佐藤厚志のレビュー一覧

  • 荒地の家族(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    佐藤厚志『荒地の家族』新潮文庫。

    第168回芥川賞受賞作。

    様々な形の別れや喪失を淡々と描きながら、読者に生きることの意味を問いかけるような生々しい小説だった。

    自分の経験からすれば、死別よりも生き別れの方が悲しみと苦しみが深いように思う。本作の主人公である坂井祐治が会わせてもらえないことが解っているのに、何度も元妻の職場を訪ねて行くことも理解出来る。自分にもそういうことがあった。

    また、この歳になってみると、自ら生命を断つことが如何に卑怯で家族や知人にどれほど迷惑を掛けるかよく解る。数年前に風の噂で、以前勤めていた会社で同じように出世を重ねていた同期が自殺したと聞いたが、不思議と心が

    0
    2025年06月06日
  • 象の皮膚

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ひたむきに生きる主人公に惚れ、彼女を苦しめる人間をぶっ飛ばしたくなった。イベント参加で主人公が自己を解放してか暴れる場面があり、面白く爽快だった。

    0
    2024年12月16日
  • 常盤団地の魔人

    Posted by ブクログ

    20年過ごした団地での日々が思い出されました。
    個々の人物描写も細かくて映像が浮かびます。
    脱力してぴりっと屁が出た。で思わず笑っちゃいました。
    内容的には30年以上前のノスタルジー満載なんですが、ドローンや携帯が出てきているので現代に近い…不思議です。
    この前、北欧映画の「イノセンツ」を見て、大友克洋の「童夢」を読んだ後だったので、団地×サイキック感が続いてて楽しい。次は吉本ばななさんの「下町サイキック」を読むのでこれまた楽しみ。

    0
    2024年09月04日
  • 荒地の家族(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    優しくも不器用な男の人生を描く
    東日本大震災を軸に置いたストーリー。
    最後に灯った明かりが暖かく人生を包み込んでくれる。

    もう一つの自分の人生を見てるかの様な気持ちだった。

    0
    2025年10月09日
  • 象の皮膚

    Posted by ブクログ

    4.0/5.0

    凛の苦悩が切実に伝わってきた。
    ただ、「肌荒れが酷く、家族から邪険にされ、クレーム処理に追われる不憫な女性」の可哀想な人生、というだけに終始しているような気もした。

    0
    2025年10月09日
  • 荒地の家族(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    仙台の丸善(作者の元職場)で購入
    →しかし、帰りの高速バスに置き忘れる・・・

    妻の実家が物語の舞台でもある宮城県の亘理町で、何度も行ったことがあるので読みながら『あの辺かな』『この辺かなぁ』と思いながら読むことができました。

    震災をテーマにする場合『再生』をテーマにするか『再生』でオチをつける物語が多く見受けられます。しかし解説で小川洋子も言ってるとおり本書に『再生』はありません・・・
    一度壊れてしまっても再生する物もありますが、再生しない物もあります。
    形の無いものは、あの日あの時『壊してしまった』と後から自覚する事はあっても、その時に『壊した』という自覚は無いものです。
    自分だけの物を

    0
    2025年06月15日
  • 常盤団地の魔人

    Posted by ブクログ

    古い団地に住む今野蓮を中心に、小学生の生態を描写した物語だが、団塊世代の我々とはかなり違うことに驚いた.親の世代との関わりをなるべく避けて、子供同志で悪さをする点は同じだと感じたが、ワコウ軍団とのやり取りは面白かった.ひょうたん池での出来事で魔人が登場するが、意図が掴めなかった.管理人との対決、担任の根元とのやり取りなど、子供たちの歓声が聞こえるストーリーだった.

    0
    2025年06月09日
  • 常盤団地の魔人

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    物語の内容は、小学3年生の主人公蓮が、多様な人々が住む団地で父母兄妹と暮らしながら、同じ小学校に通う上級生や同級生と日常生活を送る場面を描いたものと言える。

    魔人とはいわば現実逃避のために蓮自身が生み出した「像」と言えるだろう。毎日家族で虐待を受け、持病を患いながら生活を過ごし、これまでにない人との関わりを持つ、これらは全て蓮にとっては通常では乗り越えられないものであり、だからこそ自分自身で魔人を生み出し、現実からあえて距離を取る方法を生み出したのだと思う。

    だが、蓮は物語の終盤でそれを「神」のような存在(つまり、魔神)と勘違いしてしまう。だから、憎しみの対象である兄の公平に暴力を行使する

    0
    2024年10月22日
  • 常盤団地の魔人

    Posted by ブクログ

    同じ大学、同じ学部の先輩というのがきっかけだったけど、思った以上に俺はこの人の作風が好きなんだな。昔のスガシカオの曲みたいな、少し暗めの、少し嫌な感じの読後感が癖になる。

    0
    2024年10月05日
  • 常盤団地の魔人

    Posted by ブクログ

    芥川賞を受賞した荒地の家族より読みやすく、登場人物がたくさんいたにも関わらず、どの人物も印象に残りやすかったため最後まで苦なく読めた。

    私自身も団地(アパート?)に幼少期住んでいたので、その時のことが思い返された。
    時代はちょっと昔だなあと感じるけれど、、、

    読み終わった後、表紙にいる犬や人物を見て、これがきっと◯◯で、こっちは◯◯だなと考えるのが楽しかった。

    0
    2024年09月06日
  • 象の皮膚

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    アトピー故に幼少期からその見た目を非難され続けてきた凜さん。
    両親ですらアトピーのことを気合が足りないせいと理解してもらえず、兄弟からもからかわれ育ち、現在凜さんは非正規雇用の書店員として働く日々。

