河島思朗のレビュー一覧
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ネタバレ笑いと真理、異端運動、間テキスト、作者の死
理性による絶対的な真理(神)の探究が、真理の存在の否定につながってしまうとしたら、中世のキリスト者はどのように振る舞うのか。ウィリアムは合理的思考と明晰な頭脳を持つがゆえに、信仰の限界に立たされている。ウィリアムは信仰者であり探偵という矛盾する役割を課せられているのである。
これを踏まえると文書館の中心が中庭になっている(なにもない、空)ことにも意味があるように思える。人間は中枢にある真理に近づこうと書物を書き、知識を積み上げてきたが、実は中心には何もないのではないか。この構造は小説の軸である一貫した意志のない連続殺人事件とも一致する。
探偵小説 -
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読んで良かった時思える本だった。
知識が増すと言うよりは、既知に深みが増し輪郭や発色が感じられるものだった。
一般の暮らしをする人々の生活や一生に触れている。中には奴隷だったり解放奴隷だったり、その奴隷のシステムにも触れており読みながらローマ時代の人の扱いを復習できる。
職業やその家族、大切にしてきたもの、50人が読みやすい文量で展開されどの方も好感をもてるものだった。
歴史と言うよりは生活面の記録だが、歴史的史実も並行してあり時代感を感じられる。
古代ローマと言えばと言う概念があると思うが、一般人の幸せのようなものを垣間見れる良い本だった。 -
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物語の舞台は1327年11月。
あくまでもフィクションなのだが、実はこの日付が重要だ。時は教皇のアヴィニョン捕囚の真っ只中。教皇ヨハネス22世と神聖ローマ皇帝ルートヴィヒ4世との確執やフランシスコ修道会の「清貧論争」が相まって、物語に奥行きを生み出している。一見すると犯人探しのミステリー仕立てだが、横糸となる『異端審問』や党派対立などについて、ある程度理解しないと話についていけない。(久しぶりに世界史の復習をした気分)。特に、日本ではそもそも基礎知識が無い“ボゴミル派”や“ドルチーノ派”など、異端審問に出てくる教派。(勉強になりました)
物語は見習修道士だったアドソの回想という形をとっている -
Posted by ブクログ
1980年にイタリアで発売され、各国でベストセラーになった本書。1986年にはショーン•コネリー主演で映画化された(こちらは私も見た)。日本版刊行は1990年。著者は記号論学者。難解。でも面白くて、二週間ほどかけてじっくりと読みました。
本書は著者の構想メモなども追加収録した『完全版』で、読みでがあります。
北イタリアの修道院を訪れたウィリアム修道士とその弟子アドソ。ウィリアムは、数日前に起きた修道士の死について調べてほしいと修院長から依頼を受ける。閉ざされた修道院で起きた不可解な死。しかし、事件はそれだけでは終わらず…。
中世のイタリアを舞台にしたミステリーを縦糸にして、物語は修道院をめぐ