サラ・ピンスカーのレビュー一覧

  • いずれすべては海の中に
    13編の短編が収められている。うち3編はやや長め。
    ほとんどがSF的な設定となっているが、SFを全面に押し出すのではなく、SF的世界の中における人間の感情や生き方が描かれているという感じ。
    丁寧に静かな文体で書かれていてじっくりと浸りながら読める。
    特に後半の4編はそれなりの長さがあることもありテー...続きを読む
  • 創られた心 AIロボットSF傑作選
    SFってやっぱ面白い、と思わせてくれる16編と盛りだくさんの短編集。文庫も物価高騰のあおりを受けてこんなに高くなったか・・・と思いつつ買ったが、元は取れたと思う。

    どの作品も味わい深いのだが、意識を持ったAIは物理的につながりさえできれば、ハード(シャーシ)を乗り換えていけるって設定が興味深い。人...続きを読む
  • いずれすべては海の中に
    朝焼けを迎える宙なのか、それとも夕暮れに向かう海なのかー淡い彩色の装丁に包まれた物語の世界に浸ると空気の組成が少し変わり始める。忍び込んだ異質な空気が肺を満たすとき、追憶の中の未来-辿り着くことのない、いつかどこか-がゆらゆらと立ちのぼってくる。
    それは旅先で目にした知らないはずの風景に感じる懐かし...続きを読む
  • いずれすべては海の中に
    普段あんまりSFは読まないんだけど、これはかなり好き。最初の「一筋に伸びる二車線のハイウェイ」から、突然の事故で付けることになったハイテク義手が「自分は道路だ」と脳内で主張してくる…という突拍子もない調子で始まり面白いし、オチが秀逸。
    「深淵をあとに歓喜して」の老夫婦の看取りの話も良かったし、「風は...続きを読む
  • いずれすべては海の中に
    良質なSF!
    流れる空気感や、話ごとに徐々に明らかになる世界観への気付きが面白くてたまらない。
    収録されている話の順番も絶妙だと思う。
    「どういうこと?」「こういうこと?」「なるほど!」とどんどんサラ・スピンカーの世界観に引き摺り込まれていった。
    最後に"そして(Nマイナス)人しかいなくなった"

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  • いずれすべては海の中に
    表題作の『いずれすべては海の中に』が特によかった。すべて沈んだ後に這い上がって生まれてくるもの。
    あと『イッカク』の「助けが来ないときは自分が助けに回る番」は本当にそれだと思う。
  • いずれすべては海の中に
    謎の新技術、理由のわからないディストピア、シンギュラリティのように見えるけどそこまでいかない何か……そんなもろもろと対峙しながら、カタストロフに至るでもなく、でも何かがあらわになる物語たち。すき。

    一筋に伸びる二車線のハイウェイ
    コンバインの事故で腕を失い、義手とマイクロチップを装着した青年。マイ...続きを読む
  • 創られた心 AIロボットSF傑作選
    コミック『アトム・ザ・ビギニング』を読んでいたところで本作を偶然手に取ったのだが、ロボットの擬人化という単純な物語など遥かに超越した16篇の来るべきAI世界にまつわる思索小説としても大変興味深い短編が名編者J・ストラーンによって集められている。J・J・アダムズ編による銀河連邦、パワードスーツものなど...続きを読む
  • いずれすべては海の中に
    13の短編が収められている。戦争・殺人事件・セイレーン・宇宙船・音楽・ジェンダーなど題材は多岐に渡りながら、そのどれもが人の心の深い部分に語りかけてくる。琴線に触れ、誰かにこの素敵な本のことを話したくてたまらなくなる。
    様々な人生を読んでみて、人の数だけある未来が希望そのものに見えた。どう生きてきた...続きを読む
  • 新しい時代への歌
    ライブで音楽を聴きたくなる話。観客をいれたライブが規制されたテロと感染症後の世界が描かれます。音楽を聴いて歓声をあげることが遠くなってしまった現在のようでした。音楽って楽しいなと感じさせます。
  • 新しい時代への歌
    解説込みで600ページちょいあるんだけど面白くて一気に読んでしまった!
    不運にも現実とリンクするような世界観で読んでて頭がぐらぐらしたが、現実に重なるからこそ今絶対に必要な物語だった。
    ルースの言葉が真っ直ぐで格好良くて私はこの言葉を待っていたんだなあと涙ながらに読んでいた。

