う。
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弟の自殺がきっかけとなり、生きる意味について考える登場人物たち。
弟の自殺した理由がわからないまま考え悩み続ける主人公は、死んだ弟が幼い頃に残した言葉、おとなになっても苦しいままだったらどうする?という問いかけを幾度も反芻する。
主人公は、弟のその問いかけに対してはっきりとした答えは、物語の中では示していない。
しかし、生きていく中で、偶然目にする驚きや感動とも言えないまでも、心動かされる情景、それらはとても弟に対してへの回答にはならないが、弟の死と向き合い、考え続ける姉の目を通して語られるそれらの描写に心奪われるのは、私だけでは無いはず。
そしてうまく言葉では表せないけれども、その中にほんの一握りの生きる意味や希望を見いだすことができるんじゃないかとそんなふうに考えた。
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繊細で美しい詩のような小説。
わたしは詩そのものは好きでない…というか、読めないのだが、詩のような小説が大好きなのだと気づく。
物語に大きな起伏はなく、ただ過去に起こったことを静かに乗り越えていくさまが描かれている。
家族や死について考えさせられもするけれど、むしろ生きることについて問われている気がした。
繊細な人が多い今の時代をある意味象徴している小説のような気もする。
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残されたものがその「死」に、どう向き合っていくか。
喘息の息苦しさ、生きていく苦しさ。
とにかく、そんなものがギューーっとつまった本。
少しの生きる光みたいなものがあるにはあるけど、読んでてほとんどずっと苦しい。
元気なときに読むべきか?
いや、ほんとに苦しい時に読むというのもありかもしれない。
喘息ってこんなにしんどいんだ、と思った。
息ができなくなりそうな病気なんだな。
後半の作品『わからないままで』は、『息』と同じ骨格で、違う話を書いてみた、とか、そういうものなのかな?
なんか、似たようなストーリー展開。
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[息]15年ぶりに喘息発作が出てしまった主人公タマキは、実家に立寄りながら幼い頃世話になっていた小川医院を訪れます。10年前に亡くした弟春彦に対する、タマキや父母や小川医院の人々の思いが綴られたストーリーだったと思います。情景描写をするような文章で、感情が前面に出過ぎない好印象な作品でした。
星4つです。
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ダヴィンチ・プラチナ本から。表題作☆4.5、B面☆2.5で平均3.5からの☆4つ。B面もつまらなくはないんだけど、表題作の次に読まされると、ずいぶん分が悪い。いかんせん、デビュー作たるB面の、良い部分をグッと洗練させて、さらにそこから膨らませての表題作、って感じだから、その差歴然。その分、表題作はずいぶん素晴らしい出来。
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帯の文章に惹かれ何気なく手に取った一冊だったけれども、表現、描写が胸に迫ってくるようで、所々で涙が溢れるほどだった。
「わからないままで」の母、息子、夫のそれぞれの視点で描かれているが、それぞれの思いが痛いほど伝わってきた。
死に際しての母の思いは、私自身の母と重なり、また、私自身が自分の息子に対して感じていることと重なった。
繊細だけれども、心にぐっと染み入るようなそんな文章でした。
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文体が美しくリズムも心地よくてスッと読めた。けど、2篇の設定に近しいところがあってその共通点を探ったりなどしてしまい深く物語に入っていけなかった。でも文の美しさなどは好きな感じではあったので、小池さんの別の作品を読みたいと思った。
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喘息の幼少期を共に戦った弟を自死で亡くした姉。当時はお互い何も語らなかったが、父も母もそれぞれ弟のことで心に傷を負っていた。
ちょっと苦手な文体で読みづらかった。
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自ら命を断つこと、それがどれだけ身内を苦しめるか、それに心が引っ張られて鬱々しくなってしまったが、でも逆に何もない人がその事実によって何者かになれて日々の意識の向かう先を得ることもできる、こうやって物語にすることもできる
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「息」と「わからないままで」の二つが収録されている。「わからないまま」の方が新潮新人賞を受賞という帯をみて読んでみた。若い著者の本だがそれを感じさせない本だった。
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中短編 2編収録。
「息」
喘息患者の苦しみや、命の脆さを強く感じた。
近しい人を失った家族が、悲しみを乗り越え生きる姿に胸が締め付けられる…
ストーリーや登場人物の状況は重く悲しみを感じるが、 暗さに沈まず、 希望や再生の光を見出す。
静かで美しい純文学の魅力に満ちた作品。
Posted by ブクログ
読んでいて息苦しくなった…
自殺をしてしまった姉の弟、自殺をしてしまった弟がいる姉の話
そのことをずっとひきずってしまうその苦しさ…
自殺は、ほんとに周りを不幸にする。
Posted by ブクログ
新潮新人賞受賞作『わからないままで』を収録したデビュー作。
表題作の『息』は、大人になって頻繁に再発するようになった喘息の症状に苦しめられる女性の話。幼少時に同じく喘息を患っており、一年前に亡くなってしまった弟の春彦をめぐり、父親と母親、主治医の娘であり春彦の恋人でもあった女性とも関わりながら、息苦しい中で少しずつ彼の死を受け入れていく。緊張と緩和を行き来しながら、いずれ訪れると信じたい家族の再生の手前のような静けさを感じさせる作品です。
普段はとくに意識することもなく繰り返している“呼吸”という動作が、実はとても豊かで、神聖なものに思えた。春彦はずっと苦しいまま死んでしまったのだろうか。
そして『わからないままで』は、ひとつの家庭の離散がもたらす長きにわたる影響や変化を、妻、夫、その息子の三者の視点から抑制の利いた筆致で描く。
〈出会って、家庭を持って、そうしてどちらかが死ぬまで添い遂げることができたら、もちろんそれはひとつの、喜ばしいかたちだと思う。わたしたちは、そうはならなかった。〉
〈あなたのお父さんとわたしにとって、きっとこれもまたふさわしいかたちのひとつだったのだと、そんなふうに思う。〉
納得のいかなさや不条理な思いを噛み締めながらここまで生きてきて、私もようやく最近はその手応えを得ている。
今はまだわからなくてもいい、わからないままでも大丈夫、いつかきっとわかるのだから、と。根拠のない自信で言い聞かせて、延命するみたいに。
Posted by ブクログ
一息一息の呼吸が文字を追うごとに感じて、登場人物たちのリアルな息が伝わって感じました。
二つの物語が収録さてれいる本作ですが、共通しているのが、死に向かっていく人間たちの心情、憂いさがダイレクトに表現されているところで、表題作の「息」は、喘息に悩む姉弟が、日々の生活で、感じる息苦しさを色濃く表現していて、私自身も小児喘息に罹っていた経験があるので、共感する部分も数多くありました。もう一つの「わからないままで」は、両親が離婚し、母と共に生きた男性の物語で、母に末期の腫瘍が見つかり、母との最期の日々を描いた物語で、死に近づくにつれ感じる寂しさなどが、母から感じてきて、別れた夫や息子に対する想いなども表現さてれいて、
涙が出てきそうでした。