遠坂八重のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
【消えて欲しい上司が、ある日本当に消えた】
タイトルと表紙の印象とは裏腹に、本作は最初から最後まで救いの少ない重苦しいストーリーが続きます。(※人の心に優しく寄り添うタイプの作品ではありません)
時代錯誤のパワハラ上司、劣悪な環境に従うしかない社員たち、職場環境を改善できない会社、そして捜査力に乏しい警察と。
それぞれが“自分で蒔いた種”や“気づかぬうちに蒔いていた種”を抱えているんですね。「結局、誰が一番悪かったのか」という問いが最後まで頭に残り続けます。最後の真相がハッキリした後に襲いかかってくるこのモヤモヤ感と余韻がたまりません。
登場人物たちの本音と建前が渦巻く中、目を背けたくなるような劣悪な環境で起こる事件に、逆に目が離せなくなる。その不穏さと妖しさこそが、この作品最大の魅力だと感じます。 -
購入済み
やばいやばい、怖すぎるって、もういいって途中から背筋が寒くて仕方なかったよ、、、。
最初は私も前川の罵詈雑言にイラっときて、うわぁこんな上司だったら葬りたくなるなと部下に同情して、
尋常じゃない時間の残業を毎日繰り返す青瀬たちにも同情して、
そりゃこんな上司と毎日顔を突き合せなきゃいけないならばパフォーマンスなんて上がるわけないよなと思い、
え前川いなくなったやんと思ったら、本当に死んでる?という疑問に変わり、
読み進めていくうちに「ええええそっちぃぃぃ」ってなったし、
さらに読み進めるともう訳の分からない展開が待ち受けていて、
人間こわ!!!となった。
ホラーですよこれは、結局幽霊なんかより人間が怖い。
でも面白かった。
内容に全部持ってかれたけど、このブラック具合はとんでもない。 -
Posted by ブクログ
登場人物のキャラが立っていて読みやすい。主人公ふたりと双子以外もすみれ子や先生たちも見た目や動きが想像できた。
実質学内探偵みたいな便利屋的ポジションの活動って学校ミステリの十八番ではあるけれど、文芸部とか推理小説研究会とかそれっぽいのが多い中で「たこ糸研究会」って!蓮司も麗一も魅力的だしシリーズ続いてほしいな〜と思っていたら続編が出ているようなので読みたい。
死体の描写から始まるプロローグに引き込まれたし、途中なかなか酷いことが起きつつもエピローグの終わり方も爽やか。犯人の動機はぶっ飛んでるけど、丁寧な伏線が張られていたから納得した。面白かった。
副題が『Dの悲劇』になってるのもいい。ドールハウスの惨劇でありつつ、dollともdaughterとも取れるDを使いながら、最後はドールの方からパペットだったと言わせて壊すのが好き。 -
Posted by ブクログ
ネタバレパワハラ上司に詰められながら毎日深夜まで残業を行う主人公の、毎日の仕事連絡に追われる様子、どんどん自分の心身が削られていく様子がリンクしたように感じられる追い込まれている心理描写に影響を受けてしまう。
私も読んでいる間は目の前の仕事を億劫に感じてしまうほどでした。(おそらくシルバーウイークの影響)
原因となるパワハラ上司の失踪から会社と業務が落ち着くのかと思いきや、周りからの目線や対応に別の意味でより心身を疲労させていく主人公がさらに追い込まれていく様子が仕事だけではなく住居にも影響していくのが苦しい。
ミステリのため謎がどうなるのか登場人物の誰がなのか、と勘繰りながら読んではいたけれど、最終ではそうだったのかよーってちょっとくらった部分はありました。
人はやっぱり置かれる環境で順応していくわけだから、合わない・違うと思ったのなら速やかに環境を変える方が自分のためになるよね、と改めて感じました。
今少し仕事について後ろ向きな気持ちで読んでしまっていたゆえに、周りから見た主人公の評価がまるで自分のことのように感じてしまったけれど、おそらく適材適所のため、場所も変われば評価も変わるだろう…と前向きなメッセージにも感じる。
その為最後、主人公が行った行動には十分な休息も含めて思考が正常に戻ったからこそ、前いた環境の違和感から逃げる選択が取れるようになってたのが成長を感じた。 -
Posted by ブクログ
過酷な労働環境で身を削る主人公。
パワハラ上司に強い殺意すら抱く日常のなか、その上司が突如失踪したことで、物語は怒涛の展開へと動き出します。
会話文やチャットのやり取りを多用しているため、テンポが良く非常に読みやすい反面、描かれる内容は息が詰まるほどの心理的圧迫感に満ちています。
途中でふと覚える微かな「違和感」が次第に膨らみ、終盤で一気に全貌が明かされる構成は見事です。
ただ、結末は普通のミステリっぽい意外性ではなく、妙な納得感とどこか嫌な予感が当たってしまった感覚が同居し、読み終えた後は何ともやるせない気持ちになりました。
同時に、『推し、燃ゆ』や『コンビニ人間』といった作品を連想しました。
本作も、「普通」の枠組みに上手く適応できず、一般社会のなかで浮き上がってしまう人々の生きづらさが克明に描かれています。
仕事も人間関係も日常生活も、悪気やふざけ半分ではなく、もちろんサボっている意識もなく、本人は至って一生懸命に生きているのです。
だからこそ、周囲に一人でもその不器用さに寄り添い、寛容でいてくれる存在がいることの尊さを痛感します。
その意味で、作中における「ニナちゃん」の存在には、読者である私自身も深く救われる思いがしました。
これで、ミステリの部分がもう少し本格派なら、個人的には最高だったと思います。