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余命わずかな継母と、念願の出産を控えた娘。母が去り、父が去り、長年この継母をただ一人の母として生きてきた娘は、その姿をなんとかこの世にとどめようと、母の《記録》を専門の担当者に依頼する。やがて継母は、心の底に沈めていた記憶を語りはじめる……。思い出すことの痛みとその豊かさ。期待の新鋭による意欲作。
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Posted by ブクログ
とつとつと、静かな語りで紡がれる物語。 深層の感情を言葉にするのは難しいけれど、これと向き合うには、日々を忙しく過ごす現代には時間が足りないのかもしれない。そこに意識を向けるということも少ないのかも。 静かに自分と対話をする。そんな時間を持つには、歳を重ねるしかないのだろうか。
病に冒された冬香(ふゆか)74歳は、無用な延命治療をやめ、血の繋がらない娘に協力してもらいながら何とか暮らしています。その娘から求められてAIで自分の分身を作ることに。そのためのインタビューを通じて、冬香は自身の過去を振り返り思い起こしていくことになります。妄想のような幻想のような描写で高齢女性の心...続きを読む情が丁寧に語られているように感じました。後悔の気持ちが前面に出ているようで私としては少しだけ読み疲れました。星3つの評価といたしました。
血の繋がらない死ぬ直前の母と、妊娠中の娘 夫は再婚後、女を作って出ていき、2人きりで暮らしたきた 娘は母の記録を残したいため、母のAIを作ろうとする そのための過去の記憶のインタビューで、娘の知らない母の過去が明らかになる 母は一度自分の子を流産していた そしてその悲しみの記憶を抑え込んで、血の繋が...続きを読むらない娘に全ての愛情を注いできた 死ぬ間際でその悲しみが溢れ出す 普通の母娘ではない2人の強い結びつきとその危うさ、両方が描かれている傑作 私は既に母は亡くなっているが、母の強さ、悲しみ、愛情を思い知らされ、母との日々を思い返した
記録(遠い過去を克明に思い出して言葉にすること)が、曖昧に捉えてきた経緯や意思に輪郭線を引き、色を決め、濃淡を定める。 それは時に、ただ引き出しを開くような安易な行為ではなく、閉じた唇を開き、粘膜を掻きわけ、狭く深い奥底へと手指を押し込むような困難なものとなりえる。 必ずしも望んだものとは限らず、...続きを読む歪なかたちをして、引き出す過程で激しい苦痛を伴うことさえある。 ただ、その輪郭を指で一周たどることで、それがほとんど無意味な営みだったとしても、どれだけ痛みが伴うものだったとしても、違う目が注がれることになるかもしれない。 このAI時代に、そのAIでは成し遂げられない、本当の意味での「記憶の紡ぎ方」を考えるきっかけになった。
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