サラ・ピンスカーのレビュー一覧

  • いずれすべては海の中に

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    思うに短編小説というものは、何を語るか、と同じくらい、何を語らないのか、が大事なのだ。背理法を用いた美しい証明のように、不在の薄闇を重ねて輪郭を描く、その技術が。
    この作者はその何を語らないのか、を熟知している。

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    2025年08月26日
  • いずれすべては海の中に

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    なんて言うか、もう、10冊分くらい読んだようなエネルギーを使いましたし、そのくらいの満足感に満ち満ちた読書でありました。

    13篇収録。

    話それぞれにみんな違ってみんな良い、想像力をフル稼働させないとあっという間に置いてけぼりにされそうな、とにかくひとつひとつの話にギュムッと想像の海が押し固められていて、その寒天状の海を分け入って分け入って、どうにかようやく理解が追いついた時にパァッと視界が開けるような、繰り返してばっかりですが、とにかく密度が高い一冊でありました。

    以下、13篇全部の感想を書きたいのですが私の不徳の致すところ、ピックアップして記載致します。


    《一筋に伸びる二車線のハイ

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    2024年10月24日
  • いずれすべては海の中に

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    ネタバレ

    好きなYouTuberさんが「海外SF」として紹介していて、表紙も素敵だったので読んでみた。

    作者がまさかのシンガーソングライター。音楽の話が多数あって嬉しかった。ラッキー。

    1話目はなんだか気持ち悪かったけど、2話目からは大体ずっと好きな世界観だった。

    そしてわれらは暗闇の中
    記憶が戻る日
    いずれすべては海の中に
    深淵をあとに歓喜して
    孤独な船乗りはだれ一人
    風はさまよう
    オープン・ロードの聖母様
    イッカク
    そして(Nマイナス1)人しかいなくなった

    が良かった。(ね、本当に大体全部でしょ。)

    すごく引き込まれて「で、どうなるの?どうなるの?」と思いながら最後まで読むと、これといって

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    2024年06月30日
  • いずれすべては海の中に

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    ネタバレ

    13編の短編が収められている。うち3編はやや長め。
    ほとんどがSF的な設定となっているが、SFを全面に押し出すのではなく、SF的世界の中における人間の感情や生き方が描かれているという感じ。
    丁寧に静かな文体で書かれていてじっくりと浸りながら読める。
    特に後半の4編はそれなりの長さがあることもありテーマに深みのある力作でとてもよかった。

    1. 一筋に伸びる二車線のハイウェイ
    事故で腕を失い機械義手をつけるが内部のチップに使われているソフトウェアがコロラドのハイウェイで使われていたもののリサイクルだったため、自分の腕がハイウェイと一体化したように感じる。手術でチップを交換するが、ハイウェイの記憶

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    2024年03月10日
  • 創られた心 AIロボットSF傑作選

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    SFってやっぱ面白い、と思わせてくれる16編と盛りだくさんの短編集。文庫も物価高騰のあおりを受けてこんなに高くなったか・・・と思いつつ買ったが、元は取れたと思う。

    どの作品も味わい深いのだが、意識を持ったAIは物理的につながりさえできれば、ハード(シャーシ)を乗り換えていけるって設定が興味深い。人間が求めてやまない不死不老をAIなら実現できるという夢。
    究極は「罪喰い」の世界で、人間はみな仮想空間(天国)に旅立ち、荒廃した地上にはロボットだけが残る。遺していく記憶を選べるってとこが業だ。

    一方で、製品が成長したり、メンターがいたり、ロボット同士のいじめがあったりって世界の作品もあって、自意

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    2023年06月30日
  • いずれすべては海の中に

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    朝焼けを迎える宙なのか、それとも夕暮れに向かう海なのか、淡い彩色の装丁に包まれた物語の世界に浸ると空気の組成が少し変わり始める。忍び込んだ異質な空気が肺を満たすとき、追憶の中の未来- 辿り着くことのない、いつかどこか ーがゆらゆらと立ちのぼってくる。
    それは旅先で目にした知らないはずの風景に感じる懐かしさと、それと同時に決してその風景に含まれることはない哀しみにも似て、心をさざなみが通り過ぎていく。
    失われたものへの哀惜と失ったものを語るときの優しさが、“今”を生きる真っ直ぐな力強さと溶け合って余韻を残す、美しい作品が集められた短編集だった。

