小池水音のレビュー一覧
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弟の自殺がきっかけとなり、生きる意味について考える登場人物たち。
弟の自殺した理由がわからないまま考え悩み続ける主人公は、死んだ弟が幼い頃に残した言葉、おとなになっても苦しいままだったらどうする?という問いかけを幾度も反芻する。
主人公は、弟のその問いかけに対してはっきりとした答えは、物語の中では示していない。
しかし、生きていく中で、偶然目にする驚きや感動とも言えないまでも、心動かされる情景、それらはとても弟に対してへの回答にはならないが、弟の死と向き合い、考え続ける姉の目を通して語られるそれらの描写に心奪われるのは、私だけでは無いはず。
そしてうまく言葉では表せないけれども、その中 -
Posted by ブクログ
ネタバレ記録(遠い過去を克明に思い出して言葉にすること)が、曖昧に捉えてきた経緯や意思に輪郭線を引き、色を決め、濃淡を定める。
それは時に、ただ引き出しを開くような安易な行為ではなく、閉じた唇を開き、粘膜を掻きわけ、狭く深い奥底へと手指を押し込むような困難なものとなりえる。
必ずしも望んだものとは限らず、歪なかたちをして、引き出す過程で激しい苦痛を伴うことさえある。
ただ、その輪郭を指で一周たどることで、それがほとんど無意味な営みだったとしても、どれだけ痛みが伴うものだったとしても、違う目が注がれることになるかもしれない。
このAI時代に、そのAIでは成し遂げられない、本当の意味での「記憶の紡ぎ -
Posted by ブクログ
「僕」は五歳の時、母を病気で亡くした。以来、2軒の祖父母の家、叔母さんの家を行き来して過ごす。
ある時、通っていた幼稚園にイギリス帰りの「さりかちゃん」が転入してくる。
両祖父母も叔母さんも、何不自由なくこの上なく僕を慈しみ、大事にしてくれる。
そんな生活の中のにさりかちゃんが入ってきた。
外国暮らしが長く、あまり周囲に溶け込めないさりかちゃんとの距離は徐々に縮まり生活の大半はさりかちゃんと過ごすようになる。
5歳から6歳にかけての半年ほどの期間の出来事やその時の気持ちなどを大きくなった(高校生くらい)の僕が回想している。
その時々、思っていたこと、考えてきたこと。
優しく接してくれる大人たち -
Posted by ブクログ
ネタバレ「今の神崎の状況について、俺の口からは何も言えない。けれどな、とにかく、じぶんの頭で考えるんだよ。うまいやり方を探すんじゃない。今の神崎だけができることを、神崎の頭を使って考えるんだ。そして考え抜いたら、それを伝えに行くんだよ。じぶんの言葉でな。俺たちにできることは、神崎、てだそれだけなんだ」
望まない方向へと向かわせているものは、一体何なのか。
「じぶんの頭で考えるんだ」
育てているはずの親が、むしろ子どもの方から、多くのことを教わっている。舞がまだ幼い頃には、日々、そんな風に感じて過ごしていた気がする。そう感じなくなったのはきっと、舞が変わったためではなかった。いつの頃からか自分たち