小池水音のレビュー一覧

  • あなたの名

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    ネタバレ

    血の繋がらない死ぬ直前の母と、妊娠中の娘
    夫は再婚後、女を作って出ていき、2人きりで暮らしたきた
    娘は母の記録を残したいため、母のAIを作ろうとする
    そのための過去の記憶のインタビューで、娘の知らない母の過去が明らかになる
    母は一度自分の子を流産していた
    そしてその悲しみの記憶を抑え込んで、血の繋がらない娘に全ての愛情を注いできた
    死ぬ間際でその悲しみが溢れ出す
    普通の母娘ではない2人の強い結びつきとその危うさ、両方が描かれている傑作
    私は既に母は亡くなっているが、母の強さ、悲しみ、愛情を思い知らされ、母との日々を思い返した

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    2025年10月13日
  • 息

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    息。普段意識してることもない行為が、苦しみをもたらしたとき、それが命を繋ぐ営みなのだとはっきりさせられる。
    主人公の喘息による苦しみが、普段している行為だからこそはっきりとしたイメージというより体験に近いものを持って迫ってくる。読んでいる途中で、自分の息に耳を澄ませ確かめる。私の息は普段よりも荒くなっていた。

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    2025年05月12日
  • あのころの僕は

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    幼くして母を亡くした天は、父だけでなく、えり叔母さん、ゾウのおばあちゃんそして父方の祖父母達の家で過ごす。幼いながらも自分の今の状況を観察する天。5歳の時イギリスから来た、さりかちゃんとゲームの世界に没頭するのだが。小池水音さんの作品、今回もとても良かった。

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    2025年03月16日
  • あのころの僕は

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    いまだに忘れられない言葉があって
    いまだに忘れられない視線がある
    この本を読んでいて、そんなことを思い出した

    胸なのか頭なのか分からないけど
    身体のどこかに眠る記憶
    忘れはしても
    大事でなくなったとは違うのだ

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    2025年01月20日
  • あのころの僕は

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    繊細な話。
    5歳の子どもらしい未整理な心の中を16歳となった天が振り返るだけなのだが、5歳の天の心の揺れや成長、周囲の大人たちへの距離感、踏みだすまでの逡巡などが見事に表現されていて、心を揺さぶられた。読みながら、父で、ゾウのおばあちゃんで、叔母さんで、様々な立場から天を見まもるような気持ちだった。そう、いつかきっといろんなことがわかる日がくるよね。
    さりかの大人びた子どもらしさに胸を打たれた。
    終わり方も良かった。

    他の作品も読もう。

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    2025年01月08日
  • 息

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    内容事態は、よくありそうな暗い話ですが、文章が綺麗で読んでなぜかゆったり落ち着いた気分になる。最後の海のシーンは、主人公が気持ちを弟とすり合わせてるかのような表現や情景が美しかった

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    2023年09月23日
  • 息

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    読みながら何度も死んだ父のことを思い出した。思い出を喚起する小説に出会うことがある。隠れていた過去や出来事の側面が、小説のすぐれた描写に触発されて、まざまざと蘇るような小説が。
    これははまさしくそういった小説だった。
     二作品が収録されているが、二つともに共通するのは喘息、きょうだいの死、風来坊の父、である。
    おそらく自身の体験なのだろうと思う。
    次の作品ではこの二つのモチーフから飛び出したものを読んでみたい。
    この人は芥川賞を獲ると思う。

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    2023年08月06日
  • 息

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    弟の自殺がきっかけとなり、生きる意味について考える登場人物たち。

    弟の自殺した理由がわからないまま考え悩み続ける主人公は、死んだ弟が幼い頃に残した言葉、おとなになっても苦しいままだったらどうする?という問いかけを幾度も反芻する。

    主人公は、弟のその問いかけに対してはっきりとした答えは、物語の中では示していない。

    しかし、生きていく中で、偶然目にする驚きや感動とも言えないまでも、心動かされる情景、それらはとても弟に対してへの回答にはならないが、弟の死と向き合い、考え続ける姉の目を通して語られるそれらの描写に心奪われるのは、私だけでは無いはず。

    そしてうまく言葉では表せないけれども、その中

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    2023年06月21日
  • あのころの僕は

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    目の前の出来事が全部だった子供の頃の気持ち。逃げようもなく、言葉にもできず、もどかしく、受け止めざるを得ない現実。さりかちゃんと天は笑って会話ができただろうか。

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    2025年11月04日
  • あなたの名

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    とつとつと、静かな語りで紡がれる物語。
    深層の感情を言葉にするのは難しいけれど、これと向き合うには、日々を忙しく過ごす現代には時間が足りないのかもしれない。そこに意識を向けるということも少ないのかも。
    静かに自分と対話をする。そんな時間を持つには、歳を重ねるしかないのだろうか。

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    2025年09月30日
  • 息

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    繊細で美しい詩のような小説。
    わたしは詩そのものは好きでない…というか、読めないのだが、詩のような小説が大好きなのだと気づく。
    物語に大きな起伏はなく、ただ過去に起こったことを静かに乗り越えていくさまが描かれている。
    家族や死について考えさせられもするけれど、むしろ生きることについて問われている気がした。
    繊細な人が多い今の時代をある意味象徴している小説のような気もする。