    感染症とテロによって...続きを読む
  • いずれすべては海の中に
    宇宙に旅立ち、持っていった人類の文明のデータが消えた後の世界、船内で音楽を演奏するグループに参加している女性の話が特に良かった。
    過去の名曲を再現しようとしても過去の作品全ては拾えない。
    今同じ時間に存在しているものにも思いを馳せたり、これから新たに作り出すことに勇気をもらえる話だった。

    「風はさ...続きを読む
  • いずれすべては海の中に
    原題 SOONER OR LATER EVERYTHING
    FALLS INYO THE SEA

    13の物語
    静かな世界たちが入れ替わって浮かび上がってくる。
    読み終えた世界は心の奥にしまうと同時に海の中へ戻っていく。
    またね
  • いずれすべては海の中に
    終末や破滅の予感がする近未来で、道の義手やら、鳥籠の心臓のおばあちゃんやら、イッカク姿の車やら、加害者被害者探偵兼務の殺人事件やら。。荒唐無稽でぶっ飛んだシチュエーションなのに、読み進めて徐々に全体像が見えてくると、その世界に無理なく馴染んでしまう。摩訶不思議で可笑しくて哀しい物語にワクワクゾクゾク...続きを読む
  • いずれすべては海の中に
    翻訳の順番は後先になったが傑作『新しい時代への歌』の元になった「後日談」である中編が収録されている、というだけでも価値ある一冊。伝説の歌姫の後年を描きながら、同時に長編のダイジェストともいえる全てのエッセンスが詰まった作品を始めとした珠玉の短編集。
  • いずれすべては海の中に
    装丁が可愛いのと、よく読んでいる冬木糸一さんのブログで高評価だったので手に取りました!なんとも不思議な短編集で、SFといえばSFなんだけど、あまりSFぽくなかった。

    サラ・ピンスカーの作品はもちろん初めてで(『新しい時代への歌』はこの後読もうかなと思っている)、起承転結がはっきりしているというより...続きを読む
  • いずれすべては海の中に
    本を閉じたとき、この本に出合えて良かった、そう思える幸せ。
    SFの濃淡はありつつ、短編たちを繋ぐ”喪失”や”音楽”といったテーマの描かれ方が見入るほど聞き入るほどに美しく胸の内に響いてくる。
    掌編くらいの短さもあれば、比較的長い物語もあるのでその点も読みやすく、自分だけの一遍と出会えるのでは。私のお...続きを読む
  • いずれすべては海の中に
    どのお話も最後は読者の想像にお任せします、的な感じで余白があるところがとても好み。それぞれかなり特殊で面白い世界観のお話にも関わらず、説明的な文章がなく、唐突に始まってちょっとずつ輪郭がはっきりしていくところも良かった。
  • いずれすべては海の中に
    ジャケ買いした一冊。表紙からは想像もつかない奇想天外な内容の短編集です。1番目で度肝を抜かれ(笑)2番目でうーむと唸り、3番目から(何か面白いかも…?)となって後は引き込まれるように夢中で読みました。「彼女の低いハム音」「孤独な船乗りは誰一人」「風はさまよう」が好きです(選べなくて3つになりました)
  • いずれすべては海の中に
    作風としては、メインストリームより。というか、頭の硬いコアSFマニアになら「これはSF的ガジェットを使った普通小説で、SFじゃない」ぐらいは言われるかも知れない。読者によっては、どこがSFなのか、理解できないかも知れない「深淵をあとに歓喜して」あたりではなく、むしろSF的奇想が炸裂する作(たとえば「...続きを読む