    『一筋に伸びる二車線のハイウェイ』
    オートメーシ

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    2023年06月11日
  • いずれすべては海の中に

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    ネタバレ

    普段あんまりSFは読まないんだけど、これはかなり好き。最初の「一筋に伸びる二車線のハイウェイ」から、突然の事故で付けることになったハイテク義手が「自分は道路だ」と脳内で主張してくる…という突拍子もない調子で始まり面白いし、オチが秀逸。
    「深淵をあとに歓喜して」の老夫婦の看取りの話も良かったし、「風はさまよう」の、人間と地球が何のかかわりもなくなったら、歴史とは、音楽とはいったいどういうもので、何の意味を持つのか、という重い問いかけに突っ込んでいくのもすごかった。それぞれの短編で設定は全部違うし今の現実とは乖離しているけど、出てくる人間の感情や行動に手でさわれるようなリアリティがあるから面白くな

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    2023年06月08日
  • いずれすべては海の中に

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    良質なSF!
    流れる空気感や、話ごとに徐々に明らかになる世界観への気付きが面白くてたまらない。
    収録されている話の順番も絶妙だと思う。
    「どういうこと?」「こういうこと?」「なるほど!」とどんどんサラ・スピンカーの世界観に引き摺り込まれていった。
    最後に"そして(Nマイナス)人しかいなくなった"

    小説だけでなく、音楽や海、自然や環境を愛する人にも刺さるサイエンスフィクション。

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    2023年01月27日
  • いずれすべては海の中に

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    ネタバレ

    表題作の『いずれすべては海の中に』が特によかった。すべて沈んだ後に這い上がって生まれてくるもの。
    あと『イッカク』の「助けが来ないときは自分が助けに回る番」は本当にそれだと思う。

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    2023年01月20日
  • 創られた心 AIロボットSF傑作選

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    コミック『アトム・ザ・ビギニング』を読んでいたところで本作を偶然手に取ったのだが、ロボットの擬人化という単純な物語など遥かに超越した16篇の来るべきAI世界にまつわる思索小説としても大変興味深い短編が名編者J・ストラーンによって集められている。J・J・アダムズ編による銀河連邦、パワードスーツものなども読みたくなる。

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    2022年05月28日
  • 新しい時代への歌

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    ライブで音楽を聴きたくなる話。観客をいれたライブが規制されたテロと感染症後の世界が描かれます。音楽を聴いて歓声をあげることが遠くなってしまった現在のようでした。音楽って楽しいなと感じさせます。

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    2022年04月03日
  • いずれすべては海の中に

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    サラ・ピンスカーの短編・中編、全13編。これはジャケ買いしました〜
    寝る前に少しずつ読んでいたのですが、起きると「…はて?…」となってほぼ毎回読み返してました。
    全体的に淡々としていて、すごく突飛な事もあるんだけどそれも含めてやっぱり静かに進んでいくというか。どれもゆっくり旅をしてるみたいな…その世界がどんなふうなのかを探り探り読んだのが、寝る前にピッタリだったかも。
    …と思いきや、最後に「そして(nマイナス1)人しかいなくなった」は、ここへきて急に目がバッチリ覚めるようなミステリ。すごいこと思いつくなぁ、この状況だからこその犯人の動機には妙に納得。
    著者がミュージシャンでもあるそうで、音楽が

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    2025年10月24日
  • いずれすべては海の中に

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    フィリップ・K・ディック賞受賞作。SFは作者によって設定や世界観が似かよってくるように思うのだけれど、サラ・ピンスカーはとにかく引き出しが多い!一篇一篇の設定がフレッシュで、また一篇の世界観が浮かび上がってくるのに時間をかけるのがすごい。

    表題作は「いずれすべては海の中に沈むことについて、けれどいくつかのものがまた這い上がってきて、新しいものに変わることについて。」という一文で終わる。多彩な世界を展開しながらも、この短篇集全体には、この一文が通底しているように感じられるのがすばらしかった。あと、作者が絶対に音楽を愛する人だとわかるのもとても好ましい。

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    2025年10月06日
  • いずれすべては海の中に

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    ★3.8
    主に女性が主人公
    やさしい雰囲気のSF短編集
    というか SFなんだけどもSF的な要素はあくまでもギミックというかスパイスというかエッセンスというかでそれをベースにした物語なんだけども書きたいのはやはり「人」なんだなと