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    2025年09月02日
  • あなたの名

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    ネタバレ

    記録(遠い過去を克明に思い出して言葉にすること)が、曖昧に捉えてきた経緯や意思に輪郭線を引き、色を決め、濃淡を定める。

    それは時に、ただ引き出しを開くような安易な行為ではなく、閉じた唇を開き、粘膜を掻きわけ、狭く深い奥底へと手指を押し込むような困難なものとなりえる。
    必ずしも望んだものとは限らず、歪なかたちをして、引き出す過程で激しい苦痛を伴うことさえある。

    ただ、その輪郭を指で一周たどることで、それがほとんど無意味な営みだったとしても、どれだけ痛みが伴うものだったとしても、違う目が注がれることになるかもしれない。

    このAI時代に、そのAIでは成し遂げられない、本当の意味での「記憶の紡ぎ

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    2025年08月09日
  • あのころの僕は

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    自分が幼かった頃の気持ちを思い出す作品。

    大人もそうなのかもしれないが、子ども時代にどのような人と出会うかということは、その後の人生に大きく影響を与えるものだと思える。

    天くんもさりかちゃんも、そのときに出会って、濃密に過ごした時間は、貴重なものだったのだろう。

    ただ、私にはこの方の文章は少し苦しくなるな…

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    2025年03月06日
  • 息

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    残されたものがその「死」に、どう向き合っていくか。

    喘息の息苦しさ、生きていく苦しさ。
    とにかく、そんなものがギューーっとつまった本。
    少しの生きる光みたいなものがあるにはあるけど、読んでてほとんどずっと苦しい。
    元気なときに読むべきか?
    いや、ほんとに苦しい時に読むというのもありかもしれない。

    喘息ってこんなにしんどいんだ、と思った。
    息ができなくなりそうな病気なんだな。

    後半の作品『わからないままで』は、『息』と同じ骨格で、違う話を書いてみた、とか、そういうものなのかな?
    なんか、似たようなストーリー展開。

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    2025年01月27日
  • あのころの僕は

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    「僕」は五歳の時、母を病気で亡くした。以来、2軒の祖父母の家、叔母さんの家を行き来して過ごす。
    ある時、通っていた幼稚園にイギリス帰りの「さりかちゃん」が転入してくる。
    両祖父母も叔母さんも、何不自由なくこの上なく僕を慈しみ、大事にしてくれる。
    そんな生活の中のにさりかちゃんが入ってきた。
    外国暮らしが長く、あまり周囲に溶け込めないさりかちゃんとの距離は徐々に縮まり生活の大半はさりかちゃんと過ごすようになる。
    5歳から6歳にかけての半年ほどの期間の出来事やその時の気持ちなどを大きくなった(高校生くらい)の僕が回想している。
    その時々、思っていたこと、考えてきたこと。
    優しく接してくれる大人たち

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    2025年01月17日
  • 息

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    [息]15年ぶりに喘息発作が出てしまった主人公タマキは、実家に立寄りながら幼い頃世話になっていた小川医院を訪れます。10年前に亡くした弟春彦に対する、タマキや父母や小川医院の人々の思いが綴られたストーリーだったと思います。情景描写をするような文章で、感情が前面に出過ぎない好印象な作品でした。
    星4つです。

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    2024年12月22日
  • あのころの僕は

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    お母さんはなくなってしまったけど、たくさんの愛情で育てられた主人公。子どもの心情が繊細に描かれていて、文章に惹きつけられた。朝焼け前の青の描写も素晴らしい。あの場面は感動した。
    ゾウのおばあちゃんの娘に対する愛情も切なくなった。
    ラストはさりかちゃんに会えたのかな?どんな話をしたんだろう。

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    2024年12月22日
  • 息

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    ダヴィンチ・プラチナ本から。表題作☆4.5、B面☆2.5で平均3.5からの☆4つ。B面もつまらなくはないんだけど、表題作の次に読まされると、ずいぶん分が悪い。いかんせん、デビュー作たるB面の、良い部分をグッと洗練させて、さらにそこから膨らませての表題作、って感じだから、その差歴然。その分、表題作はずいぶん素晴らしい出来。

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    2024年11月06日
  • 息

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    評価低すぎないか?

    雰囲気も表現もとても良かった。
    新鮮な描写が多く、また読みたい作家さんだ。

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    2024年01月20日
  • 小説 こんにちは、母さん

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    ネタバレ

    「今の神崎の状況について、俺の口からは何も言えない。けれどな、とにかく、じぶんの頭で考えるんだよ。うまいやり方を探すんじゃない。今の神崎だけができることを、神崎の頭を使って考えるんだ。そして考え抜いたら、それを伝えに行くんだよ。じぶんの言葉でな。俺たちにできることは、神崎、てだそれだけなんだ」

    望まない方向へと向かわせているものは、一体何なのか。
    「じぶんの頭で考えるんだ」

    育てているはずの親が、むしろ子どもの方から、多くのことを教わっている。舞がまだ幼い頃には、日々、そんな風に感じて過ごしていた気がする。そう感じなくなったのはきっと、舞が変わったためではなかった。いつの頃からか自分たち

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    2023年10月21日