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物質と電気的・化学的反応の集合体にすぎない脳から、なぜ意識は生まれるのか――。多くの哲学者や科学者を悩ませた「意識」という謎。本書は、この不可思議な領域へ、クオリアやニューロンなどの知見を手がかりに迫る。さらには実験成果などを踏まえ、人工意識の可能性に切り込む。現代科学のホットトピックであり続ける意識研究の最前線から、気鋭の脳神経科学者が、人間と機械の関係が変わる未来を描きだす。
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Posted by ブクログ
意識って何だろうか? ある研究者は、情報が意識なので、月の石にも意識はある、と考えているそうです。 生き物の意識は、ニューロンの働きの中にあるようです。 ニューロンひとつの働きは、機械で再現できるので、ヒトの脳内のニューロンをひとつずつ機械に置き換えていけば、最終的には脳を機械に置き換えて、機械の中...続きを読むに意識が宿るとのことです。 そうなんだ〜と信じたい気持ちがありますが、その反対に、これってゼノンのパラドックスのアキレスと亀みたいなものじゃないかなと疑う気持ちがあって、現時点は、疑う気持ちのほうが強いです。 どっちにしても、錯覚の絵があったりして、難しいけど知的興奮をひきおこす内容いっぱいで面白かったです。
混みいった内容もありましたが、全体を通してとてもエキサイティングな内容でした。 まず1章では、脳の情報処理のメカニズムについて述べられています。 次に、2章で両眼視野闘争を例に出し、感覚器に入力されている=意識に上る、という訳ではないことを説明します。また、視覚野のどの箇所が意識に上るかどうかに連動...続きを読むして応答が変化するのかを調べた研究で、低次の視覚野よりも高次の視覚野の方が意識と関連しているニューロンが多いと述べられています。 3章では、操作実験(脳に刺激を与えるような実験)を利用して、NCC(意識の生成に必要な脳領域)を特定する研究について述べます。 4章では、主観的な経験である意識の、満たすべき要請(物理学で言うところの運動方程式やシュレーディンガー方程式)を明らかにする難しさについて述べられます。それでも、意識の自然則を実験により検証可能にする方法について議論がなされます(むしろ実証&反証可能性がなければ科学的な要請とは呼べないとも述べられている)。 5章では、統合情報理論のような情報(の統合)を意識であるとする理論と、情報処理のアルゴリズム自体が意識の担い手であるという2つの仮説について述べられています。なお、著者は後者の、特に脳内の生成モデルを意識の担い手として妥当だと考えているそうです。 終章では、脳と機械を繋いで機械に意識をアップロードするというSFチックな話が最後に著者の夢として語られます。 また、本書の趣旨とは逸れますが、fMRIがニューロンの入力信号を、電気生理実験でのスパイクが出力を反映しており、これらの結果を単純比較することができない場合があると言うのは面白かったです。また、統合情報理論の説明も分かりやすく、勉強になりました(説明例:2つのニューロンが同時発火した時に得られる情報量がそれぞれの単独での発火の際に得られる情報量の和よりも大きいとき、情報が統合されている状態であり、意識が存在する)。
90年代以降の脳科学の進展をよく解説してくれています。前半は基礎的な解説が多いですが、それらを踏まえて後半になると、機械でつくった脳半球と人間の脳半球を接合する構想などが登場。なんとサイバーパンクな! 絵空事としてではなく、工学者でありながら脳の解剖学的構造や生理に真正面から取り組んでこられた科学者...続きを読むとしての本気の考察で、とてもエキサイティング。 意識にのぼる前に体が勝手に反応しているスポーツ選手の脳内で起こっていることなども本書で説明されていて、自動車を運転している時の危険回避の自分の体験などとも通ずるものを感じました。 自分としては90年代は脳関係の本をずいぶん読んでいましたが、その後の脳科学を本書で概観することもできて、とても面白かったです。
私のようなに脳の処理能力の低いものにはなかなか難解な内容であった。が・・・ 機械処理としての脳は、例えば水車小屋に比べれば格段に複雑であるものの解明可能であるが、客観的に解明ができたとしても、脳の主観には一歩も近づかない、という考えには目からうろこが落ちる。この問題が分かれば機械に意識を宿らせること...続きを読むもできるかもしれないし、既に宿っていることが分かる!?かもしれない。そもそも科学的なアプローチでこの問題を解明できるのか、も分からない。そのような中でも、果敢にこの問題に挑戦している筆者をはじめとする研究者に、エールを送りたくなる。
結構難しかったので整理しながら読むといいと思う。最初から3章までは視覚に関する脳の機能を中心に様々な実験を通して脳科学的に意識の存在をどう研究するかについて述べている。時折出てくる研究とはなんたるかについての記述が面白かった。4章以降は意識を人工的に再現することについて迫っている。前半は前半で脳の具...続きを読む体的な話を一つずつ追う必要があるので難しかったが、後半は意識とは何かについて抽象的な話が展開されるのでさらにわかりにくい。だけどそのぶん読み応えが大きく、また初めて触れる分野だったのでとても面白かった。
「未来のどこかの時点では必ず人間の意識を機械に移植することが可能になる。」をテーゼに脳神経科学者の立場で脳の基本的な仕組みの解説から、様々な実験結果を丁重に解説していき、ディープラーニングや哲学なども含めて、テーゼの可能性を検証する。ややもすると冗長な感じも受けましたが、真面目に科学する姿勢とはこう...続きを読むいうことなのだなととても勉強になりました。また、我々は自由意志を持たない方向に議論が向かいつつあるとしながらも前野隆司教授の「受動意識仮説」に触れていないところが少し気になりました。
人の意識を宿した機械。SFであるようなイメージが、はたして現実にできるのか。その前に、そもそも「意識」の定義ができていないと、何をもって意識が宿ったとできるのかさえ分からないと。という問題から本書は入っていきます。 視覚という一つの感覚に焦点を当てて、それを見ている私たちは、それをどのように認識して...続きを読むいるのか、その仕組みを分かりやすく説かれています。意識の定義など、雲をつかむようで到底できないと読み始めましたが、すごいことに本書はそれに光を当ててきました。意識というものの輪郭が見えてくる知的好奇心の満足を味わうことができる内容になっていると思います。 そこから、その意識を、どのように機械に移植するのかの問題が残っていますが、それも将来の技術の課題がありますが、方向性が見えているということが分かります。未来の技術の発展に対しての希望が見えてくる読後感でした。
脳の構造を解き明かし、意識の謎を探る。意識はニューロンの回路に宿るのか。生理学的に脳をいくら解き明かしても、意識の謎は残りそうに思う。
色々この本はいいところがあるのですが、脳科学が確立されるに至った代表的な実験をざっくり概説してるところが好きでした。地道な「当たり前」の積み重ねである科学の営みから、意外な事実を見つけだす画期的な実験をするのがいかに大変か、ということも認識させられました。
人間はニューロンの集合体に過ぎない。 だとすると、人間の意識は、機械に移すことが出来るのではないか。 非常に知的好奇心をくすぐられる内容だった。
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渡辺正峰
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