河島思朗のレビュー一覧
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ネタバレp.14 "「推論などしない。三段論法の規則によれば、<二ツノ個々ノモノカラハ何モ出テコナイ>。二つの個々の事象からは、いかなる法則も引き出せないのだ。まずは、法則を知る必要がある。たとえば、触れた者の指をくすませる物質が存在するとか……」"
p.100 "「書物というのは、信じるためにではなく、検討されるべき対象として、つねに書かれるのだ。一巻の書物を前にして、それが何を言っているのかではなく、何を言わんとしているのかを、わたしたちは問題にしなければならない」"
p.301 ”「これが紫水晶だ」彼は言った、「謙譲の鏡であり、聖マタイの純真と温和とを -
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ネタバレp.113 "地獄というものは裏側から見た天国にすぎないような気がしてくる。"
p.203 "「頭脳に当たる部分は文書館の奥の書架だ、虫食いだらけではあるが」"
TVで映画を見て、小説を読んだ。この物語との出会いはそんなふうであった。
読み返して、記憶にあるほとんどが映画版であることに気づく。映画版の印象もあいまいになっていて、変態的な修道士が登場するなど、今思い返すと『ヘルレイザー』とかぶる。
当時十代だったかどうか覚えていないが学生だったことは確かで、タイトルの意味がわからなくて原作小説を読むことにした。読んでも分からなかった。明確な説明はなか -
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面白かった…。最近読んだ「百冊で耕す」に読書の醍醐味は空気に浸ることというような記述があったけど、まさにその醍醐味を存分に味わうことができる極上の空気を持つ作品でした。「過ギニシ薔薇ハタダ名前ノミ」……痺れる。
「生真面目な行為の胡散臭さを嗤う」ことが人々が共通して持つ真理を失くしてしまうことになるという考えは、「これが正解だ」と決して言うことができなくなった近年の流れの出発点のように思える。
アリストテレスの詩学第2部やミケーレ、オッカムのウィリアム、「マルゲリータ」など実際の出来事や人物との繋がりも面白い。(解説読まんとわからんかったが)
「覚書」で作者が告白している「一人の修道僧を毒殺し -
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ネタバレ笑いと真理、異端運動、間テキスト、作者の死
理性による絶対的な真理(神)の探究が、真理の存在の否定につながってしまうとしたら、中世のキリスト者はどのように振る舞うのか。ウィリアムは合理的思考と明晰な頭脳を持つがゆえに、信仰の限界に立たされている。ウィリアムは信仰者であり探偵という矛盾する役割を課せられているのである。
これを踏まえると文書館の中心が中庭になっている(なにもない、空)ことにも意味があるように思える。人間は中枢にある真理に近づこうと書物を書き、知識を積み上げてきたが、実は中心には何もないのではないか。この構造は小説の軸である一貫した意志のない連続殺人事件とも一致する。
探偵小説 -
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読んで良かった時思える本だった。
知識が増すと言うよりは、既知に深みが増し輪郭や発色が感じられるものだった。
一般の暮らしをする人々の生活や一生に触れている。中には奴隷だったり解放奴隷だったり、その奴隷のシステムにも触れており読みながらローマ時代の人の扱いを復習できる。
職業やその家族、大切にしてきたもの、50人が読みやすい文量で展開されどの方も好感をもてるものだった。
歴史と言うよりは生活面の記録だが、歴史的史実も並行してあり時代感を感じられる。
古代ローマと言えばと言う概念があると思うが、一般人の幸せのようなものを垣間見れる良い本だった。 -
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物語の舞台は1327年11月。
あくまでもフィクションなのだが、実はこの日付が重要だ。時は教皇のアヴィニョン捕囚の真っ只中。教皇ヨハネス22世と神聖ローマ皇帝ルートヴィヒ4世との確執やフランシスコ修道会の「清貧論争」が相まって、物語に奥行きを生み出している。一見すると犯人探しのミステリー仕立てだが、横糸となる『異端審問』や党派対立などについて、ある程度理解しないと話についていけない。(久しぶりに世界史の復習をした気分)。特に、日本ではそもそも基礎知識が無い“ボゴミル派”や“ドルチーノ派”など、異端審問に出てくる教派。(勉強になりました)
物語は見習修道士だったアドソの回想という形をとっている -
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1980年にイタリアで発売され、各国でベストセラーになった本書。1986年にはショーン•コネリー主演で映画化された(こちらは私も見た)。日本版刊行は1990年。著者は記号論学者。難解。でも面白くて、二週間ほどかけてじっくりと読みました。
本書は著者の構想メモなども追加収録した『完全版』で、読みでがあります。
北イタリアの修道院を訪れたウィリアム修道士とその弟子アドソ。ウィリアムは、数日前に起きた修道士の死について調べてほしいと修院長から依頼を受ける。閉ざされた修道院で起きた不可解な死。しかし、事件はそれだけでは終わらず…。
中世のイタリアを舞台にしたミステリーを縦糸にして、物語は修道院をめぐ