佐伯一麦のレビュー一覧

  • 芥川賞を取らなかった名作たち
    本書は芥川賞にまつわるスキャンダラスな出来事よりも、受賞できなかった名作にスポットをあて、鑑賞することに重点を置いています。本書のあおり文から連想するよりも、至極真っ当な文学批評ですね。
  • 芥川賞を取らなかった名作たち
    [ 内容 ]
    第一回芥川賞選評で、「生活の乱れ」を指摘された太宰治。
    受賞の連絡を受け、到着した会場で落選を知らされた吉村昭。
    実名モデル小説を「興味本位で不純」と評された萩原葉子…。
    「私小説を生きる作家」として良質な文学を世に問い続ける著者が、芥川賞を逃した名作について、その魅力を解き明かす。
    ...続きを読む
  • P+D BOOKS ア・ルース・ボーイ
    母親や幼い頃の自分に囚われていたあきらが、沢田さんを通して壁の中の世界や天井の中の世界を知り、自分を解放されるのを感じました。最初のルースと最後のルースの意味が変わっているのがあきらの心の変化を読み取れてよかったです。
  • アスベストス
    アスベストを題材にした四つの物語からなる短編集。『せき』、『らしゃかきぐさ』、『あまもり』、『うなぎや』の四篇のうち最後の『うなぎや』が読んでいて分かりやすかった。アスベストによる健康被害は、発病するまでの期間が長いため、本当に大変なことだと感じた。
  • アスベストス
    自身が被害者であることで、症状や痛みの表現など、大変痛々しく読みました。
    奇跡の鉱物に対する評価をやり過ごし、人間の都合を優先した結果のしっぺ返し。誰が命を守るのか。水俣や福島となんにも構図は変わらない。
  • アスベストス
    アスベストによる健康被害を主題にした4篇からなる連作短篇集。佐伯さんの作品を読むのは初めてだが、ご自身も過去にアスベストを吸い込み後遺症を抱えているらしい。その経験を踏まえてなのか、私小説なのかはわからないが、どのような状況でアスベスト被害に遭ったのかがとてもリアルに描かれている。
    問題を先送りし後...続きを読む
  • アスベストス
    小説なのかノンフィクションなのかちょっとわかりにくいが、中古マンションのリフォームの話は、築40年近くの軽量鉄骨に住む身としては他人事でなく読んだ。
  • 男性作家が選ぶ太宰治

    趣味を人に合わせてコミュニケーションの手段にしてしまう、ご飯の為に適当に合わせる…つまり〇〇を見れば〇〇は興味を持てない人生を上手く生きるためのものかもしれません
    自分の個性について考えさせられる作品でした。人が冷たくなるってこんな感じなんだと思いマス。
  • 山海記
    山海記(せんがいき)

    佐伯一麦著
    2019年3月20日
    講談社

    奈良県橿原市の大和八木駅から和歌山県の新宮駅まで、高速道路を通らない路線バスとしては日本一長いバス路線がある。距離166.9キロ、停留所数167、所要時間6時間30分、乗車料金は5250円。私も最初に大阪から車で十津川村~新宮へ取材...続きを読む
  • 空にみずうみ
    著者自身をモデルとする、東北に暮らす作家の早瀬と、その妻で染色作家の柚子の、震災から三年が経った日々の暮らしを綴った作品です。

    植物や野鳥など生活に身近な自然の営みをていねいに観察し、近所に暮らす人びとと交流するありさまを通して、静かな日常がえがかれていますが、これらの出来事が「震災以後」というエ...続きを読む
  • 山海記
     10年前、2009年に豊橋を出発して伊勢に亘理、吉野から山に入り十津川を新宮まで抜け、串本を回って和歌山まで自転車で走った。
     十津川は北海道以上に何もなく、100km走ってコンビニもない。
     昼飯どうしようかと、当時はつるんで走る二人で困り、十津川の河川敷にテントを張って野宿したりと、五日間走っ...続きを読む
  • 芥川賞を取らなかった名作たち
    私自身は芥川賞に何の思い入れもなく、
    賞を取った作品だからどうという事もない。
    寧ろミーハーな感じがあり、近年の受賞作品は避けてすらいる。
    しかしながら友人に
    芥川賞を取った作品を好んで−近年に至っては欠かさず−読むという人間がいて、
    その友人が勧めてくれた本。

    当然のことだが受賞作品に脚光が当た...続きを読む
  • 還れぬ家
    認知症の父に向き合う、ひたすら日常を重ねた物語。仙台が舞台のため、東日本大震災の話も出てくる。
    特にドラマチックというわけではないのだが、何故か読まされてしまう。
    家というもの、家族というもの。
    これから直面するであろう現実をみたきがする。