渡辺正峰のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
●マインドアップローディングという技術を主軸に、科学と哲学の両面から、「意識」について探索した本。
●意識はどうやって生まれるのか、人間にしかないものなのかを知りたい。
●本書は、マインドアップローディングという刺激的な技術を切り口に、科学と哲学の境界線から「意識」の正体を解き明かそうと試みる。特に興味深かったのは、自己同一性が「社会の捉え方」によって決まるという視点。青虫が蝶になっても同じ個体だと見なされるのは、社会がそのような変化を「同一性」の範疇に含めているからだという。もし社会が「猫が犬に変身する」ことを受け入れれば、それも同一だと見なされる可能性があるというわけなのだが、自己の定義がいかに脆く、外部に依存しているかを痛感させられる。マインドアップローディング後の欲望や理性がどう設定されるかという議論も含め、技術が進化するほどに「人間とは何か」という根源的な問いが重みを増していくことを実感した。自分の存在がデジタルに置き換わったとき、そこに「生き様」を見出せるのか、深く考えさせられる一冊。 -
Posted by ブクログ
意識とは何かを深く掘り下げた上で、著者の「意識のデジタル空間へのアップロード」に関する研究を紹介した本
意識や主観の実体が何かが気になっていたが、「感覚器官を通じて外部世界と接続し、脳の神経系が仮想現実を体験している状態」と本書で理解した。実際、現実世界と脳内で構成される世界との間には乖離があり、たとえば、我々は特定の光の波長を色として認識しているが、その「色」自体は物理的実体を持たない。
著者は生体脳の右脳と左脳のうち、片側が機能を失った場合、意識が残った側へ移行する現象に着目し、以下の手順で自らの意識を(コピーではなくそのまま)デジタル空間にアップロードする方法を提案している。
① 脳の半球分離:
人体の脳を左右の半球に分離する。分離の際、意識はどちらか一方の半球へ移行する。
②人工脳半球との接続:
分離した左右それぞれの半球を対応する人工脳半球に接続する。これにより、意識と記憶が人工脳半球へ統合・転送され、意識は第一段階で移行した生体脳半球と人工脳半球の組み合わせに宿る。
③ 生体脳半球の機能停止:
病気、怪我、老衰などにより、意識が宿っている生体脳半球が機能停止に陥ると、意識は自動的に人工脳半球へ移行する。
④人工脳半球の統合:
意識が宿った人工脳半球と、第二段階で意識の統合および記憶の転送を行ったもう一方の人工脳半球を統合する。
このプロセスにより、自我や主観の連続性を維持したまま、意識が人工脳にアップロードされ、デジタル空間内で「生き続ける」ことが可能となる。冒頭に書いたとおり、現状でも我々の意識は生体の感覚器官から得られた情報をもとに脳内で構築された仮想現実を体験しているため、上記の方法でもあたかも生身の肉体で現実世界を生きるかのように、デジタル空間において身体感覚を伴って生活できるという考えである。
ただし、この方法によりデジタル世界に意識を保持し続ける状態を「不死」と呼ぶべきかについては議論の余地があると思う。つまり、「生きる」と言うことをどう定義するかによってその答えが変わるのだと考える。もし「意識が存続すること」を生と捉えるならば不死と呼べるが、「(部分的にでも、)生身の体を機能させて現実世界に存在すること」を生と定義するならば、意識のアップロードは「生」とは呼べない。
もしかすると、そう遠くない未来に、「生」とは何か「死」とは何かと言う答えのない問いに対して、多くの人々が自分なりの考えを要求される時代が来るかもしれない。 -
Posted by ブクログ
中公新書での前著と被るところも多いが、比べるとこちらは少し実践寄りというか取っ付きやすい(前著の内容がうろ覚えなのですが)
ハードプロブレムと言われたりしている意識の問題だが、意識だけが科学で解き明かせない神秘的、特権的な存在である謂れはないとも思え、本書を読んでいるとブレイン・マシン・インターフェースの開発などを通じて理解がブレイクスルー的に進みそうな気もしてくる
でも、意識のアップロードまで来るとどうなのだろうか。イーガンの『順列都市』が引用されているが、同じイーガンでも『ディアスポラ』に出てくるハーマンみたいな「自分の曾々々孫」的なものになるのでは -
Posted by ブクログ
脳に意識が立ち上る現象も解明できていないなか、機械の意識を論じる大胆な論考に興味を持った。
外界からの情報をもとに、眼で見えて感じている世界は脳内現象である、と理解していても、不思議さの謎の解明には一歩も近づけない。しかしながら、睡眠中みたいに外界から遮断された状態でも見る夢のリアリティーに溢れた映像を思うと、脳内現象という理解は深まる。本書で言及されている、脳の半球と厳密に接続された機械の半球(残り半分の代替)が可能であれば、機械には意識が宿ったといえるのか、という奇想天外な発想には驚かされた。
それにしても、そもそも脳で発生する意識が進化の過程で、どのように獲得されたのか、謎は尽きずに、消化不良気味で読み終わる。