    癖の強すぎる書店の社員とパートたち。
    入り組む男女関係にちょっとだけ巻き込まれたこと。
    震災が起きて、書店の復旧まで、大変だったイベント。
    全て肯定してくれるバーチャル彼氏。

    凜さん、現実を一生懸命生きてる。

    アトピーといえば、昔ディズニーランドでイッツアスモールワールドに並んでいるときだったか、
    並びながら一緒に来ている友達としゃべっている男の人が、首筋をずっと掻いていて、赤くかさついた皮

    0
    2024年02月05日
  • 象の皮膚

    Posted by ブクログ

    人間が嫌いになる。
    酷い親と先生に怒りが沸く。
    お客さまに、人間の怖さをみる。
    それなのに誰か凛を助けてほしいと願いながら読んでしまう。
     

    0
    2023年08月30日
  • 象の皮膚

    Posted by ブクログ

    『荒地の家族』で興味をもってこちらも。
    アトピー性皮膚炎に苦しみ続ける女性。
    書店員というモチーフはやはりこの著者ならでは。
    持病に苦しみながらも、数々のトラウマを抱えながらも健気に生きる主人公と、それに対しあくまで無理解、抑圧的に接し続ける家族の姿に最後までつらさがあった。
    なぜああまで冷酷なのか。
    小説に「答え合わせ」は必ずしも必要ではないと思うけど、これは腑に落ちなさ過ぎた。

    0
    2023年05月03日
  • 象の皮膚

    Posted by ブクログ

    リアリティ溢れる筆致。自分とは全く違う境遇、性別、体質なのに、ページを捲る手を止められなかった。個人的には芥川賞受賞作よりこっちの方が好き。だから読書は止められない。

    0
    2023年03月03日
  • 象の皮膚

    Posted by ブクログ

    生まれつきの重度のアトピー性皮膚炎で幼い頃から家族にも同級生にも教師にも疎まれ、そんな周りの人のことも疎んでいる主人公の五十嵐凛。
    大人になって、書店で契約社員として働き、日々同僚や上司との人間関係や困った客を相手に過ごしている。その最中に東日本大地震が起きる。店の片付けをする中で、あるいは営業を再開する中で垣間見える人間の本性。
    まだライフラインも復旧しない中で営業を再開した書店に押しよせ、「なぜ新刊が手に入らないんだ!」と怒号を浴びせる客、「なぜこんな時に営業を再開するんだ!」というクレーム、チャリティーで訪れる歌手の対応に苦しむ書店員たちの姿に悲しみや諦め、憤りを感じるけれどこれがリアル

    0
    2022年01月29日
  • 象の皮膚

    Posted by ブクログ

    淡々とした語りでリアル。圧倒的な救いではなく、ほんの少しだけ何かを解放したような終わり方がいいと思った。ものすごくいい人もものすごく悪い人もいない。でも皆んなちょっとずつ狂っている感じ。きっと現実ってこんなもん。

    0
    2021年10月16日
  • 象の皮膚

    Posted by ブクログ

    人にされて嫌だったことをしてしまうかもしれない。
    人にされて嬉しかったことをできないかもしれない。
    人の振り見て我が振り直せないかもしれない。
    それでも、
    めんどくさい人に負けず、
    体の痒みにも負けず、
    災害にも負けず、
    どうにかこうにかもがいて生きてる。

    0
    2021年07月09日
  • 荒地の家族(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    佐藤厚志、初読み。
    『芥川賞』受賞作品。

    40歳の植木職人・祐治。東日本大震災で仕事道具を失い、その2年後、妻・晴海を病気で亡くす。再婚し、妻・知加子との間に子どもを授かるも、生きて産まれてくることはなかった…そして、知加子は、祐治と啓太のもとを去る。
    幼馴染・明夫は妻と娘を震災で亡くし、みずからはがんを患っていた…

    元の生活に戻りたい…
    が、戻れない…
    その思いを打ち消すように、身を粉にして、働く祐治。
    同じ時代なのに、なぜだか昭和三十年代のような感じを受ける。
    白黒でしか言い表せないような、薄暗い世界が広がっている。
    そんな中、息子・啓太のために懸命に働く祐治。思春期を迎えた啓太との関

    0
    2025年11月23日
  • 荒地の家族(新潮文庫)

    Posted by ブクログ


    東日本大震災の津波によって自分を見つめ直してる男の回想記、過去と今を行き戻りながら進んでく。失うものが多いほど悲哀も大きくなるのかしら。失う可能性があるものを積み重ねてく方が喜びも大きくなるのだろうか。
    リアリティのある小説には特殊な性癖の人を特殊と感じさせずに紛れ込ませてる気がする(今回は噛みグセのある元嫁)。そもそも特殊と思う人はほんとは特殊じゃないくらい居て、その事実を違和無く表現できてるからリアリティがあるのかな。
    何も成し遂げられない人間の悲哀と少しでも何かを残せた人の対比が悲しかった。

    0
    2025年11月09日
  • 荒地の家族(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    東日本大震災を経験した主人公のフラッシュバック、震災時の様子、その後の生活再建など·····天災だとは言え、苦悩が数多くあることに驚き、そこから立ち上がる姿や周りの方達との関わり合いなど読んでいて辛いと感じることもありましたがそういう実態を知れたと思う。
    今もあちこちで天災があり平和な日本といえども住む所を失った人達が毎年、いらっしゃるのを心苦しく思う。

    0
    2025年10月14日