    池澤春菜の紹介で知ったけれど 彼女の初短編集を先に読んでたせいか かなり影響受けてるんじゃないかな? と思った

    文章のあちこちに、女性性や母性のようなものを感じるのだが、それは俺が男性だからだろうか?また翻訳で読んでいるので訳者がそういうところを意識した言葉を使っているのかもしれない。英語で読むとどういう風に感じられるんだろう。

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    2025年05月19日
  • いずれすべては海の中に

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    繊細で不思議な物語。

    本屋で表紙の美しさに目を惹かれて購入。13編の中短編が収めらています。
    ひとつひとつの話はおもしろいですが、新たな話に移るたびに、時代背景や状況を理解するのにちょっと苦労します。

    SF的なギミックやアイデアよりも、登場人物たちの心の機微の描き方がとても良くてそこに感動します。
    説明が難しいですが、どの短編も共通して物哀しいトーンをまとってはいるけれど、ラストは希望を感じさせる作りになっています。
    統一感のあるアルバムを聴いたような読後感。
    翻訳文も、登場人物の口調など違和感なく表現していて読みやすいと感じました。

    装丁が非常に綺麗なんで、ぜひ紙の本で手に入れてほしい

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    2025年03月22日
  • いずれすべては海の中に

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    パケ買いしました。
    普段SFを読まないので、頭の中の使っていない部分を刺激されるような感じがして面白かったです。
    短編集なので星新一を想定していましたが、美しいどんでん返しを食らうというより、ここではないどこかへと誘われて暮らすような感覚になりました。

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    2025年01月24日
  • 新しい時代への歌

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    解説込みで600ページちょいあるんだけど面白くて一気に読んでしまった!
    不運にも現実とリンクするような世界観で読んでて頭がぐらぐらしたが、現実に重なるからこそ今絶対に必要な物語だった。
    ルースの言葉が真っ直ぐで格好良くて私はこの言葉を待っていたんだなあと涙ながらに読んでいた。

    感染症とテロによってライブができない世界で音楽を作り続けるルースと音楽を世界に届けようと奔走するローズマリー。
    正反対の二人が導き出した答えに胸が熱くなった。
    映画みたいな幕引き!
    最高!!

    この小説は音楽を作る人と音楽を届ける人の物語であり、創作活動をする全ての人に捧げた物語でもあると思うので全員漏れなく読んでほし

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    2023年07月09日
  • いずれすべては海の中に

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    宇宙に旅立ち、持っていった人類の文明のデータが消えた後の世界、船内で音楽を演奏するグループに参加している女性の話が特に良かった。
    過去の名曲を再現しようとしても過去の作品全ては拾えない。
    今同じ時間に存在しているものにも思いを馳せたり、これから新たに作り出すことに勇気をもらえる話だった。

    「風はさまよう」の他
    クジラを運転して旅する「イッカク」
    多元宇宙のサラ・ピンスカーが集うサラコンで起きた殺人事件「そして(Nマイナス1)人しかいなくなった」
    夫婦間の謎を妻が理解し進む「新縁をあとに歓喜して」などが良かった。

    寝る前に少しずつ細切れに読むと、数日後に話の内容が追えなくなり、何度も止まった

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    2023年06月17日
  • いずれすべては海の中に

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    原題 SOONER OR LATER EVERYTHING
    FALLS INYO THE SEA

    13の物語
    静かな世界たちが入れ替わって浮かび上がってくる。
    読み終えた世界は心の奥にしまうと同時に海の中へ戻っていく。
    またね

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    2023年06月12日
  • いずれすべては海の中に

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    終末や破滅の予感がする近未来で、道の義手やら、鳥籠の心臓のおばあちゃんやら、イッカク姿の車やら、加害者被害者探偵兼務の殺人事件やら。。荒唐無稽でぶっ飛んだシチュエーションなのに、読み進めて徐々に全体像が見えてくると、その世界に無理なく馴染んでしまう。摩訶不思議で可笑しくて哀しい物語にワクワクゾクゾクした。
    その中では比較的フツーな設定だけれど、3人のバンドマンの廃食用油車の道中記の破天荒さが一番好き。「進む。進み続ける」パンク姐さんがとにかくカッコいい。

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    2023年02月11日