本書に興味をもったきっかけである成田氏と斎藤氏に関しては、それぞれの著作やYoutube動画などを通して、研究内容と主張は理解していた。
本書ではその再確認といった感じだったため特に大きな発見はなく、
一方で自分が知らなかった小島氏と内田氏の研究などについては興味深く楽しく読めた。
日本で注目される天才たちの先端研究を、まとめてサクッと読める点には強いメリットがあるので、それぞれの著作を読んだことがない人にはとても良いだろう。
なんせ読みやすい。
成田氏から小島氏までの章を通して読んで特に気になった点は、
「重大な意思決定を行う人も、基本的に自分のそれまでの経験をもとに判断を下す」という事実。
これはもちろんそうだし、分かっていたことであるが、
例えば政策を決定するとき、専門家自身や、専門家団体が決定を下すわけではない。
あくまで専門家の意見を受けて、政治家などが決定する。
もちろん、諮問会議や政策会議があり、党から政策を提言し、採択を経て決定される。
しかし最終決定は、その意思決定の影響を受ける全体数から比べると極めて少ない人数が左右する。
その人物たちが、たとえ多くの幅広い本を読んで多面的な視点を持ち、多くの有権者や専門家の話に耳を傾けたとしても、
必ずなんらかのフィルターがかかってしまう。
成田氏の主張する、「アルゴリズムが決定する」という視点ではその大きな問題が解決される。
小島氏の主張では、最終決定は人間だが、アルゴリズムが、個人の経験だけに基づかない、データによる案を出す。
斎藤氏の主張ではコモンによって我々が属する各コミュニティ単位で自らに関わる政策に意思決定のチャンスが生まれるが、
ここには同様にやはり社会主義における大きなリスク、独裁者の発生や為政者の腐敗、内輪贔屓というものが避けられない。
ここでもまた、意思決定をする人のフィルターが邪魔をするため、アルゴリズムが活躍する余地がある。
意思決定の公平性を担保するために、アルゴリズムを頼るという選択肢は、今後よりその存在感を強めていくだろう。
本書では4人それぞれへ「天才の未来予測図」が見えてくる○○の問い」という質問が十数個ずつ用意されているが、
斎藤氏の主張の中で僕が気になっていた点に関しての質問はなく、やや残念だった。
「コモン単位における独裁や腐敗へのリスクにはどのように対処するか」
「地域に大勢の外部の人が流入することによって地域自体が外部の人に乗っ取られる危険性はないか」
「各国各地域によって得られる生産物は異なるが、その生産物や資源をどのようにして効果的に他地域に再分配するか」
これは氏の今後の発信や他の情報源などから解決策を見つけ出していきたい。
内田氏の章に関しては、僕自身のメンタルが全然揺らがない気質であるからかいまいち自分事に捉えにくかった。
ただ、子育てしやすい社会にしていくべきだとか、科学的エビデンスをメディアがより尊重する必要があるという主張に関しては共感する。
以上。成田氏面白いな~